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「作戦あれこれ」第134回 フォア前レシーブからの攻守

 フォア前レシーブの基本的なレシーブ法については前回説明した。
 しかし、レシーブの種類については分かったものの、われらがD君は困惑ぎみ。レシーブはしたものの、その後のラリー展開がうまくいかないのである。これではせっかくのレシーブが宝の持ちぐされ。自信をもって「フォア前レシーブはまかせておけ」と胸をはるわけにはいかない。
 そこで今回は、フォア前レシーブからの4球目、攻めと守りのパターンについて、D君と共に考えてみよう。

 合理的に守り、攻める

 フォア前のレシーブ方法を大きく分けると、前回あげたように四つある。
(1)払う(強打、中打、軽打、ナックル性)
(2)ツッツキ(切る、切らない)
(3)ストップ
(4)横回転レシーブ
 "レシーブ"というからには、基本は相手のサービスからの3球目攻撃を無理なくしのぐことにある。これが6~7割。そして、残りが攻めになる。
 攻撃対攻撃の試合であれば、相手も同じように攻めようとしているのだから、100%全部スマッシュで攻めようとすれば無理がでる。相手に逆用され自滅につながる。まず守りの基盤を固め、その上で合理的に攻撃するのが定石である。
 その意味で、今回はまず、初心者でもできるツッツキレシーブ+4球目から、順を追って紹介しよう。

 ツッツいた後の基本は、守り

 ツッツキレシーブと一言にいっても色々ある。やむなくやっと入れて返すというツッツキから、表ソフトに対して切ってタイミング速くツッツき、次球を狙い打ちする...といった攻撃的なツッツキまである。
 そこで、いくつかの状況に分けて考えてみたい。
(ア)初心者のツッツキレシーブ
 払ったり、ストップするレシーブができない、といったレベルの選手の場合だが、少しレベルが上になっても過緊張の状態や安全にいこうとする心理の時はこれに近い状況になることもある。
 そんな、ツッツキしかできない場合でも、バック側だけでなく、フォア側にもツッツいてみよう。フォア側へツッツくと打たれる気がするし、実際相手は打ってくることが多いが、たとえ打たれても、フォア側へのツッツキをまぜた方が得なのである。
 なぜなら、たとえフォアへのツッツキは打たれても、相手はバック側だけで待てなくなる。そのため、バック側への回り込みが遅くなったり、ツッツキでつないでくるケースが多くなる。その上、相手の攻撃にはミスもでるし、回り込んだ時にフォアへツッツけば、初心者の場合はノータッチで抜けるケースが多い。
 4球目は、このようにツッツいた場合、95%は守りの気持ちでよい。残りの5%は、フォアへツッツいた時に相手が回り込み、やっと飛びついてチャンスボールを上げてきた時に打つ心の準備をしておくことである。
 レベルの少し高い選手の場合は、相手が両ハンドで待っている時はミドルへツッツいたり、ワンバウンドで台から出るかどうかぐらいの短めのツッツキを混ぜると良い。中学生クラスの選手であれば、相手のサービス回転に合わせて正確にラケット角度を出し、コース(フォア、バック)、長短(深い、浅い)、打球タイミング(普通にツッツく、バウンドしてすぐツッツく)、回転(切る、切らない)...を使い分ければ、ツッツキだけでも、相当レベルの高いフォア前レシーブになる。
(イ)払えずツッツいてしまった場合
 払おうとしたが相手のサービスが猛烈に切れていて払うとミスが出そうだったり、回転が分からない、もしくは、足の動きが間に合わずにツッツくことがある。
 ある程度以上のレベルの選手の試合では、こんなケースでバックへ安全にツッツくと、まず強ドライブ(またはスマッシュ)で思いきって攻められると覚悟したほうがよい。
 もちろん可能であれば、横回転をかけてバックへくい込ませたり、切ったり、あるいは完全に予想を裏切ってフォアへ払うのがよいが、かなり高いレベルでないと難しい。無理をすれば自滅になりやすく、時間的にも不可能であろう。
 そこで、このような場合は、パッと下がって、100%守りの気持ちで待つ。そして「絶対ブロックするぞ」の強い意志を持つ。あきらめたら絶対にダメ。そして、前陣で打たれた方向にパッと手を出す。遠い場合は、近い方の足を動かし(一歩動)、最短時間で飛びつく。
 相手の打球コースが読めるなら、前陣ショートでフォアへカウンター的にゆさぶる。大振りした相手はやっと飛びつく。ノータッチ抜けることも多い。が、気持ちとしてはもう一本バックやゆさぶり、次を攻めるようにしたほうが確率が高い。
(ウ)作戦的に(攻撃的に)ツッツく場合
 これは表ソフトの速攻選手や、ループ+スマッシュ型の選手に対し、よく使うツッツキレシーブである。
 これは、速い打点でガツンと切って深くツッツき(コースはフォア、またはバック深く)、相手がループぎみのドライブで持ち上げてきたらスマッシュ。もしくはカウンタードライブやプッシュ等で攻め返す作戦である。
 しかし、相手に狙い打ちされる可能性もあるので、50%は強ドライブ、もしくはスマッシュで攻められることを予想し、攻め50%、守り50%の気持ちで待つとよい。

