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「作戦あれこれ」第5回 対ドライブ作戦②相手のクセ、コースの特徴を早く知る

実に見事だった鍵本選手の対長谷川作戦

 1勝1敗のタイでむかえた昭和41年度全日本学生選手権大会の決勝戦だった。
 鍵本選手(早大、荻村商事)は、裏ソフトラバーを使用し前陣でドライブとショートのうまい技巧派のペン前陣攻守型。全日本選手権で2度優勝した伊藤繁雄選手にも3戦3勝、ストックホルムの世界団体戦の朝鮮との決勝戦では、強豪金昌虎に勝っているドライブキラーであった。長谷川の剛、鍵本の柔、の対決とも言われた。
 試合は、私がスロースターターの鍵本選手を回転のかかったスピードのあるドライブで1ゲームを先取しリードして始まった。だが第2ゲームに入って鍵本選手がガラリと作戦をかえて、第4ゲームを取り返して一時はタイに持ち込んだものの速攻で私の一番の弱点を攻められて最終ゲームは一方的に敗れてしまった。
鍵本 -17、13、16、-14、9 長谷川
このときの鍵本選手は、私の性格や多球の特徴やクセなどを知った上で、じつにうまい作戦の試合であった。参考になる点が多いと思うので私からみた鍵本選手の対長谷川作戦を詳しく述べてみよう。
 ○自分(鍵本選手)の卓球はショートをうまく使った前陣攻守型である。第1ゲームのように、台からさがってドライブの打ち合いをしては勝てない。できるだけ得意のショートができる位置で先手をとって積極的に攻めていく。しっかり動く。
 ○長谷川は、大きく動いたときの台上のボールの処理がまずい。台上で2バウンドする小さいサービスを主体に3球目攻撃をしよう。(続けてロングサービスがくることもあったが、7割から8割ぐらいはフォア前主体の小さい変化サービス。ときどき出すロングサービスのタイミングが早く、それに気をとられてショートサービスに対してスタートが遅れ、ツッツキが多い消極的なレシーブになってしまったのが大きい敗因となった)
 ○ドライブはショートで止め前後に動かす。(ドライブのフォームは大きい。そのために小さく止められたショートにうまくタイミングがあわず、威力のないつなぎボールをフォア強打やドライブで攻められたり、あるいはもう1本ショートで大きくゆさぶられて次を強打されてしまった)
 ○小さく出してきたサービスに対しては小さく止める。(7割ぐらいはストップレシーブでドライブを封じられ4球目をうまく攻められてしまった。スピードはたいしてなかったが、ときどきはらわれるからストップレシーブだけに的をしぼることができず、中途半端な処理になり、これも大きな敗因であった)
 ○バックハンドを攻める。(私の一番の弱点はバックハンドで、フォアにゆさぶられてからバックを攻められるラリー展開が非常に多かった)

ドライブコースのクセ、勝負どころのラリー展開を読まれていた

 ○長谷川がバック側からドライブをかけたときは、ショートができる位置で構える。(私の得意なコースはバックストレートのドライブで勝負どころでよく使う。それを大事なところで待たれて返されることがたびたびあった)
 ○勝負どころでの相手のサービスのときはフォア前を警戒する。(私はここ一本だという勝負どころのラリー展開は、フォア前に小さく真下に切ったサービスから3球目攻撃をする。そのラリー展開を読まれてレシーブをうまく返されてドライブを封じられてしまった。

