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「作戦あれこれ」第133回 フォア前レシーブを強化して勝つ

 フォア前レシーブの苦手な選手は多い。
 強く払うとミスが出る。切ったツッツキができない。ストップレシーブがやりずらい...。
 レシーブ位置から一番遠いのがフォア前。しかもバック前にくらべて手首が使いずらいため、うまく処理できない選手が多い。逆にいえば強い選手はほとんどが、このフォア前サービスからの攻撃システムをもっている。対ヨーロッパ戦術として最も効果的なのが、このフォア前~ミドル前サービスからの攻めである。試合で安定して勝つためには、このフォア前レシーブの強化が絶対必要。
 オヤッ?われらが仲間D君が首をかしげているぞ!

 フォア前レシーブで完敗

 バック前レシーブと、次の4球目飛びつき攻撃に自信をつけてきたD君(右、ペン、ドライブ型)だったが、先日の学校対抗のB君(右、シェーク、攻撃型)との試合は不満足な内容だった。
 良く切れたB君のバックハンドフォア前サービスに対して、払うレシーブにミスが続出。斜め下回転なのでストップもできず、入れるだけのツッツキを3球目ドライブで狙い打たれて完敗した。D君もフォア前サービスからの展開を使ったが、切れていないのでB君のレシーブにはミスが少なく、切ろうとするとサービスが台から出て、レシーブドライブされてしまった。
 対抗試合もD君の高校が3-4で敗れた。ふがいない自分の試合にD君は腹がたってきた。
 さて、D君のみならず、フォア前レシーブがうまくできず悔しい思いをした選手のため、どんな考え方でフォア前レシーブをしたらよいかを考えてみよう。

 まず自滅をしない

 まず肝心なことは、サービスの変化を見極め、正しいラケット角度を出すことである。
 フォア前に限らず、フォア側にサービスがくると、どうしても「打たなくては」「攻撃しなくては」の気持ちになり、無理なボールまで打って自滅するケースが多い。
 必要な時に打たないのも悪いが「入ってくれ!」とばかり、2~3割しか入る確率がないのに無理して打ったのでは調子を崩すばかり。相手は「打ってミスした」となれば「次はツッツいてくるな」と読み、アップ系(切らないサービスや横回転)サービスを出し、次を回り込んで思いきったドライブ攻撃をしてくる。
 自分が相手のフォア前にサービスを出した時を考えてみよう。一番楽なのは何といってもレシーブミスしてくれることだ。たとえ強打されても、ほとんど入る可能性がなければ、何本も同じ場所にサービスを集めることだろう。相手のミスが多ければコースも読みやすい。
 ところが、フォア前に変化サービスを出しても、正確に、低く、分かりずらいコースにレシーブされると、全部攻めることは難しい。ミスの多い強打レシーブより、はるかにイヤである。
 試合では相手も自分と同じ。自分がやられてイヤなことは相手もイヤなものである。無理な強打レシーブをしてミスするより、まず正確にラケット角度をだし、コースをついて正確に返すことが基本。スピードがなくてもそうは打ち抜かれないし、4球目で守ることもできる。

 相手の読みをはずす

 とはいえ、ただ角度を合わせて入れるだけのレシーブでは強い相手には通用しない。レシーブミスよりは、はるかにいいとはいうものの、先手をとれない。
 強い選手に狙い打たれないためには、相手の予想を少しはずすことがコツである。たとえば
○フォアにくるように見えたがバックにきた
○ツッツキがちょっと切れていた
○ツッツキにみえたが、ストップだった
○払うと思ったら横回転レシーブだった
○ツッツくかと思ったらフォアへ払ってきた
...など、ほかにも色々あると思う。いかにもバックへツッツく格好でバックへツッツいたり、フォアへ払おうとするのがみえみえだったりするのでは強い選手には通用しない。鏡をみて、どちらに返すのか自分でも分からないフォームになっていれば合格である。
 さらに「レシーブがうまい選手」といわれるには、前途したように、いかにも払いそうなバックスイングからストップしたり、ツッツキの格好からパッと手首のひねりで払えたりすればいい。ただし、やりすぎは禁物。ミスが多く出たり、相手にクセを見抜かれて狙われるようでは何にもならない。