 払ったあとは、すぐもどる

 払うレシーブはスピードがあり、相手に大振りする時間を与えない。また、払ったボールは相手が猛烈なループをかけずらく、単調なドライブになりやすい。そのため、選手の多くはとにかく払おう、払いさえすればだいじょうぶ、とつい安易に考えがちになる。しかし、同じ払うのでも状況により大違いなのである。
(ア)フォアへ軽く払った場合
 フォアへ軽く払った時は、90%以上守りの気持ちで3球目攻撃に備えなくてはならない。たとえナックル性で払っても強ドライブがくる。10%の攻めは、逆をついた場合のみである。フォアへの軽打は多用できない。
 しかし、フォアへ払うことで相手の足を止める効果はある。コースが読めればしのぐこともできる。また中には、ツッツキに対しては全力ドライブできるのに、払われるとフワッと軽くドライブをかけるのがクセの選手もいる。ナックル性で払うとネットミスする選手もいる。こういう選手にはフォアへの軽打がきく。
 こういった状況で使ったり、逆をつく工夫をすれば、フォアへ軽く払うレシーブも効果的に使える。
(イ)バックへ軽く払った場合
 実戦で比較的多いレシーブである。フォアへ強く払うレシーブと組み合わせて使ったり、流しぎみに逆をついて払うケースが多い。
 ドライブ、特にフォアドライブで回り込んでくる相手に対しては、遠くから打たせることになるし、ドライブの回転が一定になるので4球目が処理しやすくなる。バック側が入れるだけのショートになる選手であれば、軽く払ってショートさせ、両ハンドで狙い打てる。
 しかし、強打やバックスマッシュ、バックプッシュのうまい相手には狙い打たれる可能性が高い。そんな時には、低い切ったツッツキでレシーブしたほうが、守りに戻るまでの時間がかせげ有利。ツッツキのほうが、相手が打ちあぐんでツッツキになるケースが逆にふえる。
(ウ)強くフォアへ払った場合
 成功すれば非常に効果的なレシーブだが、この場合も30%は守りの気持ちを持っていなくてはいけない。
 というのは、いくらいいレシーブをしても、相手に前陣でパッとストレートに合わされると、もどる時間がないためバックを抜かれるからである。
 フォアへ強く払った後は、スマッシュ対スマッシュの気持ちですぐに基本位置にもどる。バックへきたらプッシュ、ハーフボレーでバックへ素早くゆさぶる。
(エ)バックへ強く払った場合
 この場合も、もどりの速さが重要である。バック側はフォア側のようにスマッシュ、強ドライブされる可能性は少ないが、前陣のショート(プッシュ)、ハーフボレ―でパッと合わされるケースがふえる。そのボールに対し合わせてしまうと、5球目で逆転される。
 したがって、バックへ強く払った後は、素早くニュートラル(ラリー中の基本位置、姿勢)にもどり、ショートを強ドライブ、もしくは両ハンドで連続攻撃する。攻撃70%、相手に狙われる可能性を30%と思ってプレーすると良い。

 ストップと、横回転レシーブ

 ストップは技術的に難しいし、そのあとの展開も複雑で一言では説明しきれない。しかし、積極的に(フォアドライブで)攻める気持ちを持たないと、いいストップをした後またツッツくことになり、元も子もない。
(ア)フォア前へのストップ
 コースとしては一番よい。甘いストップだと狙い打ちされる危険性もあるが、うまく止まれば相手のつなぎボール(主としてツッツキ)が大きくなりやすく、フォアドライブで狙い打ちできる。攻め50%、守り50%の気持ちで4球目に備える。
(イ)バック前にストップした場合
 シェークの選手には狙われやすい。ペンの選手にはバックハンドでは狙われにくいが、早い打点でスピードのあるツッツキ、横回転ショートをされやすい。素早く動いて、フォアドライブで攻め込む練習を十二分にしておく必要がある。攻め60%、守り40%の気持ちで待つ。
(ウ)横回転レシーブ
 横回転レシーブは、軽く払うレシーブと基本的には同じと考えてよい。ただし、慣れていない相手には逆をつきやすいので、相手がつないでくるケースがふえる。その分だけ、攻撃的な気持ちで3球目に備える。
 フォア前レシーブは奥が深く、常に強化しなくてはならない。夏の間のD君の猛練習が飛躍への鍵である。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1987年8月号に掲載されたものです。

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