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三十六計と卓球 〜第十九計 釜底抽薪〜

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「日本の友人と世界の卓球界に『三十六計と卓球』を捧げる」 荘則棟

第十九計 釜底抽薪 釜の底の薪(まき)を抜く

釜底抽薪とは、竈(かまど)の中の薪が勢い良く燃え、
鍋の中の水が沸騰したとき、竈から薪を取ると、
火の勢いはなくなり、沸騰したお湯は自然に冷める。

 古代戦術の例

36kei-18-01.jpg 北宋時代(紀元960~1127年)の頃、薛長儒(せつちょうじゅ)は漢州の通判(宋代の初期、地方の権力を削減するため、中央から官吏を派遣し「通判府州軍事」に任命し、知州(州知事)や知府とともに政治に当たった。以後これが定例となった)に任命された。
 赴任して間もなく、兵士達が反乱を起こし、営門をぶち壊し、営舎を焼き払い、さらに知州や兵馬監押(州県を監察する地方の長官)の殺害を企てた。
 この知らせを聞いた知州と監押は、顔色が真っ青になり、おびえてその場に座り込んでしまった。
 しかし薛長儒は顔色ひとつ変えず、歩いて軍営まで行って見ると、反乱兵がわめきながら火を放っていた。
 薛長儒は大声で「皆の衆には父母妻子がいる。人に騙(だま)されて滅門の罪を犯すのではないぞ!皆の衆が反乱をやめれば、私が君達の命の安全を保証する」と言った。
 彼はさらに「あくまで反乱を続ける者は左側へ立て!私に従う者は右側に立て!」と言った。
 すると数百名の反乱兵は右側に立った。残り13名の首領は情勢不利と見るや、一目散に周辺の村に逃げ込んだ。
 その後全員を逮捕し、反乱を平定した。


卓球における応用例

 1959年、第25回世界選手権大会の前、ヨーロッパの選手はカット、コーナー攻撃、バックハンド、回転する球および回転しない球の技術などをおり混ぜ、栄冠を死守しており、中国男子チームは3-5でハンガリーチームに敗北した。
 帰国後、統計に基づき分析した結果、たくさんある矛盾の中で、一番重要な矛盾は下回転の球を思い切り打てなかったため、ハンガリーチームが下回転球で中国チームの前進を阻んだことにあった。
 その後中国チームは二つの面で強化訓練を始めた。
 一つは戻ってくる球の回転性を正確に判断することである。「大体そうであろう」は禁物で、記憶法を用い、実戦でそれをチェックし、いろいろと調整を加え、相手の返球に対する攻め技を磨き、回転の異なった球に対し、正確に判断した後ラケットの角度を変え、腰の捻(ねじ)りにより、肩と腕の摩擦力と爆発力を十分発揮し、特に前陣と台に対する攻撃力を高めることであった。
 第26回世界選手権大会において、中国チームとハンガリーチームとの対戦では、情勢が逆転し、中国チームはハンガリー選手の下回転球をものともせず、力強く下回転球を攻めたのみならず、時には突然の一撃を見舞わせた。ハンガリー選手は防備すらできず、ハンガリーチームが予測していた情勢は乱れ、最後は中国チームが5-1で圧勝した。


感想

1.釜底抽薪は根本から治すことを言い、表面だけを治す術ではない。
 すなわち根本から核心的矛盾を解決するためのものである。
2.古人いわく「沸騰しているお湯に水を足しても沸騰は止まらない。沸騰を止めようと思うなら、火を消せばよい」。水を足すと、一時的にしか沸騰を止めることはできない。沸騰したお湯に触れれば火傷(やけど)をするが、燃えていない薪は触れても火傷をしない。釜の底の薪を抜くことは、柔をもって剛を制する根本的な方法である。
3.戦いの目標と核心を選び、心を攻め、やる気を奪い、根本から敵の闘志を崩壊し、敵の士気を撃ち破る。
(翻訳=佐々木紘)
筆者紹介 荘則棟
chuan_s.jpg1940年8月25日生まれ。
1961-65年世界選手権男子シングルス、男子団体に3回連続優勝。65年は男子ダブルスも制し三冠王。1964-66年3年連続中国チャンピオン。
「右ペン表ソフトラバー攻撃型。前陣で機関銃のような両ハンドスマッシュを連発するプレーは、世界卓球史上これまで類をみない。
1961年の世界選手権北京大会で初めて荘則棟氏を見た。そのすさまじいまでの両ハンドの前陣速攻もさることながら、世界選手権初出場らしからぬ堂々とした王者の風格は立派であり、思わず敵ながら畏敬の念をおぼえたものだ。
1987年に日本人の敦子夫人と結婚。現在卓球を通じての日中友好と、『闖と創』などの著書を通じて、卓球理論の確立に力を注いでいる」(渋谷五郎)
本稿は卓球レポート1994年2月号に掲載されたものです。

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