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「作戦あれこれ」第160回 強打を壁のように返すには

 守りがある試合は魅力的

 国際大会でプレーするヨーロッパ選手同士の試合を見ると、見ごたえがあり、おもしろい。
 これは、プレーにパワー、テクニック、速さがあるのもさることながら、ラリーの応酬による攻防が満喫できるからであろう。
 目にも止まらぬパワードライブを、グルッバ(ポーランド)、ワルドナー(スウェーデン)らは平気な顔で前陣でブロックし、ラリーに持ち込む。台から下げられスマッシュを浴びても、ロビングからのカット、カウンタースマッシュで盛り返したりする。
 最近、国内ではこういったしのぎのうまいドライブマンが少なくなってさびしいが、別にドライブマンの試合に限らず、速攻対速攻の試合でも、理にかなった前陣攻守のラリーが続けば、やはり見ていて感銘を受けるものがある。韓国の劉南奎や金擇洙は日本と同じペングリップではあるがパワードライブを前陣で何本もしのぐ。別に日本のグリップに問題があるわけではない。
 ではなぜ、世界と比べ、日本の守りはおそまつなのだろうか。

 前陣でしのぐ

 「しのぎ」の基本は前陣での守りである。ドライブマンにとっては中陣でのドライブ、後陣でのロビングによるしのぎも重要であるが、ここでは「前陣での守り」にしぼって考えてみたい。
 卓球の試合は流動的なものである。そして相手は常に自分と同レベルの選手を考えなくてはならない。自分だけが一方的に攻めるということはありえない。
 自分勝手な選手は守りがへたなケースが多い。常に自分だけ打とう、打とう、としている。ちょっと考えてみれば分かるように「打とう」としている時は守れないものなのである。
 試合の基本は、チャンスには恐れず攻める、絶対不利な時はしのいで(変化をつけて)ゆさぶり、相手の攻撃が弱まってから攻撃することである。相手の思いきった攻めを攻め返す時は、冷静に相手プレーを読んでの待ちぶせ攻撃の時だけでなくてはならない。サービスでいきなりチャンスを作れるのであれば3球目を恐れず速攻する(先の先のプレー)。しかし、相手に回り込まれ、決定的なバッククロスの強打を浴びた時はとにかくフォアへ返す。連続してバックへ強打されたら今度は少し低くバックへ返す。相手がもしバック系技術でつないできたらそのボールを反撃していく。といった、後の先、後の後の先といったプレーをするのが自然である。

 押さずに引きぎみに返す

 スマッシュ、パワードライブなどで攻められた時のワルドナーのバック守備で感心するのは、前傾姿勢がほとんど変わらず、最小限度のラケットの動きで、壁のようにスマッシュを返球してしまう点。猛烈な打球に対し、守りのうまい一流選手は、ほぼ共通してこういった返し方をする。
 ところが、よく見かける悪い例としては
①初めから「とれない」とあきらめてしまう
②「打たれた」と思った瞬間のけぞってしまう
③(打法が安定していないのに)強く押してしまう
④手首、指、腕に力を入れて柔軟性をなくす
⑤打たれたところまで足を動かさない
⑥フリーハンドが大きく動くためバランスを崩す
...などがあげられる。
 相手のスマッシュを前陣スマッシュで打ち返すことは非常に難しく確率が悪い。相手打球にスピードがあればあるほど、こちらの押しは必要なく、むしろ引きぎみにラケットを当てればよい。そして相手ボールがゆるければその分こちらから攻め込む。
 ワルドナーはスマッシュに対してはほぼラケットを動かさずにゆるいボールにして返す。それが変化になる。そしてスマッシュのかわりにゆるいドライブを使うと、すかさず小振りのバック強打で反撃に転じる。

 前陣ブロックのコツ

 スマッシュ、パワードライブを前陣でしのぐコツをあげてみよう。
①「絶対に返す」気持ちで待つ
②足はつま先だち。肩から先の力を抜く
③相手の動きを注視、コースを予測する
④球質を早く判断し、タイミングを合わせる
⑤前傾姿勢を保ち、フリーハンドはあまり動かさない
⑥サイドへ打たれた場合は近い方の足を一歩寄せる
⑦ミドルへ打たれたら、体をどちらかに寄せる
⑧ボールをインパクトまでよく見る
⑨インパクトでは力を抜き、引きぎみに止める
⑩ブロックしたら、すかさず次球に備える
 これらに注意して練習すれば、かなり前陣での守備力が変わってくるはずである。

