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「作戦あれこれ」第102回 ツッツキをバックハンドでストレート攻撃

 "攻撃対攻撃の試合で勝つコツ"として、ストレート攻撃の重要性を2回にわたって述べてきた。が、今月号ではさらに、試合で安定した力を出すために、大変に効果的なストレートコースのつき方を紹介したい。
 それは、日本の攻撃選手が苦手としている、ツッツキをバックハンドでストレートにパンと弾いて打ち、相手の逆をついて相手に攻撃させない技術だ。
 この技術は、以前から必要性が高かったが、最近は以前にも増して欠くことのできない技術になってきた。というのは、最近は、中・高校生でも、ママさんでも、試合がうまいといわれる選手は、相手のバックにタイミングの早いツッツキを送り、相手に回り込んで攻めさせない技術を使うようになってきたからだ。たとえば、フォアに変化サービスを出し、バックへくるツッツキを回り込めない時は、バウンド直後をバックに早いタイミングでツッツいて相手に回り込んで攻めさせないという技術だ。そのツッツキをバックのツッツキでしか返せないと相手の好きなように攻撃されてしまう。
 こんなとき、それほどスピードがなくても、このツッツキをバックハンドでストレートにパンと弾いて打てたら、両者の形勢を一転させることができる。
 なぜなら、タイミングの早いツッツキで返球した後の相手の読みは「相手はバックにツッツいてくるだろう」とバック側に回り込むケースがほとんどだからだ。だからスピードがなくても、ツッツくような感じからボールをひきつけてパンと打てば、相手の体勢は大きく崩れたり、場合によってはノータッチで抜けたりする。また、このストレート攻撃をうまく使うと、相手はこの攻撃を恐れて足が止まり、クロスに打ったり、ツッツいたときでもつないでくるようになりやすい。こうなれば、こちらの思うような攻撃ができ、試合巧者の選手に対しても大変強くなれる。

 古い考え方は捨てよ

 ところが日本では、私もそういわれていたように「フォアハンドだけで動け!バックハンドは使うな!」「中・高校時代からツッツキをバックハンドで返すなどもってのほかだ」という古い考え方が根強く残っている。そのため、中学生のうちから、ツッツキをバックハンドでストレートに打たせる指導者はほとんどいない。大変に残念なことだ。そのために選手自身も「ツッツキをバックハンドでストレートに返すのはよくない」と考えたり「フォアハンドが十分できないうちにバックハンドを振ると、生意気だ、と叱られるのではないか」と思ったりしてやらない。そのために、こういった技術をマスターできないのが日本の中・高校生、あるいは一般の現状だ。
 確かに、フォアハンド主戦型の選手が、フォアハンドだけでも動けるようにすることは大事だ。が、以前より卓球の技術、戦術が進歩した現在では「フォアだけで動け。バックハンドを使うな」という昔の考え方ではとても通用しない。もはやフォアハンドだけで戦える時代ではないのだ。ところが、実際には、バックハンドといっても、しのぎやチャンスボールを攻める程度の技術しかなく効果的な練習をしている選手が少ない。実戦ではツッツキやループをバックハンド攻撃(もしくはプッシュ)する、または変化サービスをバックハンドでレシーブする、という技術をマスターしなければ勝てない時代になっているのだ。このことを指導者も選手もはっきり認識しなければならない。

 やさしいバックハンドでのツッツキ打ち

 ツッツキをバックハンドで攻撃する技術は、むずかしいと考えがちだが、フォームが
固まればむしろフォアハンドのツッツキ打ちよりもやさしい。バックハンドが苦手な選手は、まずそのことを頭の中にしっかり入れて練習してほしい。
 では、バックハンドのツッツキ打ちを早くマスターする練習方法を紹介しよう。
[早く覚える練習方法]
①相手のバック側から自分のバック側に無回転に近い下切れサービスを出してもらい、それをバックハンドの打ちやすい右足前(右利き)の構えではじめから待って、クロス、ストレートに打ち分ける(シェークの選手は左足前でも可能)
②無回転サービスを狙ったところに正確に打ち分けられるようになったら、徐々に強い下回転サービスを出してもらい、両サイドに打ち分ける
③②が正確にできるようになったら、今度は試合の時と同じレシーブ位置から動いて①→②のサービスを両サイドに打ち分ける練習をする
④③ができるようになったら、次は相手のバック側にカットサービスを出し、切らない甘いツッツキで返してもらって両サイドに打ち分ける
⑤④と同じサービスを出し、切ってツッツいてもらい両サイドに打ち分ける。このころになると甘いボールに対してはスマッシュしても入るようになるだろう
 このように、やさしい練習から入っていくのが早く覚える近道だし、練習も楽しい。反対にいきなりむずかしい練習から入ると、なかなか覚えにくいし練習が苦痛になりやすい。

 腰をひねり、肘を内側に入れる

 バックハンドをうまく打つ技術的なコツとしては、
①右足前に構えた姿勢(右利き、シェークは左足前も可)から、ツッツキのスピードに合わせて腰をひねり、重心を左足に移しボールを引きつける
②①のとき、腰をひねると同時にペングリップの選手は肘をへその近くにくっつけるようにしながら右肩をからだの内側に入れる(シェークの選手は前に出した肘をややうしろに引く。体にはつかない)そうすると肩、腕、手首の力が抜けるため、両サイドにスムーズに振りやすい
③バックスイングのとき、ラケットの面をツッツキが打ちやすいようにやや上向きにして待つ(ループドライブを強打するときなどは、反対にラケットの面を下向きにする)
④ツッツキを打つインパクトの瞬間は、左足から右足に重心移動をキチンとやり、ミートを鋭くする
⑤フリーハンドは、シェークもペンもスイングと逆に、前からうしろに引きその反動を利用して打つ
⑥しっかり最後まで振り切る
...などのことを注意して打つとうまく打てる。できたら、バック前のカットサービスに対しても練習をやっておくとよい(シェークの選手は先月号のヨーロッパ式シェークプレーを参考に)。また、逆モーションサービスのうまい選手と対戦し、フォア前を予想した時にバックへ大きく斜め回転サービスを出されたときもストレートにポンと打つと非常に効果が高い。
 今まで述べたように、バックハンドをストレートに打つ技術をマスターすると戦力が大幅にアップする。しかし、フォアハンド主戦の選手がバックハンドを覚えたからといって、使いすぎないことも大切だ。使いすぎると攻撃力が大幅に低下すると同時に慣れられて最後はバックをつぶされてしまうからだ。だから基本的には、どうしても回り込めない、あるいは回り込むと不利になるボールだけをバックハンドで攻撃する戦法をとったほうがよい。その使い分けをしっかりやらないと、バックハンドが上手になっても逆に弱くなってしまうことさえあるので十分に気をつけよう。
 しかし、使う時はフォアと同等に、そして、勝負どころでも自信をもって振れるように、場面を想定してしっかりバックハンドを練習しよう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年12月号に掲載されたものです。

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