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わたしの練習⑰大橋紘明 攻撃的カットをめざして

 ◇中高校時代の練習

 小学校6年頃、夏休みや冬休みになると、北海道のちょうど真ん中あたりにある富良野に遊びに行き、そこで富良野高校卓球部のコーチをしている叔父の金井吾廊氏(日大OB)につれられて、毎日練習を見に行ったのがきっかけで、中学入学と同時に卓球部に入りました。
 その頃は娯楽のつもりでしたが、中学の終わり頃高校の対外試合に出してもらったのが発奮の因となり、抱負をもって本格的な練習を行うようになりました。
 この頃はまだペンホルダーでしたが、三条高校入学と同時に、指導者であられる山田孝次郎氏が、かつてカットの名手であったことなどから、自分もカットマンになろうと思い、氏に相談したところ、関東のロングマンに勝つには北海道ではロングマンよりカットマンの方が良いといわれ、自分の決心も決まり、その日からカットマンに転向しました。
 シェークハンドになってからは、山田氏に教えてもらったり、シェークの関係のある本を読んだり、写真を見たり、先輩のフォームを参考にしたり、いろいろ苦心しました。また山田先生に教えてもらった一種の壁打ちを何千本もつづけたりして、技術と共に精神力も養うよう努めました。
 私の行った壁打ちは独得のもので、ネットの向側の台を55度くらいに傾斜させて行うもので、カットで返球するとドライブで戻ってくるのです。相手は台であるから送球すれば確実に戻ってくるので、自分がミスしないかぎり何本でも続くわけです。変化をつけると変化がついて戻ってきますし、思いきり切ると思いきりドライブがかかって戻ってきますから、この方法は上手に行えばカットの練習にはかなりの効果があると思います。
 またフットワークの練習では、カットの場合は、フォアハンドだけで動くとか、バックハンドだけで動くとかすると、フォア、バックの切りかえがにぶくなるので私はコートを二台横に合わせてフォアカットとバックカットの両方で拾う練習を行いました。この方法は初めは速く動けないので、適度に速くしてゆくのがよいと思います。壁打ちも、この練習もコートの数に十分な余裕がないと、他の人の練習にさしつかえますから、私の場合は朝早くとか、夜遅くなってから、2、3人で交代に行いました。
 もう一つかわった練習は、自分のコートを少しネットから離して打ってもらうやり方です。こうすると自分の打球点と相手コートとの距離が遠くなり、カットのコントロールをつけるのに役立つと思います。
 大学に入ってからは、コートも少なく部員も多いのでこのような変わった個人的練習はなかなか出来なくなりましたが、練習人員が少ないときにはやろうと心がけています。人のいないときに行う練習は、それだけ人よりも練習量が多いことになり、また自ら進んで行う練習にマイナスということはあり得ないと確信しています。

 ◇大学時代の練習

 名門日本大学に入ってからは、矢尾板監督のご指導を受けることが出来、一つの合宿で一つのことをなおされたり、つけ加えられたりしました。これが僕自身にとって最大のプラスになったと思っています。なおされている途中で試合に出たときは、非常に不安ですが、思いきってやってみると、自分ではっきりとわかる程の効果があり、その時の気持ちは何ともいえずよいものです。またたとえそのとき効果が感じられなくとも、決してマイナスではなく、後になって何らかのかたちでよい結果が生まれたと思っています。自分の主戦はカットですが特に回転の変化を多用し、得点源としては切ったカットを主用するよう努めています。なぜこのような戦法を行うかというと、ループ対策としては「相手の回転に勝つ回転を出せるように」という矢尾板監督の言にしたがって、ラケットの振りを速くしているためです。ループをとるために一枚のカットがふえていますが、背が低い私は、相手の凡失を待つプレイをするには相当に損をするので回転による攻撃を主にしたいと考え、裏ソフトを使用しているわけです。したがってラケットも思いきって振ってもボールが飛びすぎないように、はずまないラケットで、しかも重いものを使用しています。
 打球に強い回転をかけるには、ラケットを思いきって速く振らねばなりません。いつかの合宿のとき、素振りに熱中してオーバーワークになり、次の日には食事のときに腕が上まで上がらず左手で食べたこともあります。また相手の回転を利用し、タイミングを上手につかむこと、回転数の差を大きくすることが必要であると同時に相手の予想の裏をかくことが大切と考え、そのような練習をしています。

 ◇現在の練習と今後の課題

 日大の部室にはコートが2台しかなく、部員も多いので、練習量を多くしようと思うと試合に勝ち抜くか、朝早く、あるいは夜遅く練習するほかはありません。部室にいる時間は長いのですが、正味の練習量は3~6時間くらいです。これではとても十分とはいえないので、これからはもっと多くしようと思っています。
 練習方法は人数が多いときは試合練習がほとんどになることはやむを得ません。その中で、ある技術を多用するというように練習方法に工夫をしています。人員が少ないときには基本練習を主体にし、その大部分は常に動きということを念頭において行います。また現在の自分としては試合でほとんど使わない技術も一応練習することにしています。それは今普通の相手に行っている戦法では勝てない相手にぶつかったとき、戦法をかえて使用する技術に自信がなかったら困るからです。
 トレーニングはサーキットトレーニングが主体ですが、普通はその中の一部分を行い(弱い部分を多く行う)2週間に1度はその全部を行うようにしています。
 昔から日本のカットマンはヨーロッパのカットマンに弱いといわれています。そこで私は、もし私に何等かのチャンスが与えられたら、是が非でもその例外となるよう頑張らねばならないと思っています。
 さらにショートはカットに弱いといわれていますし、現に中国ではカットマンが上位にランクされていることを考え、打倒中国にファイトを燃やし、中国選手に勝てるよう研究努力していくつもりです。
 以上二つの型の相手について考えた場合、どうしてもショートカット(ツッツキ)の試合が多くなると思いますが、日本のカットマンのショートカットは平凡で、回転の変化はあっても、それは主として縦のみに限られています。ところが最近促進ルールが制定され、打つことを要求されるようになりました。その場合、チャンスボールをつくる戦法の一つとして、縦回転のツッツキに横回転を入れることが出来れば、相手のボールを浮かすことが出来、それだけスマッシュの命中率が高くなると思います。またカットにおいても、反撃の前に横回転をまぜれば非常に有効と思われます。そしてさらに、チャンスボールを確実に決められる強力な反撃を前でも後でも打てるよう一層練習にはげむつもりです。特に理想的にいえば、反撃はバックハンドの方がより効果的と思われますので、特にその強化を心がけていくつもりです。

 最後に、今まで私をはげまし、指導して下さった方々に心からお礼を申し上げますとともに、今後ともよろしくご指導下さいますようお願い申し上げます。

おおはし ひろあき
日本大学卓球部。全日本学生ランク第4位。本年度関東学生チャンピオン。一昨年の日中対抗では徐寅生選手を破って実力を認められた。北海道帯広三条高校出。

(1964年9月号掲載)

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