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三十六計と卓球 〜第十八計 擒賊擒王〜

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「日本の友人と世界の卓球界に『三十六計と卓球』を捧げる」 荘則棟

第十八計 擒賊擒王 (盗賊軍団を捕らえるためには、先ずボスを捕らえよ)

盗賊を一網打尽にするにはまずボス(王)を捕らえよ。敵を倒すあるいは征服する場合には、先ず敵の主力のボスを倒せ。 俗に言う「ヘビを打つときは、先ず頭を打て」と同じである。 主な矛盾を捕らえ解決する、主力軍を破壊し、 ボスを倒し、敵軍を解体することである。

 古代戦術の例

36kei-18-01.jpg 紀元757~761年、唐の粛宗(しゅくそう)のころ、唐の将軍張巡(ちょうじゅん)は反乱軍のボス・尹子奇(いんしき)と戦いをしていた。
 張巡の率いる軍隊は敵陣に攻め込み、敵将50数名と敵兵5000人余りを斬り、敵陣は混乱の渦となった。
 張巡は尹子奇を射て反乱軍を粉砕しようと思ったが、面識がないため、誰が尹子奇か分からなかった。
 そこで張巡は兵士に命じ、先を尖(とが)らした嚆矢(こうし・ヨモギで作った矢)を敵軍に向けて放させた。
 敵軍は飛んで来たのが嚆矢だと分かると、一斉に安心した。
 そのとき、尹子奇が馬に乗り大声で「張巡、お前は矢も使い果たしたのか、さらば投降せよ」と叫びながら陣中から出て来た。
 張巡は大将・南霽雲(なんさいうん)に狙い撃ちを命じた。矢は見事に尹子奇の左目に刺さり、さらに南霽雲の太刀を受け、尹子奇は鞍に伏して逃げた。
 反乱軍は、ボスが逃げ出すのを見て投降した。


卓球における応用例

 1961年、第26回世界選手権大会後、中国の速攻選手は日本のループドライブに対し、依然としてうまく対応できず、威力のあるループドライブには手を焼き、優勢に試合を展開することができなかった。
 中国チームのペンタイプカットマンである張燮林(ツァンシーリン)選手は、事業における勇者、智者である。
 彼は「柔をもって剛を制す」ことを決心し、表ソフトラバーと性能の全く逆のツブ高ラバーで、一連のループドライブ必勝法を練った。日本チームに不意打ちをかけるため、第27回世界選手権大会の中・日男子団体戦以前のすべての試合に、張燮林選手を一切出場させない。この奇抜な作戦は張燮林選手にとって辛い厳しい試練であり、また日本チームに対しては大きな圧力となった。
 男子団体決勝が始まると、張燮林選手は初めて登場した。
 彼は日本選手のループドライブに対する見事な技を披露した。
 日本選手は霧の中に包まれたように、張燮林選手の回転が変化する球をよく「飲み込めないうちに」負けたのである。
 張燮林選手は中国チームのために、相手のボスを捕らえ、立派な戦果を上げたのだ。


感想

1.キツネを捕らえるにはキツネより利口でなければならない。"せと物"を加工するにはダイヤモンドが必要である。相手のボスを捕らえるためには、正しい計略と実力が必要である。
2.杜甫(とほ・唐の時代の有名な詩人)は、≪前出塞≫の中で、「射人先射馬、擒賊先擒王(人を射んとすれば先ず馬を射よ、賊軍を捕らえんとすれば、先ず王を捕らえよ)」と記している。したがって相手の威力、核心部分に着眼することが重要で、表面上の形式的な勝利のみを注視するのは、実質的な危害を解決することはできない。これが後に無限の害となる。
3.本文で言う。"ボス"は敵軍の王または敵軍の司令部をさす。古代では軍旗の下に王がいて、そこから伝令を出していた。
 しかし、軍旗の下に王が必ずいるとは限らない。したがって何らかの方法で隠れている王を呼び出し、捕らえるのである。
(翻訳=佐々木紘)
筆者紹介 荘則棟
chuan_s.jpg1940年8月25日生まれ。
1961-65年世界選手権男子シングルス、男子団体に3回連続優勝。65年は男子ダブルスも制し三冠王。1964-66年3年連続中国チャンピオン。
「右ペン表ソフトラバー攻撃型。前陣で機関銃のような両ハンドスマッシュを連発するプレーは、世界卓球史上これまで類をみない。
1961年の世界選手権北京大会で初めて荘則棟氏を見た。そのすさまじいまでの両ハンドの前陣速攻もさることながら、世界選手権初出場らしからぬ堂々とした王者の風格は立派であり、思わず敵ながら畏敬の念をおぼえたものだ。
1987年に日本人の敦子夫人と結婚。現在卓球を通じての日中友好と、『闖と創』などの著書を通じて、卓球理論の確立に力を注いでいる」(渋谷五郎)
本稿は卓球レポート1994年1月号に掲載されたものです。

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