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わたしの練習55清水照美 社会人としての練習

 ◇中学・高校時代

 私の卓球は中学時代から前陣速攻型ですが、これはやはり私が卓球を始めたころからの練習内容によって、自然につくられたものと思われます。といいますのは、私が卓球を始めた中学時代、先生はショートから教えてくださいました。ショートの角度が決まるまで、フォア打ちは素振りばかりでボールを打たせてもらえませんでした。したがってフォア打ちを始めたのは、私がラケットを握って2カ月目ぐらいだったと思います。それもショートのできる位置でのフォア打ちなので、バックスイングをつける間がなく、からだの横から腕だけで打つ現在のフォームができてしまいました。このフォームだと、前でしか打てないので自然と前陣になったものと思われます。
 しかもそのとき、私の学校はシェークとペンの人数が半々だったので、フォア打ちが入るようになるとすぐカット打ちの練習でした。私は表ソフトなので、カット打ちを習得するため“ラケットにボールをのせてからラケットをかぶせて打つ”方法を重点的に練習しました。そしてこの打ち方によってツッツキからの攻撃は私のポイント源になりました。練習中もバッククロスのツッツキからの攻撃が主体でした。しかしながら、バッククロスが強かった反面、腰やバックスイングを使わないため、フォアクロスへの攻撃は安定しなかったようです。
 さらに、高校へ入ってからの練習も、前陣型の攻撃とかフットワークを中心に指導を受けました。たとえば、ツッツキをバックから急にフォアへまわしてもらい攻撃するとか、ショートで全面に動かしてもらい、全部フォアハンドで打ち返すフットワークなどを続けました。私のような速攻型の選手は敏捷性(びんしょうせい)を養うためのフットワークがぜひ必要だと思います。そのためには、脚力も十分につけておかなければなりません。私の卓球でも足が生命だと思っております。こういった意味から、トレーニング(ランニング中心)なども随時(ずいじ)行いました。

 ◇カット打ち

 私はロングマンよりカットマンとの試合のほうが、自分の試合ができるから好きです。それは先にも述べましたように、私の学校にはカットマンが多く、卓球を始めたときからカットに慣れていたからだと思います。先生から「カットは打つもの」と習い、高校の全国大会に行くまでペンがカットマン相手にツッツキでねばる戦法など知りませんでした。
 中学のころは、最初に習ったカット打ち一本で十分打ち抜くことができましたが、高校へ入るとカット打ちだけでは自滅し、どうしてもストップが必要となってきました。このためカット打ちの練習を続ける一方、ストップの練習も行いました。が、なかなかうまくいかず、ストップがかえってカットマンのチャンスボールになったりして、対カットマンには以前にも増して自信をなくしてしまいました。
 インターハイ1カ月くらい前、沢田先生が「カットマンに勝てなかったらインターハイには通用しない」と、いつも言われていたので、カットマンに自信をなくしていた私はカット打ちばかり、という毎日が続きました。このように徹底したカット打ちの練習を、カットに慣れカット打ちがこわくなくなるまで続けましたので安定してきました。ところが、このときは右肩が関節炎になってしまい、おまけに本番ではカットマンにシングルス、ダブルスとも負けてしまい、こんなにくやしかったことはありませんでした。
 それからはカットマンに対する練習として、カットマンの弱点であるミドルと、前後のゆさぶりを研究しました。ミドルへの攻撃練習は、全面にカットで返球してもらい自分のねらったコースへ返せるようコントロールとフットワークを兼ねた練習が中心でした。カットマンに対する前後のゆさぶりは、ストップがどうしても必要なので、ボールがバウンドしたところをすかさずラケットを出す練習を繰り返し、タイミングを覚えるようにしました。そのうちに、たとえストップボールが浮いてもカットマンの不意をつけば、ストップは成功することも覚え、ストップができるようになったころからようやくカットマンに対するプレーに幅ができ、速攻型としての私のカット打ちの威力が増したように思います。
 しかし、このカット打ちではまだ凡ミスが多かったのです。高校3年になる春休みに新野さん(法大)、岩田さん(専大)らが帰ってこられ、ドライブを教えてくださいました。でも私はどうしてもボールを落としてドライブを引くことができなかったので、打球点は今までどおりボールを落とさずに、ラケットの角度を少なくして手首を使い、できるだけボールに回転をかけるよう心がけました。
 私の高校時代には、先輩や一般の方がよく学校へ来られ、多くのカットマンに教えていただいたり、多くのカットマンと試合であたりました。こうした試合をするたびに、苦しまぎれに合わせたボールからカット打ちの変化を覚えたり、それまで粘れなかったのがチャンスボールまで打って粘れるようになったり、いろいろ学びました。このようにカット打ちに対する練習を種々の方法で行いましたが、結局カット打ちは“慣れること”とそれによって生まれる“自信”だけだと思います。そしてまた、時間をかければそれだけ上達するともおもっています。
 この原稿を書くことになるまで、今までしてきた自分の練習など考えてもみませんでしたが、今度思い出してみて、高校のとき実戦中心だったことと、先生や先輩、周囲の方々に恵まれていたこともありますが、自主性がなかったと反省しています。

 ◇“技”を身につける

 高校卒業後、現在の日本生命に入社しましたが、練習は日常の仕事を終えて、平日で2時間~2時間半、土曜日で3~4時間程度です。やはり、社会人としての練習はあくまで日常の業務を他の人と同じように勤め、自分の余暇の範囲内で行うことが基本となっています。私も量的には、学生時代に比べ、やや不足していると感じます。このため私の卓球は、まだ学生時代の一本調子な試合運びから完全に抜け出しているとは言えません。
 一般的には、学生の卓球には“力”があり、社会人の卓球には“技”があると言われますが、私の日常の練習においても、この“技”を身につけるよう心がけています。しかしこの“技”を意識する場合、良い意味では技術や作戦を覚え、コースを的確につくなどプレーの内容を豊富にしますが、悪い意味ではボールに威力がなく攻撃を忘れ、相手のミスを待つといった消極的な卓球になりがちです。従って私たち社会人は、ややもすると練習時間に不足をきたし、自然に“力”を忘れた“技”ということばで自分を納得させてしまいます。私は学生時代の一本調子な試合運びからぬけ出すために、良い意味での“技”を身につけたいと思っています。そのためには、やはり攻撃力とかフットワークなど、基礎を固めたうえでなければならないと思います。
 社会人としての練習には、時間的な面やその他いろいろな面で制約があります。私も練習を終えて帰宅すると10時を過ぎますが、なんとか、学生時代に得たものの上に、社会人としての卓球を積み重ねたいと思います。

しみず てるみ 兵庫・神戸商出。兵庫・日本生命勤務。
右利き、表ソフト(スポンジ1ミリ)の前陣速攻選手。
身長159センチ、体重53キロ。
趣味は読書。全日本ランキング3位。


(1968年4月号掲載)
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