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わたしの練習⑱河原智 一枚ラバーの長所を生かして

 中学1年のときです。何かクラブに入ろうと思ってクラブを見て回ったのですが、卓球部が一番おもしろそうに見えたから入りました。

 ◇カット主戦から攻撃に転向

 シェークで攻撃主戦というのは、別に考えてやったわけではありません。僕は今年2月まではカット主戦でした。カットの最中チャンスボールだと思うと反撃する梨本(中大)型でした。でも、僕の場合カットがよくないので、チャンスボールがいつくるかわからないし、チャンスボールが来る前に負けてしまうのではないかなどと思った時もあります。そう考えてみると今までの卓球ではだめだと思い、また先生にも僕のカットはあまりよくないと言われたので、おもいきって自分からチャンスボールを作ってさきに攻める攻撃の卓球に切りかえたのが今の卓球です。
 僕は中学時代から今日まで、ずっと練習相手にカットマンの人が多かったし、また自分でもカット打ちがすきになりました。僕はカット打ちの練習の時は、最初は軽くつなぐ練習をし、しだいに強く打ったり、またストップを入れたり、高く浮いたボールを強打したり、そして最後にある程度低くても強打する練習をやる程度で、カット打ちの練習などという特別な時間はもうけておりません。
 練習時間は1日平均約3時間ぐらいです。最初の1時間ぐらいは基礎練習でフォア打ち、ショート、ツッツキ、カットなど。1時間は3球目練習、サービス・レシーブ練習、フットワーク練習。そしてあとの1時間はゲーム的練習です。
 トレーニングはこれといったきまったものはないが、ランニング、サーキット・トレーニング(階段の登り降り)、縄飛びのうちどれか一つ。それに腹筋運動、柔軟体操、準備運動をやる。練習の時に一番重点をおいてることは、フォア打ちのボールにドライブがかかっているかいないかと、試合などをした時に先手を取っているかどうかの2つである。なぜなら、僕はよく弱気になって変な試合をしてしまうからである。
 僕たちの学校では、決まった練習時間は2時間ぐらいですが、学校の練習が終わってからもっと練習のしたい人は残って自由に1~2時間ぐらい練習ができるようになっています。そして僕は練習中にぐあいの悪かった技術を残って納得のいくまでやります。納得のいくまでといっても、時間に制限があるものですからたかが知れていますが、納得のいくまでやったものは自分の身につくと思います。そしていま考えると、これがずいぶん大きなプラスになったと思います。それから練習のとき、調子が良いと思うと、残って新しい技術をやってみて自分にもできて自分の卓球にあいそうに思うと、次の日から練習の中に取り入れてその技術をある程度マスターしてから次の技術に取りかかるようにしています。

 ◇相手に勝つ前に自分に勝て

 まず自分にはきびしく、常に反省して、ただの1本でもミスしてしまったら、なぜミスをしたか、とか入ったボールでもコースはどうかスピードはどうかなど常に研究してよりよい卓球に、常に前進していきたい。卓球にはこれでいいなどということはないだけに、努力すればしただけの価値があると思います。
 どんなに苦しくてもそれに負けない精神力いわゆる一般にいう根性が大切と思います。たとえば試合中などで苦しくて試合などどうでもいい、などという投げやりな心になってしまったら、その人は試合に負けるだけでなく自分にも負けたことになります。そういう意味でも自分に負けないようになりたい。
 それから、ある試合に勝ってまだあと1試合が残っているにもかかわらず、ノドが乾いたからといって水を飲むと、その人は次の試合に腹痛が起きたり疲れがぐっとでて試合に負けてしまうかもしれない。たとえば、相手の人が冷たい水をうまそうに飲んでいたとする。相手が飲んだから自分も飲もうなどといって飲んでしまい、調子が悪くて試合に負けてしまったら、結局その人は自分に負けたことになります。このような場合があるかもしれません。このような状態がいつきても大丈夫なような心構えと精神力を僕はこれから養っていこうと思います。僕はこの点では全然修業がたりませんので先生、コーチ先輩各位の忠告をきき、コーチの方々が言われている「自分に勝て」という言葉を頭において、もっともっと精進していきたいと思っています。試合では、技術にさほど差がなければ勝運などもありますが、やはり精神力と言うものが大きくものをいいます。

 ◇ショート練習を多く

 練習は僕の場合一枚ラバーなので、台から離れてラリーを引いたりする卓球をすると苦しいので、台について相手より先に攻撃するいわゆる前陣先攻型でいこうと思い、それにはまず台につくこと、それにはショートをできるようにしなければだめだと思いショートを練習しました。ショートでも、普通のショートだけでは押されてしまうので、一枚ラバー得意のノー回転ボールのショートをして相手の攻撃をくい止めるのです。そしてそのほかにプッシュ性のショートとバックハンドに近い早いショートといろいろなショートを練習しました。日中対抗の試合を見てから、ショートの重要性を知り、それからショートの練習時間を増やしました。
 僕はサービスのいいのを持っていないので、サービス練習をしました。しかし一枚ラバーなので強力なサービスはできませんでした。そこでサービスそのものでは得点できないが、3球目にチャンスボールの来るようなサービスを出すようにしました。そこでサービスも練習しましたが、3球目練習にも力を入れました。
 これからの卓球は勝負が早くなり、サービス、レシーブ、3球目などのようなところが重要になって来ていると思います。それにフォアハンドだけでなくバックハンドやバック側の処理も大切だと思います。たとえばショート、バックハンド、カット、ツッツキなどです。これからはバック側へ来たボールをいちいちフォアで回っていたのでは、ショートなりバックハンドで攻撃されて苦しくなります。いくらフットワークがよくてもボールより早く動くことは無理です。そこでバックハンドなりショートなどが必要となってくると思います。そして日本の場合はフットワークというものは非常に重要だと思います。日本人の場合、普通どのコースへいっても、浮いた軽いゆるいボールならば、フォアで回って強打したりその他いろいろありますが、日本の多くの選手はフォア主戦となりますから、フットワークが重要だと思います。

 ◇勝つまで練習をやる

 僕は負けず嫌いな性格です。練習試合で負ければ、何回でも勝つまでやる。そして相手の長所を吸収して、自分のものにして行く。このようなことが卓球の技術そして精神面にも進歩をもたらしたのだろうと思っています。しかし何より大切なことは、卓球を好きになるということであろう。ほんとうに心から卓球を好きになることだろう。たとえトレーニングが苦しくてもどんなに上級生におこられても、自分の好きな卓球のことには別になんともなかった。全国高校優勝におごらず、新人の気持ちで卓球をし、なおいっそう精進していきたいと思います。

河原智(かわはらさとし)
(今年度全国高校選手権者)

(1964年10月号掲載)

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