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わたしの練習⑪中山千鶴子 仕事と両立させながら土・日曜も休まずに練習

 私の最初の練習方法はコーチの指示によるものです。したがって東洋レーヨン卓球部をご理解の上ご参考になれば幸いと思います。

 ◇東レへ入社当時の誇りと絶望感

 東レ卓球部は創立以来6名の少数選手で最大の効果を得るよう努力しております。それにはいろいろの理由がありますが、実業団では特に「量より質」ということが大切な問題ではないかと思います。選手あっての会社でなく、会社あっての実業団選手であると思います。会社のご理解なくては存続しないものです。私達は全力をつくし、会社にも愛される部でありたいと願っております。
 部の目的、いや部員全選手の目的は最大なもので、その大きい目標に向かって日夜練習を続けているのです。精神面の訓練も当然で、これはただ卓球だけに必要な訓練ではなくすべてのスポーツに必要なものだと思います。
 私は選手として最大の弱点である“気まま”という気持ちを持って東レへ入社しました。当時渡辺(専大出)江口(大阪薬大出)山泉(現在伊藤夫人、大阪樟蔭女大出)設楽(専大出)といった一流選手がひしめき合っていました。その練習の猛烈さ、そのすばらしさ。私の存在など“九牛の一毛”(編集部注:九牛の一毛とは多数の中の極めて少ない一部分の意味)に過ぎなかったのです。しかし東レに入社したことをこの上もなくうれしく思い、また見込まれて入社したことを誇りにさえ思い、なにかあるプライドが湧(わ)いてくるのでした。
 それが、一流選手のすばらしい技術に毎日接しているうちに、自分の技術の幼稚さを知り、心の隅に残っていたわずかな自信も失い、自分の卓球に疑問をいだくようになりました。コーチは「素質は充分ある。練習すれば必ず大成する」とはいってくれましたが、練習するファイトも全く失ってしまいました。
「スポーツは基礎の良し悪(あ)しによりその選手の技術は決定される。そしてまずスポーツに適する体をつくることが大切である」とコーチはいい、毎日出社前に20分ほど走ることと実技の練習は基礎の打法を研究するようにいわれました。来る日も来る日もランニングと基礎打法の練習が続き、ついに自分の素質に疑いを持つようになり、一時は卓球を断念しようとさえ思うようになりました。そのため練習にも真剣になれず、たびたびコーチにお説教されましたが、そのつど先輩の方々の慰めや励ましのお陰でどうやら今日に至りました。苦しい日々でしたが、今では自分の人間形成の上にとってもよい経験をつんだと思っております。

 ◇理論にもとずいた練習方法

 卓球に必要な基礎訓練は毎日やっておりますが、腕力をつける練習、体操などをやったあと、基礎打法(最も安定性のある打法)から練習に入ります。私の場合、基礎の打法は一応卒業したから自由に打法の研究をするよう言いわたされていますので、自分に適当と思われる独特な打法を研究しながらやります。特に気をつけていることは、スイングの時の力の運動方向と強弱によるボールの回転と、反射角度など、それはすべて理論にもとづいたものです。
 私の中学、高校時代をふりかえり、また現在を思い、痛感していることは理論を勉強し、それにもとづいた練習をした方がより効果的であるということです。
 弱点をなおすことには時間をかけておりますが、ここで考えたいことはグリップの研究です。グリップによりフォームが決まり、フォームによりグリップが決まるとまでいわれておりますように、弱点とグリップは重要な関連があると思います。現在の卓球はバックハンドの強打が必要といわれていますが、そのバックハンドはグリップの影響が大きいのではないでしょうか。
 なお、ゲーム(試合練習)は毎日行います。最後に各種の決定打法の研究練習をして、1日の練習を終了します。