 フォア前のレシーブ技術

 さて、"安全にミスせず返すことが基本"をいうために、テクニックの話が先になってしまったが、基本的なフォア前レシーブの方法を順に紹介しよう。
(1)払う(強打、中打、軽打、ナックル性)
 一番攻撃的なレシーブが強く払うレシーブである。このレシーブはミスの危険も高いが、威力があるため、一流になるためには絶対にマスターしなくてはならない。特に、相手が横回転や上回転のサービスを出してきた場合はストップやツッツキではレシーブしずらい。強く払うレシーブが一番効果的である。相手が払うのを待っている時でも、パカッとフォアクロスにサイドを切って抜いてしまう。バック、ミドルにも強く払えれば理想的だが、エースボールとしてフォアクロスに強打が安定して入れば合格といえる。ミドル、バックへは、中打・軽打で、逆モーションぎみに払えばよい。
 試合では、何でも強く払うのではなく「切れない下回転は強打」と強打する狙い球を決めておく。そうすればミスは少なくなり、相手は狙い球以外のサービスの時もフォアサイドを警戒し、動きがにぶくなる。
 払う、というのは、前腕、手首を活用し、前進回転をかけてはじく打法だが、よく切れた下回転のショートサービスなどにたいしては、ナックル性で払う打法もある。これは相手サービスの回転にあわせて当てれば入るラケット角度を出し、頂点をとらえてツッツキの感じでインパクトした後、普通の払いと同じスイングをする。打球はすべるようにスーッとナックル性で飛ばす。バック系技術のへたな選手のバックや、打とうといきりたっている選手のフォアへこの打法でレシーブすると相手はつないでくるかミスすることが多い。注意点としては、ボールが真っすぐ飛んでいくため入れるのが難しく、小さいサービスの時だけ使うこと。
(2)ツッツキ(切る、切らない)
 ツッツキは、常に切るツッツキを第一に考えるべきである。
 フォア前のツッツキを切ることは難しいが、自分が攻撃する身になってみれば、切れていない入れるだけのツッツキは一番攻撃しやすいことがわかるだろう。したがって、払う格好から逆をついてストップぎみにツッツく...などという難しい使い方の場合は切らないツッツキでも良いが、はっきりツッツこうという場合は、まずツッツキを切る習慣をつけること。
 ツッツキは誰でも使える技術であるが、レベルの低い技術ではない。江加良(中国、世界チャンピオン)らに対しては、払うより切ってツッツいたほうが有利な展開になるケースが多い。低く、切って、狙ったコースに返せるようになれば、ゆるく払うより効果が高い。
(3)ストップ
 下回転の切れたサービスに対して、安全に先手をとりやすいのがこのストップレシーブである。
 バウンド直後をとらえ、正確に角度を出して上から下に当てるだけのスイングをすればどんな回転のショートサービスでもストップできるが、横回転や斜め回転のサービスは大きくなりやすいので注意。相手の読みの逆をつけばよいが、待たれた場合、台から少し出たストップは決定球を打たれやすい。初めから「ストップ」と決めつけるとそうなったり、プレー自体が縮まった形になりやすいので「払って攻めよう」としたが、下回転の切れた払いずらいストップのやりやすいサービスだったので自然に使った、というケースで使うのが望ましい。
 上手に使えば、相手のフォア前にストップしたほうが効果が高い。特に相手が回り込んで攻めようとしている時は効果的である。バック前へ止めた時は、相手の次のツッツキを攻め込めるように練習しておくこと。
(4)横回転レシーブ
 相手の読みをはずすのに適したレシーブである。慣れていない相手には特に効果が高い。シェークの選手は難しいが、ペンの選手はバックの横回転ツッツキのようにカーブさせる方法(6月号"何志文のレシーブ"参照)と、フォアの横回転サービスの要領でシュートさせる方法とがある。

 注意点と練習方法

 以上、フォア前レシーブのあれこれを紹介したが、最後にフォア前レシーブの注意点をあげておこう。
ア、相手サービスの変化をよく見る
イ、怖がらず、自分のやることをしっかりやる
ウ、速いスタートを切り、素早く動く
エ、ボールの近くまで顔をもっていくようにする
オ、ストップはバウンド直後、ツッツキ、払う場合は頂点をとらえて打球する
カ、払う場合は、左肩を前に出し、小手先でなく、腰の回転も使う。左肩を早く開きすぎないように
キ、強打しても、ストップしても、次球は必ず返ってくると思って、次球に備える
 練習方法としては、一番フォア前の処理しやすい位置に初めからたって打法をマスターし、次にレシーブ位置からの動きを練習すると早く覚えられる。
 フォア前レシーブのフットワークには、左足前の2歩道(レシーブ位置→右足→左足)と、右足前の1歩動とがある。短時間でネット際まで手を伸ばすには右足前のフットワークが速いが、中国のコーチも「打つためには左足前のほうが自然」というように、体の構造上からいっても左足前の方が強打にむいている。払うことを主軸におくなら左足前のレシーブがよいだろう。
 江加良はレシーブは右足前、ラリー中の浅いボールは左足前で打球する。筆者はレシーブは左足前が基本だが逆をつかれて間に合わない時は右足前を採用し「ツッツキ」と思う相手心理の逆をついてフォアへ払うレシーブを得意にしていた。
 どちらの足が前でも処理できるように練習しよう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1987年7月号に掲載されたものです。

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