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「作戦あれこれ」第4回 対ドライブ作戦①

 先日、2月15日、16日の2日間、若い人達の普及の意味で卓球の町といわれている山口県柳井市で行なわれた、第38回西日本卓球選手権大会に出場した。
 出場して日本チャンピオンになった、山口県出身の伊藤繁雄選手、阿部勝幸選手の影響が強いのだろう、男子は8割強がドライブマンでびっくりした。そのために、私は決勝まで7試合をしたが、すべてドライブマンという珍しい優勝だった。
 他の大会は、これほどではないと思うが日本では戦型別に分けると、やはりドライブマンが一番多い。女子にもドライブをかける選手が増えてきた。となるとどの大会も勝ち抜くには、まずドライブ対策がしっかりしていなければ勝てない。真剣に考えよう。
 カルカッタの世界選手権の結果も、男子団体は強烈なドライブをうまく封じた中国が優勝した。ドライブに強い中国選手は一体どのような戦い方をするか、10年間に渡って何度も対戦してきた実際の体験を取り入れながら説明していこう。(長谷川信彦)


 ドライブ封じがうまい中国 ―徹底したバック攻め―

 試合の戦い方というのは、すでに多くの人が知っているように相手の弱点対自分のもっとも得意とするエースボールで戦うのが基本である。
 ドライブ主戦型の特徴は、フォアドライブを最重視する。ドライブを安定させるために比較的多くの人が、がっちりと握った深いグリップをしている。そのようなグリップは、①台上のボールの処理がやりにくい。②バックハンドが振りづらい。③フォア、バックの切り返しが早くできない。④フォームが大きいために、小さく止められたショートに弱い。手首を十分活用しにくく鋭い変化サービスがでにくい。などの弱点があげられる。
 このことを考え合わせて、ドライブ封じ作戦を立てればいいわけだ。たとえば中国選手の基本的な作戦の一部を紹介すると
(1)サービスを持った場合
 台上のボールの処理がやりづらい弱点をついて、コートで2バウンド以上するカット性サーブ。それと相手が小さいサーブを警戒しているときに、同じモーションからスピードのあるナックル性ロングサービス、あるいは変化サービスを出し相手につまらせたドライブをかけさせスマッシュか、3球目をフォア、もしくはバックにゆさぶってバック攻めに入る。
(2)レシーブの場合
 ロングサービスに対してのレシーブ―ドライブ性、カット性ともフォアハンドの強打かドライブで攻めるのが軸で、ときどきショートやストップ性のツッツキレシーブを入れ、相手の3球目ドライブを封じる。
 台上で2バウンドする小さいレシーブの場合―逆に小さく2バウンドするボールにして止める。相手が小さいツッツキを警戒いているときは払う。それとツッツキを強く切る、切らない、の3つのレシーブを使い分けてドライブを封じる。
 このようにサービスをもったときも、レシーブになったときも、ドライブマンに苦手な台上のボールで攻め台に寄せて攻める戦法。その中に、いきなりロングサービスを出してつまり気味にドライブをかけさせてそれをねらっていく。十分な態勢でドライブをかけさせないとこを基本としている。
 特に、サーブの配分やレシーブの返球はラリーの主導権を強く握っているだけに、相手をよく見てよく考えてやらなければいけない。強い選手ほどよく考えてやっている。

 ドライブマンに弱い人
1バウンドで出る中途半端なカットサービス、変化のないツッツキレシーブはもっとも危険


 試合でドライブ型に負ける選手のプレーを見ていると、次のような共通点を持っている。
 1、小さいサービスを出すつもりが、1バウンドで出てドライブをかけられたとき
 2、1バウンドで出る変化のないツッツキレシーブをして、3球目ドライブをされる
 3、ドライブをかけられないようにと考えすぎ小さいサービスばかりになり、サービスが単調になったとき
 4、ドライブを逃げ腰で処理しているとき
 5、ドライブの返球コースが悪いとき
 6、回転に対して、正しい角度を出していないとき
 これらの6つが上げられる。中でも1番、2番の初歩的なミスが多く見られる。相手にツッツかせてドライブで攻めようとしたときに、ドライブをかけられたのでは3球目の態勢も作戦もちがい、ミスが出やすいのも当然である。絶対に気をつけよう。

 ―全日本での対大屋作戦―
 2バウンドするサービスとレシーブ。ストレート攻撃の練習


 私は、昨年の9月にあった全日本社会人選手権の準々決勝で大屋選手(フォアドライブ主戦型、日本楽器)に、バックハンドを攻められて3-2で負けた。敗因は、一番の弱点であるバック側に小さく出されたサービスを台上で2バウンドさせるレシーブ、強く払うレシーブができなかったこと。また、2バウンドする変化サービスが出せずドライブで先手をとられたからだった。
 その後の練習は、台上で必ず2バウンドする変化サービスの練習と、フォア、バックの両側に小さいサービスを出してもらい、2バウンドさせるレシーブと、鋭く払うレシーブの練習を毎日の課題にした。
 2カ月後の全日本選手権でベスト8入りを決める4回戦で再び対戦したときは、レシーブのときに練習をした2つを軸にして4球目を先に得意のドライブで先手をとり、大屋選手の弱点のバックハンドを攻めてストレート勝ちを決めた。いかにサービス・レシーブが大切か痛切に感じた試合であった。またドライブ対ドライブであっても先手、先手と攻めること。ドライブは足の動きが勝負を握っている。その足を止めるにはストレートに攻めるのがいかに有効か、それには速いフットワークが必要でいかにフットワーク練習が大事か強く感じた。ストレートにスピードのある攻撃ができるようになれば、ドライブマンに対してだけでなく、速攻型にも強くなれるものである。

筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1975年4月号に掲載されたものです。
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