 ◇夜の6時から9時すぎまで練習

 実業団の選手は大成しない、とまで極言されておりますが、それは練習時間を論じられているのではないでしょうか。学生とは多少の時間の差はあると思いますが、大切なことは選手の信念ではないかと思います。真剣に卓球を考えた場合、練習時間の不足は考えられません。学生は昼間、実業団は夜、この差だけです。映画にお茶、おしゃべりと楽しんでいたのでは学生、実業団の選手といえども上達は望めないと思います。
 現在部員は5名です。コートは2台ありますが満足に使用できるのは1台、あとの1台は壁にくっつけておいてあるのでショート等の練習にしか使えません。
 夕方5時15分に退社、6時から2時間30分の練習を一応の基本線にしております。コートの関係上休む時間もありますので、練習が終わるのは大体9時~9時30分頃になり、コーチが熱を入れますと10時過ぎになることもたびたびです。なお練習日は決めておりませんので時間があれば練習するようにしております。
 最も大切な時間は土曜日、日曜日です。私達はこの時間をいかに有効に使うかを考えます。いつも同じ選手とでは「マンネリ」になりやすいので、卓球場に行ったりもしますが、ときどき外部から選手が来てくださいますので、そのときは全員でぶつかっていったりしております。
 別にこれといった練習上の悩みはありませんが、しいていえばコートが少ないことと、いろいろな型の選手と練習したくとも練習時間が夜間のため思うようにならないということです。また技術面ではコーチに注意され、自分ではわかっておりながら、なかなか出来ずコーチにしかられたりすると、自分には出来ないのではないかとさえ思い憂うつになったりもします。
 学生は授業を受け、私達は仕事をしております。これは同じことで私達はアマチュア選手として入社したのですから、仕事は同僚と同じように割り当てられており、特別なコンプレックスは感じません。でも上司や同僚の援助がなくては満足な練習も出来ませんので、その点私達は会社の理解が深いのでありがたいと思っております。女子の場合、他のチームでも同じではないでしょうか。

 ◇一枚ラバーを使う理由

 私は卓球を始めた時から、何気なしに一枚ラバーを使って練習しました。別にむずかしく考えたわけではありません。最近になって考えてみることがありますが、今更ラバーを変えてみても現在の力までになるには相当時間を要しますし、一枚ラバーで勝てないわけでもありませんので、そのまま使っております。また東レに入社した当時も、一流選手がほとんど一枚ラバーを使っておりましたし、渡辺、江口両選手は一枚ラバーで世界の強豪を破っております。
 「カットを打てない選手は一流選手ではない。また武器(ラケット)には一長一短があるから武器で試合をするのではない。技術で優劣を決めるのである。江口、渡辺、伊藤、各選手を良く見ることだ」と、コーチにいわれたことをときどき考えてみます。スケールの大きい選手では、一枚ラバーでは上記の3選手、表ソフトラバーでは松崎選手がおりますが欧州の強烈なカットを打ち破るには特殊ラバーですと松崎選手のようにすべての点ですぐれている方でないと、むずかしいように思われますので、最も安定性のある一枚ラバーがいいのではないかと思います。

 ◇基礎練習をしっかりやり個性を生かそう

 私の過去をふりかえってみますと、田舎で強い強いといわれ、得意になって無茶苦茶に腕を振り回していたように思われます。いくぶん素質が他の選手よりもすぐれていたのでしょう。ゲームをやれば勝つ、勝つから面白くて卓球が好きになる。こうした循環をくりかえし、やがて東レに入社したわけですが、入社してみて初めて自分の未熟さを知り改めて基礎からやり直しました。その一年間の苦しさ。高校時代に基礎練習をやっておくべきだったと何度思ったことでしょう。
 皆さんも安定性のある打法、体のバランスをくずさない打法、正しいフットワーク等自然さを失わない打法を研究してください。
 それから独特の技術を研究して自分のものにすることが大切ではないでしょうか。コーチに「個性を生かした打法こそ一流選手である」といわれます。基礎の上に自分の技術をどしどし築き上げて行き、その山が高くなればなるほど大選手になると思います。
 私の考えていることが、少しでも皆様の参考になれば幸いと思います。

なかやま ちずこ
昭和38年度全日本硬式選手権で単3位複2位。社会人になると、現状維持すらむずかしいといわれる中にあって、社会人5年目の今日なお着実な進歩をとげている。一枚ラバーの攻撃選手で、ショートやバックハンドもうまい。新潟県西新発田高1年と3年のとき、全日本硬式ジュニアの部で第2位となった。22歳。東洋レーヨン卓球部主将。

(1964年2月号掲載)

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