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「作戦あれこれ」第158回 ヨーロッパの台上処理に学ぶ

 新しい技術を吸収しよう

 ドルトムント世界選手権を見て感じたことはいくつもあるがその中でもヨーロッパ勢のネットプレーの上達ぶりには目を見はらされた。台上処理がやりづらいといわれるシェークハンドグリップであるが、アジアのペンホルダーグリップを上回る巧みな台上処理技術であった。
 うまいネットプレーをするには、①サービスの変化を正確に見極める。②サービスに対し素早く反応し、レシーブしやすい位置まで動く...といったことがまず基本にあるが、その上で、ボールを処理する技術、打法について日本選手は学ばなくてはならない点が多い。たしかにヨーロッパ選手と日本の選手とでは、体格も違うし、現在のところプレーぶりも違う。しかし、世界で勝つという点で考えれば、遅れをとっているわけで、早く日本選手もヨーロッパの新しい技術を、日本選手に合った形で吸収するように心がけるべきである。

 グリップを変えて処理する

 台上を処理する時、ペン、シェークを問わず気をつけるべき点が「手首を柔らかく使う」ことと「グリップを台上処理しやすいように変える」ことである。特に「グリップを変える」ことは最近のヨーロッパ選手が台上処理がうまくなった原因であり、シェークの選手はぜひ参考にしたい。
 レシーブおよび台上処理については7~8月号の本誌"技術"でも述べられているので参考にしてほしいが、その中でも述べられているように「グリップは必要に応じて変える」のが自然なのである。選手のなかには「自分はグリップが変わらない」とか「変えるとグリップがフラフラして安定しなくなる」と感じる人もいるだろうが、グリップを変えない人であっても技術によって親指や人指し指への力の入れ具合は変わるし「グリップは変わってあたり前」と考えたほうが、技術面での広がりや精神面での余裕がでてくる。

 シェークのフォア前処理

 ヨーロッパスタイルのシェーク攻撃型がフォア前処理をする時はグリップを変えたほうがやりやすい。
 日本のシェーク選手の多くがグリップを変えず、しかも固く握っているため、ラケット面が最初からフォアクロスを向いてしまっている。そのためフォアストレートに払うことが難しい。また、親指に力が入ってしまい打球前にラケット面が下を向いてしまうと切れたボールを払うのが難しく、ツッツキになってしまう。
 うまくフォア前をストレートに払うコツとしては、親指を立て(サムアップ。人指し指から離して)、小指、薬指、中指の3本でラケットを軽く握る感じにする。ちょうど指で鉄砲をつくるような形にする。そうするとラケット面がフォアストレートを向くようになる。
 またフォアハンドでフォアストレートやバッククロスに台上ボールを打つ時はラケットの先を上げるようにすると払いやすい。これはシェークのみならず、ペンの場合も同じである。特にシェークの選手が、ワルドナー(スウェーデン)らがやるようなバックへの流しレシーブで払っていく時はやりやすい。これが日本の選手が見落としやすいコツである。ペンホルダーの選手もグリップの先が下を向いていると、フォアクロスには払いやすいがバックへは払いづらい。バックへ払う時はラケットの先をあげることである。

 打球面を上に向けておく

 フォアハンドで台上ボールを処理する時は、打球前にラケット面を上に向けているとカット性ボールが処理しやすい。ワルドナーらがやるように、角度だけ合わせておき、(弾む接着剤の威力を利用して)払うナックル性のレシーブがしやすい。またラケット面が上を向いていると、そのまままの形からストップや切るツッツキに移りやすい。
 とはいえ、ラケット面を上に向けていると角度だけ合わせて入れるレシーブはやりやすいが、ドライブをかけながら強くはじく打法ができなくなる恐れがある。そのため、筆者は強く払う時は高くあげたラケットを下ろす反動を利用し、Vの字を逆から書く感じのスイングで打球した。ドライブと強打の中間の打法である。こういった打法が合う選手もいることだろう。