 打たせて後の先をとる

 相手の強打(パワードライブ、スマッシュ)を、ラケットをあまり動かさず、引きぎみにボールを殺して取れるようになると、作戦に幅ができ、試合の展開がグッと楽になってくる。
 例えばサービスの時、相手に強ドライブされたら守れない、と感じると、サービスが小さいサービスばかりになり読まれてしまう。
 ところが、ワルドナーのように、相手が強打してきたらポッと逆をつけばいいと考えられる選手は、スピードロングサービスや思いきって変化をつけた大きめのサービスを出せる。
 相手がつなぎのドライブでレシーブしてくれば、手首中心のバック強打で攻める。相手が強攻してくれば守って、後の先をとる。そして相手が大きめのサービスを警戒すれば、小さいサービスが効果的になる。
 同様に、守りがしっかりするとレシーブの時も余裕ができ、競り合いに強い選手になれる。
 「打たれてはいけない」と考えるとレシーブに余裕がなくなり、無理してコースを狙ってミスする。うまく先手をとって攻めるパターンばかり考えているから3球目を打たれるとしのげない。
 ところが「相手に3球目を打たれてもかまわない。相手は今の状況だとこのコースに攻めてくる。打たれたらしのいでラリーにしよう。もしレシーブで相手の読みをはずせたその時は4球目で速攻しよう」と考えておくと心に余裕ができる。
 相手がスマッシュしてきた時のパターンを予想しておけば、ほとんどの攻撃はそれ以下である。余裕をもって対応できる。
 レシーブが苦手な選手は、相手に打たせてラリーにする、ぐらいの気持ちでレシーブするとレシーブミスが減り、打たれた時もしのげる。そのためには、待っているところであればスマッシュされても大丈夫なくらい、前陣でのしのぎの基本レベルを練習で高めることである。

 コースの読める時は攻める

さて、ここまでは、相手が十分な体勢でどのコースに攻めてくるか読めない時のバックサイドのしのぎについて考えてきたが、実戦ではさらに色々な場面が想定できる。全くコースが読めないというのはそう数多くなく、実戦では自分の送ったボールの威力、または相手の打法のクセにより「相手は攻めてくる。しかし、まずクロスにしかこない」と読める場合がかなりある。
 そんな場合は、相手がスマッシュ(またはパワードライブ)してきた時は確実に止めるにしても、ちょっとでも威力の落ちるドライブやループになれば、プッシュ、ハーフボレ―強打、回り込みフォア強打、カウンタードライブなど、少しでも威力のあるボールにして返球し、攻勢をとるように心がけよう。自分のツッツキやショートがサイドを切って鋭く入った時などはそういった場面である。
 また、試合の出足は相手のコースが読めなくても、1ゲーム目の後半や、2ゲーム目、3ゲーム目と進むにつれコースが読めてくるものである。相手フォームを記憶し、徐々にコースを読むそういった意識をもって試合を進めることが大切である。
 このようにしてコースが読めるようになった時は思いきった攻撃を入れる作戦も考えられる。
 一般的に言うと、競り合いに強くなるためには、肝心な場面では、相手の攻撃を確実にしのぐことである。
 ところが、いつも同じしのぎ方ばかりだと、相手は試合後半の競り合いになった時プレーに迷いがなくなる。試合後半で、相手に「何をやってくるか分からない」と思わせるためには、前半で大量リードを奪った時などには、コースを読んで相手のスマッシュを待ちうけてカウンタースマッシュで狙う、相手の強ドライブをカウンタードライブで狙う、といった大技を使う作戦もある。
 止めようと思えばいつでも止められる。しのぎにそういった自信があれば、逆に思い切った積極攻撃ができるものである。
 相手のスマッシュは絶対とれる。前陣でしのぐ練習をしっかりやろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1989年11月号に掲載されたものです。

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