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「作戦あれこれ」第99回 試合前必ずスマッシュ練習を

 先月号、先々月号で、試合で余裕のあるプレーをするためには、「レシーブからの4球目守備練習と6球目攻撃練習をしっかりやること」と、そのためのコツとして「フリーハンドの使い方」を述べたが、試合で余裕のあるプレーをするためには、まだまだ必要な練習がたくさんある。中でもチャンスにスマッシュを確実に決められるようにする練習は特に大切な練習だ。
 なぜなら、試合で折角つくった絶好球をスマッシュミスすると、試合の流れを変えてしまう上、スマッシュの自信をなくし自分のプレーを崩してしまう。「ドライブやショートで得点しなければ...」と焦り、サービスからの3球目ドライブや、レシーブからのショートの守りに頼るスケールの小さいプレーに終始し、調子の波に乗ることができない。たとえ運良くその試合は勝ったとしても精神的にも体力的にも消耗度が激しく、トーナメントではとても優勝できないものだ。
 逆に、試合中に「スマッシュで決められる」自信のある時は、ドライブをかけてもショートで押しても次がすべてスマッシュチャンスにみえ、試合をしていても楽しい。
 スマッシュがプレーの主軸である速攻型はもちろん、ドライブ選手もスマッシュ練習をしっかりやろう。

 得意な技術からのスマッシュ練習をやれ

 では、試合でスマッシュを確実に決めるにはどのようなスマッシュ練習をしたらよいか。これは、得意な技術からのスマッシュ練習をしっかりやることと、スマッシュの命ともいえるフットワークの練習をしっかりやることだ。
 たとえば、ドライブでチャンスをつくるタイプは、3球目ドライブや4球目ドライブからのスマッシュ練習をしっかりやる。あるいは、ツッツキ対ツッツキからドライブをかけ、次をスマッシュする練習をしっかりやる。
 ツッツキを頂点強打してチャンスをつくる表ソフト前陣速攻型は、3球目ツッツキ打ちや4球目ツッツキ打ちをしたあとのスマッシュ。あるいは、ツッツキ対ツッツキから強打したあとのスマッシュ練習をしっかりやる。
 ショートを得意とする人は、3球目ショート、4球目ショート、あるいはショート対ショートからのスマッシュ練習をしっかりやることだ。
 また、最近はストップ技術が普及していることから、どのタイプも相手のストップレシーブや3球目ストップに対して、飛び込んで払ったあとスマッシュする練習をした方がいい。

 小さく鋭く振ることが大切

 これらのスマッシュ練習の上手なやり方は、いきなり試合と同じように全面に返してもらうのではなく、はじめは返球コースを決めて、やさしいボールを返してもらい、正しい動きと正しいフォームをまず身につけることだ。そして、そのあとにいろいろなコースに返してもらい、スマッシュ練習するのが上手なやり方だ。
 また、この時に一番得意とするシステム練習だけでなく、2番目、3番目のシステム練習もしっかりやっておくことが大切だ。なぜならば、一番得意な戦法が効かないときもあり、そういう時は2番目、3番目の戦法で勝負しなければならないからだ。
 システム練習のとき技術的な面で気をつけることは、まず大振りしないこと。振り遅れないようにスマッシュもスマッシュの1本前のボールも小さく鋭く振るように心がけることだ。それができるようになったら、フォームを徐々に大きくし、スケールを大きくしていこう。

 やさしいスマッシュ練習を必ずやれ

 スマッシュ力を高めるのにもう一つ欠かすことのできない練習がある。それは、高いボールをスマッシュする練習をして、悪い点を矯正することだ。
 よくむずかしいスマッシュ練習ばかりする選手がいるが、これは逆に調子を崩したり、自信をなくしたりして逆効果。実戦的な練習とやさしい基本練習の両方をやらなければ最高のコンディションで臨むことはできない。
 では調子が出るスマッシュ練習を紹介しよう。
 人数が少ないチームでは一台で。人数が多いところでも数台に台を少なくして行なうのがよい。というのは、みんなが見ている前で行なうと緊張してスマッシュ練習をやるからだ。その時に何本入れるまで(20本程度)と決めてやることだ。また、この時に速いピッチとふつうの速さのピッチとの両方を行なった方がよい。

1.ボールをたくさん使うスマッシュ練習
㋑フォア側(バック側)に40~50センチの高さのロングボールを送ってもらい、それを両サイドにスマッシュ(ワンサイドだけに打つと、試合でワンコースしか打てなくなる悪いクセがつく)
㋺ネット際に送ってもらい、踏み込んでスマッシュ
㋩高いロビングを両サイドにスマッシュ
㋥高いツッツキを両サイドにスマッシュ
㋭高いカットを送ってもらい、両サイドにスマッシュ
2.素振りを入れたスマッシュ
㋑ドライブの素振りをした後、1の㋑、㋺、㋩、㋭と同様のボールを送ってもらい、両サイドにスマッシュ
㋺ツッツキの素振りをしたあと、㋥、㋭と同じようにボールを送ってもらい、両サイドにスマッシュ

 一流はやさしいボールも真剣に打つ

 これらの練習のとき注意することは、やさしいボールだからといって雑な打ち方を絶対しないことだ。やさしいからといって雑な打ち方をする人は、試合の厳しさを知らない人で、そのような人は大事なところで凡ミスをして勝てない。一流選手はどんなにやさしいボールでもいつも難しいボールを打つときと同じように真剣に打つ。そうするとフォームが崩れないからだ。
 私がこれらの基本的なスマッシュ練習のときに気をつけたことは、①構えがいいか ②脇を軽く締め、体を小さくしながらバックスイングを引いているか ③肩、腕に余分な力が入っていないか ④腰をしっかりひねっているか ⑤キチンと動いて打っているか ⑥打球するとき腰を使っているか ⑦ボールを最後まで見ているか ⑧ステップバックと踏み込みはいいか ⑨フリーハンドの使い方はいいか ⑩最後まで振り切っているか ⑪打球後、素早く戻っているか...等、スマッシュを打つときの基本動作を正確にチェックしながらスマッシュの基本を体に叩き込んだ。特に全日本や世界選手権、等の大試合の前は、鏡や窓ガラスに自分のスマッシュフォームを映し、最終チェックをしてから試合に臨んだ。私に限らず試合で勝負強い選手、スマッシュが勝負どころで入る選手は、みんなこういう努力をしている。さあ、がんばろう!



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年8月号に掲載されたものです。

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