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「卓球は血と魂だ」 第二章 三 道場十五戒①

三 道場十五戒

 昭和五十八年四月完成したバタフライ卓球道場の内部に、私はとりあえず十五枚のことばを掲示いたしました。私自身たいへん未熟な人間で、他人に対しお説教できる人間ではありません。しかし、この五十年余、選手として、指導者の立場を体験し、また諸外国の卓球行事に五十回以上旅行して多くの指導者に接していろんなことを感じてきた人間であります。そんな先輩の一人として、これから将来を目指す若い選手諸君や若い指導者の皆様に、いくつかのはなむけの言葉を、と思って考えつくまま書き、掲示したわけであります。その中の三訓は欧州が生んだ大芸術家のことばです。どんな言葉でも読む人の心によって感じ方も異なると思いますが、そこから何かを発想し、各個に一つの信念をつくって頂けたら有難い、と念願しております。


 不満と絶望は下向の道、感謝と希望は向上の道

私自身、二十一、二才の頃、訓練所指導員としてある立派な医者の下で仕事をしたことがある。昔の大阪帝国大学付属病院に今村先生という内科の大先生がおられ、そのお弟子であった若い人格者の山村三平博士の下で私は一年半の間、日夜医学の勉強もしたことがある。

その時代、肺結核は不治の病と云われていた。黒沢さんという立派な医者が肺結核で倒れた。その奥さんも、お父上まで肺結核で亡くなられた。弟の黒沢虎男さんは外科の医者であったが、黒沢一家を襲った結核と闘かう決心を固め、外科を捨て、奈良の山奥に「黒沢鍛練道場」をつくられたのである。

 黒沢先生は西洋医学を捨て、薬を使わず精神療法主義をとり、また独特なベッド体操をあみ出された。どこの病院でも見離された肺結核の患者がポツポツと集まってきた。患者は規則正しい生活をし、朝夕は五ヵ条の教訓を声に出してとなえた。その五ヵ条の中には、物事に感謝する気持をつくり出し、前途に希望を持つ人間への改造が、組みこまれていた。

 また、肺結核の患者は絶対安静が必要とされた。しかし、胸部は絶対安静でなければならないが、頭や手足も絶対安静では、やがてベッドの上で人間全体がダメになっていく、と考えられた黒沢先生は、頭と手足の体操を考案された。このようにして、人間改良の道をつかみ出そうとされた先生の努力は実り、数ヵ月後から、殆んどの患者は快方に向っていったのである。当時の私は、黒沢先生の本を読み、患者たちの動静を追ってみたことがあった。

 問題は簡単なのである。人間誰でも不満を持ったり、何かで絶望したりする時がある。その時、その人の血液は酸性になるのだ。血液が酸性になれば結核菌はどんどん増殖されていく。あらゆる病菌もそうだ。ところが、物事に感謝する心になり、前途に希望をもつようになった人間は血液がアルカリ性に変っていく。アルカリ性血液になった人間は、病菌を食い殺す白血球等の内臓の活動で、病気はどんどん快方に向っていくのである。

 以上の例でお気付のように、スポーツでも何事でも、人間が伸びていく、上達していく基本は心の持ち方にある、と云ってよい、と私は確信するようになったのである。そうは云っても、自分自身の問題となると弱気になりやすいのではあるが、まず自身の精神状態を正しくし、そのドロ沼からはい上る努力をなさねば自分は救えない。

 人を指導する場合でも、最も大切なことは、その人のやる気をどうやって引き出すか、どうやって激励してやるか、そこが最も大切なところである。

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