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「作戦あれこれ」第101回 ストレートへのショートとツッツキ

 "攻撃対攻撃の試合で勝つコツ"として「ストレート攻撃がいかに重要であるか」を前回述べた。
 この"ストレート攻撃"は確かに重要であるが、攻撃対攻撃で勝つためにはこのストレート攻撃だけでなく他の技術でも、ストレートにつないだり、しのいだりできるように練習することが、スマッシュやドライブで攻撃するのと同じくらい大切である。

 大切なショートとツッツキの練習

 前回「ストレートに強打や強ドライブの練習をしよう」と書いた。こういった派手な練習はやっていても楽しいし、確かに効果も高い。しかし、試合で本当に勝ちたいと思っている選手なら、こういった練習よりまず気味で確実な"ショート""ツッツキ"の練習をじっくりやり込むべきなのである。
 特に、中・高校生の場合なら、試合でしっかりしたショート・ツッツキができれば、本当に勝負強い選手になれる。ところがほとんどの選手は、こういった"つなぎ"や"しのぎ"の技術に目がいかず「あの時、スマッシュが入れば勝てたのに...」「相手のドライブがよかったから...」と、派手な技術のほうに目がいってしまう。本当は、打つ1本前のツッツキやショートがよければ自分のスマッシュは入るものだし、相手のドライブはミスになるものなのである。
 「ツッツキやショートはミスしないように相手コートに返しておけばよい」と思っている選手は、試合でなかなか勝てない。勝負強い選手になるために、ショートやツッツキの基本練習をしっかりやろう。

 ライバル河野選手を想定して練習に励む

 私が「ツッツキとショートが大変に大事だ」と強く意識しだしたのは、ライバルの河野選手と対戦した大学1年のときであった。
 この当時、私は河野選手のような本当にピッチの早い速攻選手は嫌いだった。勝てる気がしなかった。それは私のショートやツッツキに威力と安定性がなく、速攻をやすやすと許してしまったからだ。その河野選手と大学1年の全日本大学対抗の準々決勝・2番でついに対戦することになった。私は必死に戦った。そして2ゲーム目を奇跡的な逆転で勝ち幸運にもストレート勝ちしたものの、本当に危うい勝利だった。
 私はライバルの河野選手に勝ったとはいうものの「今のショートやツッツキの技術ではやられてしまう」と思うと、喜んではいられなかった。そして、学校へ帰ってから、ショートとツッツキの基本練習に取り組んだ。ショートは相手の打ったボールを低くコースをついて返すことと、スマッシュや強打をしのぐこと、そしてツッツキは強く切って狙ったところへ返す練習だ。特に速攻選手の苦手なフォアへボールがいくようにバックストレートへショートとツッツキができるように心掛けた。そして、その後河野選手と一緒に出場する大会前は、どんなに基本練習の時間が短くても、練習相手を河野選手と想定してショートとツッツキの練習を入念にやった。そのおかげでショートとツッツキが安定し、その後は河野選手のみならず、中国選手はじめ対表ソフト攻撃型に非常に強くなれた。このことは同時に対ドライブマンとの対戦でも役にたった。

 一球一球足を動かし基本に忠実に返せ

 では、私がショートやツッツキの基本練習をするときに、気をつけたことを述べてみよう。
①はじめはゆっくりしたショート・ツッツキでラリーを続け、基本に忠実なフォーム(回転をよく見ているか。しっかり動いているか...等)を身につける
②基本に忠実に打つくせがついたら、ツッツキの場合は強く切れるように、ショートはプッシュで返せるようにする
③次は、クロスコースならサイドを切るように、ストレートならサイドラインぎりぎりに丸をかき、その丸に入れるようにしてコントロールをつけるようにする
④ネットすれすれに返せるようにする
⑤最後はバウンド直後を打球したり、ゆっくり打球したりリズムを変えて打球できるようにする
 私は大学1年からこのようなことを考えながらショート・ツッツキの練習をした。なかなか完璧なショート・ツッツキができずくやしい思いをしたが、一球一球工夫しながら打球したことで練習が楽しくなり、グングン上達するのが自分でもわかった。

 足を動かさない中・高校生が多い

 最近、中・高校生の選手のショートやツッツキの練習を見ていて強く感じるのは、足を動かさない選手が実に多いことだ。これでは、試合のとき、特に競った場面ではどうしてもミスが出てしまう。ショートやツッツキは別に足を動かさなくてもできるからといって、練習の時に甘い気持ちでやっていると、悪いクセがついてしまうものだ。こうなると、いくら試合で急にうまくやろうとしてもできない。ツッツキやショートは試合の中で非常に大事な技術であるので、基本練習のときから完璧なショートやツッツキができるように真剣に心をこめて練習に取り組もう。
 フットワーク練習の相手をするときや、相手の3球目ドライブの練習のときなどは、ショートやツッツキ練習をする絶好のチャンス。「自分の練習だ」と思って真剣にやろう。

 ストレートにツッツキレシーブ

 ショートとツッツキの基本練習は、正確なフォームや足の運び、コントロール、等を身につけるために非常に大切な練習だが、かといって基本練習だけでは不十分だ。やはり実戦的な練習もどんどんやらなければならない。
 たとえば、バック前に変化サービスを出してもらい、それをクロスとストレートに手首を鋭く使って切るレシーブをする。それをこちらのバック側にドライブ、もしくは強打で攻めてもらい、ショートでストレートに攻める。あるいは、ショートサービスを出して、バック前にストップレシーブで返してもらい、3球目ツッツキでストレートやクロスに強く切って攻める。
 強打やスマッシュをショートでしのぐ練習をしたい場合は、相手にドライブロングサービスやショートサービスを出してもらい、相手のバックにショートやツッツキでやや高めに返し、バックへスマッシュしてもらって、それをショートでストレート、クロスに返す。この練習はボールをたくさん使ってやっても効果的だ。
 このように、ツッツキやショートで攻める練習だけでなく「自分はこうされると弱い」というレシーブから4球目の練習を必ずやっておこう。これをやっておくと恐怖心がなくなり、試合で余裕をもってツッツキやショートができるようになる。
 このとき「ライバルと決勝戦で対戦しているのだ」と思って練習するとグングンうまくなる。ツッツキとショートの技術は、攻撃対攻撃の試合では勝敗の鍵を握る非常に大事な技術だ。しっかり練習しよう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年11月号に掲載されたものです。

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