 フォア、バック両面で処理する

 台上処理の技術で日本の選手がまだ研究が足りないなと感じるのがフォアハンド、バックハンドの両方で処理できる範囲が狭いことである。
 例えば、ヨーロッパの右利き同士の対戦では、フォア前に出されたバックサービスに対しバック系技術で処理することがそう珍しくない。ところが日本ではまずお目にかかれない。日本では、バック前に出されたサービスに対してはフォアで回り込んでもバックでも処理するがその他はフォアにきたらフォア、バックにきたらバック...の感が強い。ヨーロッパのシェークに限らず、ペンでも韓国や中国の選手はミドル前に出されたバックサービスをバックプッシュで相手のフォアにレシーブする技術を見せる。そのためプレーに意外性がある。日本の選手も、なるべく広い範囲を両ハンドで多彩なレシーブができるように研究しよう。それが個性につながる。

 当てるだけの返球はしない

 ペン、シェークを問わず、日本選手の"変化"の点で今ひとつ物足りない点がある。それに対してヨーロッパのトッププレーヤーたちの台上処理は、まず単調に返すことがなく、回転がかかっていたり、逆モーション打法であったりする。
 フォア前のボールをフォアツッツキで狙ったところに切って返すことができるだろうか?もし「できる」と答えたならたいしたもの。日本の選手でこの技術をマスターしている選手はごく少ない。そのためフォア前でツッツいたボールが相手のチャンスになってしまう。
 もしこのボールを切ってツッツくことができたらどうだろうか?至近距離からの切れたツッツキを相手は攻めることができず、つないでくるボールを逆に狙い打つことができる。
 逆をつかれた時でも、瞬間的にフォア前ボールを切ってツッツけるように練習しておこう。

 小手先だけで台上処理しない

 さて、台上処理の技術について幾つか述べてきたが、これらの技術はすべて、手首、グリップの活用が大事である。と同時に、手首、グリップのみの「小手先の技術に終わらせてはダメ」なものである。
 冒頭にも述べたように台上処理の基本は、正しく変化を見極め「十分な体勢で処理できるところまで素早く動く」ことである。十分な体勢であれば相手は「打たれるかも知れない」と警戒し、自分はミス少なく威力あるボールを打つことができる。また体を使った逆モーション打法もできる。
 相手に迫力を感じさせるぐらい、ボールの近くまで足を運んでグッと体を寄せ、十分な体勢で台上処理するように心がけよう。

 台上処理後の次球が大切

 先日、白鵬女子高校で近藤欽司監督と全日本チャンピオンの佐藤利香選手が多球練習しているのを見学した。
 近藤先生がネット際にカット性ボールを送る。佐藤選手がニュートラル(ラリー中の基本姿勢・位置)から飛び込んでフォア強打、バック強打で台上ボールを狙い打つ。どんなにいいボールが入っても、近藤先生は次球スマッシュに近い強打でコースをつく。すると佐藤選手はスッとニュートラルにもどっていて、1本確実にコースをついてしのぐ...。
 色々な多球練習の組み合わせの中のひとつであったが台上処理の強化練習として非常にすばらしく、近藤先生のボールを出すタイミングの良さ、佐藤選手のプレーの切れと戻りの速さ等「さすが高校2年生の全日本チャンピオンを生んだ学校の練習だ」と感心させられた。
 言うまでもなく、台上処理はそれだけが独立しているのでなく連係プレーの中の一部である。逆をついて払っても強打で狙われることもある。台上プレーだけでなく、白鵬女子高校の練習のように「必ず次のボールも返ってくる」ことを予想し、実戦同様の形で練習しよう。
 また足の踏み込み方等についても、ビデオ、連続写真を参考に「時間のない時は逆足(右ききの選手がフォア前を打つ時に右足前)のほうが速い」「時間的に余裕のある時は順足(フォア前を左足前)のほうがコースの打ち分け、安定性に優る」ことを理解して練習しよう。
 現代卓球においては、先手を取りパワフルなボールで攻めるためにネットプレー(台上処理)の重要性が以前よりもさらに増大している。手首を柔らかく、そして強く使えるように鍛え、実戦的な練習をたくさんやりすばらしいネットプレーをマスターしよう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1989年9月号に掲載されたものです。

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