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「マリオの指導アプローチ」 第7回 攻撃的プレー

「攻撃的なプレーをしよう」という気持ちが1番大切
―今回は、現代的な攻撃技術に肉薄したいと思います。卓球選手の90パーセント以上が攻撃型選手の部類に入ると思いますが、攻撃型といってもいろいろなタイプがあり、ひとくくりには説明できません。ところで、どのような選手が攻撃的プレーに向いているのでしょうか?
マリオ まず第1に、1番大切なことを言いましょう。選手は、「攻撃的なプレーをしよう」という気持ちを持たなければなりません。この気持ちは内面から生じるものです。もし、選手の内面に攻撃したい気持ちがないのならば、攻撃的プレーはうまくいきません。攻撃的プレーは速いものですから、それが可能な身体的能力を必要とします。しかし、1番大切なのは身体的能力ではなく、「攻撃的なプレーをしよう」という気持ちなのです。
 どのようなレベルの選手でも、選手は自分のやりたいことをやるべきです。「他の選手がやっているから」「コーチが望むから」といった理由で攻撃的プレーをするのでは、本末転倒です。攻める気持ちというものは自然に備わるものであって、植え付けられるものではないのです。これが出発点です。
 第2は、向き不向きを知ることです。もし、動くのが嫌いだという選手が、スピードの出るラケットを新しく手に入れたと言っていたら、気をつけなくてはなりません。ラケットが攻撃選手をつくるのではありません。いくらスピードの出るラケットを手に入れても、そもそも選手自身が速く動けなくては、攻撃的プレーは無理なのです。
 知っておくべきことは、自分が好きだからというだけでそのプレーをするのではなく、できるかどうかも重要ということです。多くの選手は現実的ではありませんし、自分に正直だというわけでもありません。しかし、自分の適性を理解することが重要だと思います。
 攻撃的プレーにおける個性
―ボル(ドイツ)とサムソノフ(ベラルーシ)は2人とも攻撃型選手ですが、2人の卓球は違いますね。
マリオ もちろん、両選手とも攻撃型選手という部類に入ります。しかし、一口に攻撃型といっても、それは途方もなく広い概念なのです。
 個性・性格というものに戻って考えてみましょう。ボルは普段はもの静かですが、コートに立つと非常に攻撃的になります。一方、サムソノフはまるで大学教授であるかのようなプレーをします。つまり、いつも熟慮していて、相手選手にプレッシャーをかける(激しく攻め込む)こと以外の方法で得点しようとしているということです。
 別な言葉で言えば、サムソノフは相手と一緒にプレーすることを好みますし、ボルは相手を「やっつけて」、卓球台から弾き飛ばしてしまおうとしています。そのため、2人にとっては攻撃というものの性質がまったく違っているのです。
―基本のところは同じだと思うのですが、世の中にはボルのような選手もいれば、サムソノフのような選手もいて、その他のタイプの選手もいます。けれども、多くの場合は同じような練習をしています。どのようにしたら、選手の個性に応じた個性的な攻撃システムをつくり上げていくことができるのでしょうか?
マリオ もちろん、技術を覚え始めるころにやる練習は誰でもほとんど同じです。それぞれの選手の違いが浮かび上がってくるのは、それ以後です。
 特定の状況で、ある選手はブロックを好みますが、別の選手は攻撃を選びます。良いコーチであれば、そうしたことを注意深く観察して選手の個性や性格をつかみ、練習に生かそうとするでしょう。もちろん、選手の個性や性格を見抜くには時間がかかりますし、経験も必要です。それでも、選手たちそれぞれの個性を伸ばして育てるのがコーチの役目なのです。
―コーチはその点で間違いを犯すことがありますか?
マリオ 卓球は個人競技ですが、最初はいつもグループで練習しますし、全員同じような練習をします。しかし、いつまでもその状態ではいけないと思います。
 例えば、最初は20人のグループで練習させるとします。1年たって、20人の中の5人の選手の進歩が非常に早ければ、他の15人とは違う練習にしなければなりません。さらに1年たって、5人のうちの2人の進歩が早ければ、他の3人とは違う練習をさせるべきでしょう。
 つまり、私の言いたいのはこういうことです。指導者として、選手たちの将来の成功を目指して教えていきたいと思うならば、選手それぞれの技術と性格をよく考慮して教えなければならないのです。
 選手たちをただただ追い立てて忙しく練習させるばかりで、これらのことを深く考えない指導者がいたとします。そのような指導者は、選手のためではなく、ただ自分の楽しみのためにコーチをしているとしかいえないでしょう。多くの指導者が「(忙しすぎて)そんなことはとても不可能だ」と言うのは、言い訳にすぎません。それをやる意思があるかどうかの問題だと思います。
 バックハンドを使いすぎるのはひじ掛けいすに座って卓球をするようなもの
―トップレベルの選手にとってバックハンドドライブは標準的な技術です。しかし、バック側に回り込んでフォアハンドで攻撃するプレーもよく目にします。これはどうしてなのでしょうか?
マリオ 1つ確かなことは、例えばハーフロング(レシーバーのコートでの2バウンド目が台から出るか出ないかの長さの)サービスやロングサービスに対して、両ハンドのドライブ攻撃でレシーブできなければ、現代の激烈な卓球では生き残ることができません。これはジュニアの上級レベル以上では明白です。プレーが非常に速いため、フォアハンドだけで戦うことはできません。バックハンドが不可欠なのです。
 そこで疑問がわいてくることでしょう。どのようなときにバックハンドを使い、どのようなときにフォアハンドを使うべきか?私の考えでは、バックハンドドライブは準備球をつくるためのもので、フォアハンドで決定打を打つのです。
 一流選手の中には、バックハンドで決定打を打てる選手がたくさんいます。ですが、その彼らでも、フォアハンドで決定打を打つことができるように、ゲームを組み立てています。バックハンドドライブを使いすぎると、回転も、スピードも、リズムも、フォアハンドのストロークでつくり出されるゲームのダイナミズムも失ってしまいます。バックハンドを使いすぎることは、ひじ掛けいすに座って卓球をするようなものなのです。
 もう1つ、大きな問題はフットワークです。トップ選手は皆、素晴らしいフットワークを持っています。しかし、初~中級の選手は、バックハンドかフォアハンドか迷うと、しばしば足が動かなくなってしまうのです。
―最近の攻撃技術で何か特に変わってきたことはありますか?
マリオ そうですね、バックハンドが変わってきました。ここ数年くらいで際立ってきたことですが、トップレベルでは単にブロックするだけのバックハンドはほとんど見られなくなりました。皆、「けり返す」ようになりました。
―え?サッカーの話ではありませんよね。「けり返す」とは、正確にはどういうことですか?
マリオ バックハンドでカウンタードライブすることです。観客にはわかりにくいでしょうが、手首の最小限の動きから繰り出される最小限のドライブで、ボルの得意技です。このカウンタードライブを用いることで、今までの受け身一辺倒だったブロックに、攻撃的なプレーを混ぜることが可能になりました。そして、バックハンドからゲームの主導権を奪うことができるようになりました。

(2005年8月号掲載)


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