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「卓球は血と魂だ」 第三章 十五 一九八三年は出発点

第三章 卓球の炎をかかげて

十五 一九八三年は出発点

 待望の世界卓球選手権東京大会は四月二八日から開幕される。一二月末に開催された全日本選手権大会で男子単、複、混合複の三冠王となった斉藤清(熊商→明大)の出現で日本の卓球に光明が見えてきた。これは二〇歳の斉藤一人の問題でなく、同時に行なわれたジュニア、カデット、ホープス各種目の男子女子とも斉藤につづきそうな好選手が数多く見られたからでもある。このムードを大切に育て、勢いを与えていきたいものである。

 一月、二月には山口県で二つの大きな大会が開催された。一月、徳山市の伊藤杯大会には毎年関東関西から一流選手の参加があるが国広会長以下主催者が目指すところは少年少女クラスの育成だ。今年の場合、京都府の宮津卓研は小中学生で編成したチームで一般のベスト四に入ったし、個人的にも各地の優秀な少年少女選手達が大活躍したことは明年以後大いに楽しみである。二月、柳井市の西日本大会では長谷川信彦選手や、米国三冠王のシ―ミラー選手が五年連続優勝を争ったり、韓国から男女選手が出場したり、全日本ランク選手多数が出場したりで今や国際的大会となりつつある。この大会でもジュニア種目が年々盛況となり、一五〇〇名近い参加選手をこなすのに平岡、田中、松浦氏ら地元役員の苦労も大変だ。また、三月には香川県高瀬町で中学高校生を対象とした松崎杯大会と講習会がある。これらの大会や講習会は全国各地から自由参加ができる楽しみもあり、毎年盛り上がる一方である。

 しばらく沈滞をつづけた日本の卓球の再建をはかるのは少年少女の層から始めなければならぬ、と私は考えている。各種の大会や講習会は新人選手たちにとって非常に大きなしげきであり、登龍門である。負ければくやしいし、勝てば大きな自信がつく。一回の大会出場は何ヵ月、いや何年の練習にも匹敵する価値がある。監督指導にあたる人々にとっても大きな勉強になるし、選手は一つの試合を体験するごとにひと回りずつ大きくなっていくものだ。

 日本卓球協会が全日本選手権大会にカデット種目をつくり、ホープスを創設したことは大英断であったが、ホープス級をもっと育てる行政を考える必要があろう。その手始めに今夏から団体ホープスの全国大会が開催されることに期待する指導者は多い。

 世界選手権東京大会の日本代表三七名の強化合宿がはじまり、本大会までには技術水準もあがっていく。本大会での日本代表選手諸君の大奮闘を心から期待してやまない。

 ただ、われわれは今回の東京大会を決勝点と考えてはいけない。むしろ一九八三年はスタートの年と考え、一九八八年をゴールと目標づけ、中・長期対策の道を進みたいものだ。

 この意味で、全国の指導者や少年少女選手諸君もぜひ今回の世界大会をじっくりと見ていただきたいし、しっかり分析しなければならない、と思う。わが日本は再び世界の頂点に立つ可能性をもつ国だ。広い視野から世界の動向をつかみ、次の時代を考え、目先の勝敗にとらわれず、長期の選手育成対策をみんなが持ちたい。選手一人一人が、コーチ一人一人が、もう一段高い水準の努力をはじめたいものである。
(卓球レポート一九八三年三月号)

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