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「作戦あれこれ」第82回 対カットのチャンスの作り方

 対カットマンのチャンスの作り方はいろいろある。その代表的な攻め方を紹介しよう。

 バックサイドに寄せておいてフォアへ強打

 スピードnあるドライブロングサービス(攻撃のうまいカットマンには変化サービスでもよい)をバック側に出し、相手がバック側に動いてバックカットでレシーブしてきたのを、フォアドライブでバックサイドに4本5本と連続して攻め、相手を完全にバックサイドに寄せる。そして、機を見てフォアへ強くドライブで攻めるやり方。フットワークの悪いカットマンは、ここでミスが出る。フットワークのいいカットマンなら、体勢を崩しながらも返してくるが、それを休まずバックサイドへ攻める。
 このときに大切なことは、①素早く動いて高い打球点で打つこと ②フォア側へ攻めるとき、相手に読まれないように、打球直前までバック側へ打つ構えからフォア側に攻めること。またコースが甘いと効果が薄いのでフォアのサイドラインぎりぎりを狙って打つようにする。そうすると、相手はスタートが遅れ体勢を大きく崩しやすい。されにつけ加えるならば、フォアへ曲がるドライブで攻めることだ。本誌の技術担当の伊藤選手は、フォアへ曲げて沈めるドライブが抜群にうまく、対カットに有効に使っていた。

 ミドルからバック側に寄せてフォア側へ強打

 バックサイドに寄せてからフォア側へ攻める戦法を発展させると、こういう方法もある。
 それは、ミドルから少しずつバックサイドに寄せていき、いきなりフォアサイドに強ドライブで攻める方法である。この場合の効果は、はじめにミドルから攻めているので、相手は常にミドルも警戒することになる。単にバックサイドに粘ってからのフォア攻めより、相手の待ちをはずす意味で効果が高いといえる。

 バックから少しずつミドルを攻めてバックへ強打

 守備範囲の広いカットマンに対しては、いきなりバックを攻めても返される率が高い。そのような相手には、バックサイドから少しずつミドルにボールを寄せていくと、相手はバックカットでミドル処理をするため体がミドルに寄る。そこをバック側、もしくはミドルにスマッシュする。
 このとき大切なことは、同じ種類のドライブや軽打で攻めるのではなく、回転に強弱の変化をつけたり、スピードの変化をつけること。たとえば、バック側へ打っているときはスピードを落としたドライブで攻め、ミドルを攻めるときに急にスピードのあるドライブに変えるというように。すると相手はカットのタイミングが狂い、そこでミスをしたり、カットを浮かしたりして労せずチャンスボールを作ることができる。
 ドライブに変化をつけるときに注意することは、強いループやスピードボールを出すときは大きいバックスイングで、あまり回転をかけなかったりゆるいボールで攻めるときは小さいバックスイングで、すると、相手に読まれてしまうので、同じバックスイングの形から手首と膝のバネの使い方で強弱をつけるようにすること。もう一つはスマッシュを打つときも、カットが浮いてきたからといってすぐにスマッシュの体勢をとるのではなく、ドライブもストップも何でもできる基本姿勢からスマッシュを打ち込むこと。相手のスタートが遅れて決定球になる率が高い。

 ミドル攻撃からバックへ強打

 '77年世界チャンピオンの表ソフト速攻の河野選手(青森商監督)がうまかった戦法である。まず相手のミドルに小さいスイングでドライブに変化をつけながら粘っこく攻め、ときどきストップを混ぜる。そして相手のミドルからのバックカットが甘くなるところを、バック側にスマッシュ。この戦法を多く使って守備範囲の広いカットで世界的に有名なシェラー選手('69年世界第2位)、高島選手('75年カルカッタ世界第3位)を寄せつけずに倒した。3回連続世界第2位の李富栄選手(現中国男子監督、表ソフト攻撃)も、やはり表ソフトの坂本選手(日産自動車、'82年全日本2位)も、このミドル攻撃からのスマッシュが大変うまい。表ソフトの選手が得意とする戦法といえる。
 この戦法の注意点としては、ミドルへのドライブに変化をつけることと、相手が浮かせてもストップやドライブで攻めるのをまぜ、相手が「またドライブかストップで攻めてくる」と思うチャンスボールを叩くのである。粘るときは、打球点を落とさないでバウンドの頂点をとらえることが大切である。

