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「作戦あれこれ」第125回 カット型攻略法のまとめ

 前回は、「カットマンがロングマンにツッツキをさせ、そのツッツキをドライブ攻撃する」作戦できた時の対処法を紹介した。今回はその話をもう少し進めてみよう。

 カットマンのプレーを読む

 前回紹介したように、良いツッツキ(低い、よく切れている...等)で返せば、カットマンはカットにもどるかドライブで攻めてくるケースが多い。しかし、そのほかにも①思い切ったスマッシュ ②変化ツッツキから次球をスマッシュ(強ドライブ) ③切れたツッツキでドライブマンにループをかけさせスマッシュ ④イボ高プッシュ...などのプレーで攻めてくる。たとえ自分が良いツッツキで返してもカットマンがこういった多彩な攻撃をしかけてくることをまず頭に入れておかなくてはならない。こういったプレーを理解していないと試合で判断が遅れ、準備不足のためよい対処ができなくなる。

 ツッツキ攻撃に対してはドライブ

 まず、①の「思い切ったスマッシュ攻撃」に対しては、精神的に動揺しないことが大切だ。カット対ドライブのラリーから鋭い切れたカットを送り、ロングマンがツッツくところをバックへ回り込んでフォアハンドスマッシュと...いうパターンは明大の松下浩選手が得意とするパターンだが、スマッシュで得点されるのはある程度しかたない。カットマンにしてもスマッシュはミスを覚悟で勝負をかけてきているのだから。こういった場合は、相手の得意のツボをはずすように、フォアへツッツいたり、早いタイミングでツッツいたりすればよい。また入ったとしても、得意のコースを待って「半分返せればよい」と考え、プレーする。
 いけないのは、スマッシュを恐れて足が止まり②の「変化ツッツキからのスマッシュ攻撃」をあびることだ。というのは、例えばフォアからストレートにドライブしたボールを、早い打点でバックに切ってカットされたとする。これを無理に回り込んでドライブすると7割以上ミスしそうなのでツッツいて返す。これはいい。バックへツッツいたとして、カットマンがこのボールをフォアスマッシュするためには大きく回り込み、動きながら打たなくてはならない。これならスマッシュの入る確率は低いしコースも狙いずらい。
 ところがこの場面で、カットマンが打ちそうな格好をしながらも、低くて打てないボールを冷静に判断し、フォアハンドで回り込み切らないツッツキで攻めてくる、あるいはバック面のイボ高やアンチで切らないツッツキを送ってくるのに対し、スマッシュすることばかりを考えて、変化が読めずつい甘い高いツッツキを送る。これがいけない。カットマンに万全な体勢でスマッシュされてしまう。これではカットマンはミスが出ず、コースも読めず、まったくとれない。
 こういう時に大切なのが、打球後の予測だ。ツッツいた後「相手がドライブ(スマッシュ)で攻めてきたらブロック。しかし、ツッツいてくる可能性もあるのでその時はすばやく動いてドライブ攻撃」と思って次球を待つことだ。そうすれば、カットマンがこちらのツッツキを打ってきたボールをドライブで攻め込むことができ、ピンチを逆にチャンスに変えることができる。
 カットマンにすれば「ツッツくとドライブで攻められる」と思うため、低いツッツキでも無理して打ったり、変化ツッツキで攻めた後も「ドライブされるかもしれない」と思って攻撃できず、またすぐカットにもどるプレーが多くなる。そうなればロングマンのペースだ。
 ただし、基本は「カットマンの変化ツッツキにはドライブ」でも、カットに対する自分のツッツキが甘くて動けない時は「打ってこないな、1本もうけた。次のツッツキを打てるなら打ってみろ」と攻めの気持ちで、ツッツキの変化をよくみて、深くて低い鋭く切れたツッツキで返す。そうすれば再び互角のラリーにもどせる。

 ループを狙ってきた時は

 相手が大学、社会人クラスのカットマンになると、③の「切ったツッツキをドライブマンにループをかけさせ、それをスマッシュ」する作戦を使ってくる。これは、こちらのドライブに威力があれば使えないので、カットマンはこちらのフォアサイドに切ったカットを送る、もしくはバックへつめて甘くなったドライブを狙ってくる。
 この作戦に対しても読みが大切だ。というのはこちらのボールに威力があれば使えない作戦なので「次はカットマンが切れたカット(ツッツキ)をフォア(バック)へ送ってくるな」と事前に読み、威力のあるストレートへの強ドライブ等で強しゅうする。前回も述べたように、郭躍華、陳竜燦、河野選手のようにカット打ちの名手はカットマンのこういった切ったツッツキを狙い打ちするのが得意だ。カットマンは打とうとするところを打たれるので、まったく拾えない。
 河野選手らのレベルまではいかないにしても、時おりこのボールを待って威力のあるドライブで攻めるプレーをまぜると、カットマンはこのプレーができなくなってくる。

 イボ高プッシュの攻略法

 ④のイボ高プッシュでカットマンが攻めてきた時も事前の読みが大切になる。その読みさえ正確であればイボ高プッシュはさほど恐くない。
 たしかにイボ高プッシュはスピードもあり、イボ高ツッツキとフォームの見分けもつきにくいが、予想してあればスマッシュほどのスピードはなく楽にとれる。球質も、ツッツキに対しては軽い前進回転で攻めやすい[こちらのツッツキに対してはツッツキも切れない。こちらのロング(ドライブ)に対しては切れる]。そこで相手がイボ高プッシュしてきそうな場面では、フォアへきたら強打(強ドライブ)、バックへきたらプッシュで攻め返し、甘くなった次のカットをすかさず攻め込む。
 ただしここで注意しなくてはいけないのは、低い切れたツッツキを送ってもイボ高プッシュはされること。バックへいいツッツキを送ったからといってむやみに回り込むようでは、フォアへイボ高プッシュされ、次を狙い打ちされてしまう。
 相手のプレーを正確に予測することが大切である。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1986年11月号に掲載されたものです。
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