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わたしの練習112阿部博幸 東京大会に向かって

 ~小、中、高校時代~

■伊藤、長谷川両選手の模範試合に感動

 私が卓球を始めたのは小学校6年の終わり頃です。協和発酵防府工場(山口県)に勤務していた長男の好幸兄が卓球をやっていましたので、練習についていったり、県内で大会があると応援に行っているうちにだんだん卓球に興味を持ったのだと思います。
 強い刺激を受けたのは中学2年のときです。元世界チャンピオンの伊藤選手、長谷川選手が山口へ来られ、両選手の模範試合を見て「一流選手のプレーって素晴らしいな!」と感じ、卓球に対しての考え方が変わり、常に前向きの態度で取り組むようになりました。兄にルールなどから教わり、技術面ではフォアハンド主体で基本練習が多く、トレーニングでは走ることばかりでした。
 そして中学3年のとき、運よく全国中学大会で3位(シングルス)に入賞することができました。でも、ちょっぴり悔しい気がして、高校になったら「絶対日本一になる!」と心に誓い、練習に励み、苦しい練習を進んでやるようになりました。

■「高校日本一」を目標に
 高校は、兄の勧めで興国高校(大阪)に進学し、「高校日本一」を目標に頑張りました。朝早く学校に行き、授業前にトレーニングやボールを多く打つ練習を同級生の友だちと行いました。授業が終わるとだれよりも早く練習場に行き、ボールを一球でも多く打てるように心がけました。
 16時頃になると必ずといっていいほど、監督の田中先生が練習場に来て、真剣に指導していただきました。田中先生の指導は、ボールをたくさん使った練習が多く、速い攻撃練習が主体でした。月曜日~金曜日までの練習時間は16時から19時。練習内容は、①基本練習 ②応用練習 ③ゲーム練習 ④反省練習にわかれていました。
 基本練習では、フットワーク、スマッシュ、ドライブ、ショート、ツッツキなどを単に時間で振り分けるのではなく、「何本続ける」といったように、成果がすぐ目に見えるようなやり方です。非常に苦しかったけれども、「今日は何本続いた」とか、「確実に消化できた」というように、精神的にも強くなることができたし、「これだけのことをやったから負けるはずがない」という自負心ができ、たいへん効果があったように思います。
 ゲーム練習では、コート全面対半面、というように少し変わった方法を多くやりました。

 ~大学時代~

■フットワーク練習を重視して

 大学(専修)時代(授業のない日)の練習内容は、
7:15~8:15 トレーニング
 5~8kmのランニング、柔軟体操、腕立て、腹筋などです。
10:00~12:00 基本練習
 男女10数名でコートが7台でしたので、1、2年生の頃はあまり台につけないものですが、私は先輩の練習相手としてよく使っていただいたおかげで台につけることが多かったのは幸いでした。
14:00~17:00 自主課題練習
 1人30分単位でサービス+3球目攻撃、レシーブ+4球目攻撃、といったシステム練習が中心でした。
 大会前はゲーム中心に行い、ゲーム練習の中で自分の技術を確認したり、課題練習の内容を試したりして大会に臨みました。大会がない時期は、ある一つの技術を習得したり、向上させるために毎日同じことを反復して身につけるように心がけました。
 カット打ちも多くやった練習の一つです。カット打ちを多くすることによって、ボールをよく見る、変化を見分ける練習にもなりました。それに、ドライブの威力と安定性を高めるための練習と、相手の強打に対して負けない気持ちで取り組む、強打対強打の練習は毎日欠かしませんでした。
 基本練習には時間がかかりますので、基本練習の時間にできなかったことを自主課題の中にとり上げて、1時間以上練習することもありました。特にフットワーク(ランダムに回してもらってオールフォアで打つ。前後)です。前後のフットワークでは、
 ①ボールをよく見る
 ②足を正確に動かす
 ③打点を落とさない
 ④足を1球1球に対してふみ込む
 ⑤手打ちにならないようにする
...この5つのことに特に注意して練習しました。

 ~現在の練習内容~

■体力トレーニングを重視

 現在の練習時間は、平均2.5時間ぐらいです。学生時代に比べて時間は短くなりましたが、練習場に入れば、一球たりともおろそかにしないように集中して取り組んでいます。社会人になって、学生時代と違ってきたことといえば、体のコンディションに気をくばるようになったことです。常日頃から卓球にプラスするように過ごしています。
 私はドライブ主戦ですから足腰が強くないと良いボールが打てませんので、体力トレーニングに重点をおいています。6:00~7:20までの間に、ランニング5km、腹筋50回、腕立て50回、などを行っています。それに練習場に備えてある器具(鉄アレイ、バーベルなど)を使って、練習の合間とか休憩時間を利用して筋力の強化に努めています。

■技術面では
①フォアハンドを生かした速い動き

 自分の主戦武器に自信があれば、試合で思いきったプレーができます。ですから私は自分の主戦武器であるフォアハンドだけは負けないように、練習でもいちばん気を使っています。威力を出すには、速い動きと比例してスイング(振り)の速さです。そして打つ方向に軸足を向け、ベタ足にならないように気をつけています。振りの速さだけでは十分なボールは打てませんので、からだ全体でボールをとらえ、タイミングをしっかりとって打つようにしています。
②動きの速さ(回り込み)
 威力あるボールを打つには、動きの速さが重要です。ボールのところまでいち速く動き、十分な体勢でねらったコースへ攻撃できればポイントの確率は高くなってきます。そのためには、ボールを追いかけるのではなく、待って打てるようにボールのところへすばやく動き、1球でもストライクにして打てるように動きをともなった練習に重点をおいています。
③サービス+3球目攻撃、レシーブ+4球目攻撃
 サービスは、自分の思ったところへ ①回転 ②コース ③タイミング のうち2つ以上が重ならないと良いサービスとは言えません。サービスが良ければ3球目攻撃がしやすくなりますし、ラリーの主導権を握ることにもなります。ここ数年、中国選手が群を抜いているのは、やはりサービス力があるからです。私もサービスの良い選手を見て大いに学び、自分の卓球にとり入れていきたいものです。
 レシーブも同じで、レシーブがうまくなれば4球目攻撃もよくなりますのでしっかり練習しなければなりません。レシーブのときは、相手の心理状態を読み、どんなときでも、どんなサービスに対しても私は払うことを原則としています。サービス、レシーブ後のもどりを速くすることも忘れてはいけないことです。
④時間が少しでもあれば基本練習
 調子を出す練習には、ショート打ち(一球一球動きながら一定のコースへ打つ)をします。

 社会人になって4年目になりますが、会社、職場の方々のご理解をいただき、練習に意欲をもって取り組むことができることに深く感謝しています。今後は'83年の東京大会に向けて、社会人としての自覚を持ち、現在の練習をさらに充実させ、目標に一歩でも近づけるように努力していきたいと思います。

あべひろゆき
興国高→専修大→協和発酵
右、ペン、裏ソフトドライブ主戦型。
フットワークを生かしたロング戦の強さで1980年全日本No.1。
1979、1981年世界大会日本代表


(1981年12月号掲載)
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