 ループによるミドル攻撃からバックに強打

 この戦法は、ドライブにあまり威力のないドライブマンがカットマンと対戦したときに使う手である。ループドライブ(山なりのドライブ)に回転とスピードの変化をつけながら相手のミドルを中心に深く、浅く変化をつけて前後にゆさぶり、チャンスボールをバックサイドにスマッシュする。
 この戦法は、表ソフトの速攻選手がミドル攻撃から強打するのと球質が違うだけでほとんど同じである。ループで前後に攻めてカットが浮いてきてもループで返したり、ストップで返したりして、相手を粘り強く攻めてじらす。そしてカットマンがじれてきたり、動きが鈍くなったところを思いきり強打する。このような山なりのループでしつこく攻めると、強いカットマンほどじれて小バカにされたように思い、自分自身の心に負け崩れる選手が多い。すなわち、この戦法を行なう場合は、そこまで持っていく忍耐心がなければならない。
 '71年世界選手権の女子団体戦で日本の小和田選手(中京大助教授、'69年世界チャンピオン)が、その大会で3冠王になった林慧卿、シングルス2位の鄭敏之の強豪2人をこの戦法で破り、彼女が2勝を上げて日本は団体優勝を飾った。ドライブに威力のない選手は、ぜひ参考にしてほしい戦法である。
 このとき注意することは、しっかり動く。打球点を落としすぎない。ボールの高さに少しずつ変化をつける。打たれたらラリーにする。相手以上に粘り強く行なう。―などである。

 速攻でバックカットをつぶす

 まずミドル前、バック前に威力のある変化サービス、もしくは小さく出すモーションから相手の意表をつくカット性ロングサービスを出す。そして、3球目をバック側の深い位置に思い切り3球目ドライブ攻撃をする。するとカットマンは体勢が崩れ、カットが甘くなる。そこを連続ドライブするとカットが浮きやすい。台から下げられカットが浮いた。強いカットマンはストップを警戒し、少し前に出てくる。そこを再びバックへ思い切りドライブ攻撃をしたり、ストップしたのちに再び強いドライブで攻めてバックカットをつぶす。
 この戦法は、ドライブにスピードのある選手がよく使う手だ。このとき注意することは、やはり相手に余裕を与えないことが大事なので、バウンドの頂点をとらえてしっかり踏み込んで打つことである。表ソフトの速攻がやる場合、ドライブを強打に変えてやるが、世界選手権3連勝を飾った荘則棟(中国)が抜群にうまかった。日本では、ときどき嶋内選手(三井銀行)が見せる。

 フォアサイドに寄せておいてバック側へ叩く

 バックサイドに寄せておいてフォア側へ叩くのと、まったく反対の戦法である。
 これは、相手のフォアカットが弱いときや、フォアからの反撃がない選手、あるいは作戦に変化をもたらすときに使う戦法である。フォアサイドにドライブを集め、相手をフォアサイドに寄せて、カットが高く浮いてきたところをバック側にスマッシュする。あるいは、機を見てバック側に威力のあるドライブで攻め、相手の体勢を大きく崩しておいて左右にスマッシュでとどめをさす。
 この戦法は成功すれば、ノータッチであざやかに決まることが多いが、フォア側から返ってきたカットをバック側に強打するのはなかなかむずかしいので、十分に機をつけなければならない。
 このとき注意することは、打球点のところまで正確に動き、右足(右利きの場合)の内側をバックサイドに正確に向け、体をしっかりひねってボールをしっかり引きつけ、打球の瞬間に左足をしっかり踏み込んで打つことである。これを守らないで、からだを正面に向けたままバック側に打つと、ミートがたちまち弱くなって切れたカットはネットにひっかけてしまう。このコースの切れたカットが打てない選手は切れていないカットが浅く入ってきたときだけ、しかも足をしっかり動かして打つとよい。
 この戦法は、相手がフォア側にイボ高ラバー(このときは軽いドライブで攻めること)や、アンチラバーを使っているカットマン、あるいは、裏ソフトを使用していても威力のない場合にやりやすいし、効果的である。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1983年1月号に掲載されたものです。

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