 私は、ごくふつうのドライブマンと対戦する気持ちでやってしまったが、ドライブで打ち合えば有利であっただけにロングサービスと、もっと払うレシーブを多くして早く打ち合いに持っていくべきであったように思う。
 また鍵本選手は、私のもう1つの勝負どころの作戦であるレシーブになったときに、小さいサービスを鋭くフォアにはらってロング戦に持込むラリー展開も知っていたようで、フォアで待たれてうまくコースをつかれたり逆に強打をあびることがしばしばあった。それと私が強いドライブをかけて攻めたときは、ショートを生かすためにスマッシュをしたことがたまにあったが、ほとんど止めるショートで返球。ショートが得意であったこともあるが、ドライブのフォームは大きく小さく返すとドライブは弱いことをよく知っていたからだと思う。よく無理なドライブをメチャメチャに打つ人がいるが、ショートに弱い人が多いことを忘れずに試合をすることも大切である。
 もう1つの紹介をしよう。今度は、私が勝った試合だが、昭和39年度に行なわれたインターハイの団体戦、東山(京都)対名電工(愛知)。ともに全国の名門チームでライバルチームの対決のときであった。試合前にトップで東山のエース馬淵選手と当たるとコーチから発表があった。馬淵選手はペンでバッククロスの打ち合いが非常に強いドライブマンだった。しかも7カ月前にあった全国高校優秀選手強化合宿では2-1で負けていた。試合前私は、簡単だが次の2つのラリー展開を強く考えてコートに向かった。
 1つは、馬淵選手とバッククロスの打ち合いをしたら勝てない。バックを攻めてきたときには何本もバッククロスで打ち合わず、ストレートに返して自分の得意のフォアクロスで打ち合い、フォアを攻めてからバックをつく。もう1つは、バック側にきたサービスをツッツいてレシーブしたのが負けた大きな原因であった。できるだけフォアでまわり込んで攻めていこう。それに相手の気力に絶対負けないぞ、という強い闘志を持って出た。
 馬淵選手は予想した通りバックに攻めてきたが、それをねらってストレートを攻めてフォアを崩してストレート勝ちをした。
 あるいはドライブマンの中には、まだいろいろなタイプがいる。少し考えただけでも次のような人がいる。
 ○ドライブは強烈だが、ネットプレーが下手な人
 ○バックハンドが極端に下手な人
 ○バック側からのドライブは左右にきれいに打ち分けるが、フォアからはクロスがほとんどの人
 ○バックハンドやショートをしたあと、すぐにフォアでまわり込むクセのある人
 まだいろんな人がいると思うが、鍵本選手のように自分の長所を考えるとともに、相手の特徴、ラリー展開のクセをよく考えてやった方が有利な試合ができ良い成績をとるコツでもある。しかしそれには、前回ウォーミングアップのところで書いたが常に冷静な気持ちがなければ相手の特徴などを知ることがむずかしい。

相手の心理を読んでサービス、レシーブ

 相手はバック側のレシーブは、決まってツッツキとかロングサービスのときはショートしかしないという、ロボットのような返し方をする人であれば別である。だが相手の弱点はバックだ。といっていきなりバックをつくのは一見よさそうだが、危険な場合が多い。
 ふつうの人間の心理は、常に弱いところに神経がピリピリ集中しているので、いきなり攻めていくと攻めたつもりが待たれて最悪の状態となって返ってくる場合がよくある。しかしうまい人はちがう。相手がフォア側を警戒しているようなときにはバック側へ出す。バック側を警戒しているようなときにはフォア側へ出す。このように相手の心理を考えて出す。ラリー展開を有利にする試合のコツでもある。それには相手の目をよく見ることが大切である。相手の目を見ない人は、戦う前にすでに負けているといっても過言ではない。

最悪の状態にも備えて、基本姿勢と2つ以上のラリー展開を考えて出る

 これまでドライブ封じに特にサービス、レシーブが大切であると述べてきたが、実際には相手もどうしたらドライブがかけられるか考えているため、すべてが注文通りにはいかない。だから常に守備もできやすいように基本姿勢に素早く構えることが大切である。そしてできることなら最悪になったときの状態も考えて、2つのラリー展開を考えて出たほうがいい。たとえば、注文通り打った場合はこうする、もしドライブをかけられたときはこうするというように。1つのことしか考えていないときにドライブをかけられると焦って簡単にミスをしてしまいやすい。

 ドライブ封じ作戦は、何といってもサービスとレシーブが大切であるが、相手のクセやコースの特徴を早く知ることも大切である。
 最後にドライブ対策の練習として、2バウンドするサービスとレシーブ。回転の強いドライブをかけてもらい、それをショートで左右に止めるのとフォア強打。ドライブマンであればそれにドライブ対ドライブの引き合い、ドライブ対バックハンドなどの練習が必要だと思う。


筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1975年5月号に掲載されたものです。

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