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【特別寄稿】 橋津文彦 「2020年の生徒たちへ」(中編)

 世界中を厚い雲で覆っているコロナウイルス。この未知なるウイルスは、スポーツ界にも甚大な被害を与えている。
 これまで経験したことのない日常に対し、私たち卓球人はどう向き合っていけばいいのか。
 この難題に対する手がかりの一つとして、野田学園高校卓球部監督の橋津文彦氏による特別寄稿を3回に分けて掲載する。今回は中編を紹介する。
前編はこちら

ついに届いたインターハイ中止の報
たまらず今枝愛工大名電監督へかけた電話

 インターハイの中止はある程度想定はしていましたし、私自身も感染拡大の終息が見えない中で開催するべきではないと考えていましたが、実際に中止の知らせを受けた時は、ひざから力が抜ける思いでした。
 高校生活の集大成とも言うべきインターハイが中止になるのは残念でなりませんが、この決定を尊重して受け入れた上で、前に進んでいくしかありません。私は、生徒たちが前を向けるような言葉を必死に探しました。
 しかし、高校選抜に続き、インターハイも中止になって輝く場を奪われた高校3年生たちの心中を思うと胸が詰まり、かける言葉が見つかりません。「本当に悔しいけれど、今は優先しなければならないことがある。何よりも大切なものがあるから」と話すのが精いっぱいでした。

 生徒たちにインターハイ中止を伝え、しばらく無力感にとらわれていた私は、たまらず携帯電話を手に取り、電話をかけました。
 相手は、愛工大名電高校の今枝一郎卓球部監督です。
 ご存じの通り、愛工大名電はインターハイ男子学校対抗で現在4連覇中の強豪です。私たち野田学園は、昨年の鹿児島インターハイ男子学校対抗決勝で愛工大名電に敗れており、「打倒! 愛工大名電」を大きな目標の一つに掲げて、日々厳しい練習に取り組んできました。しかし、インターハイが中止となり、生徒たちはその目標を達成するどころか、挑戦する場に立つことすらかないません。
 そんな生徒たちに、わずかでも躍動する場を提供したい。その一心で、「コロナが終息したら本気の練習試合をしてほしい。そして、高校3年生たちに思い出をつくってあげたい」と今枝監督に電話でお願いをしました。
 今枝監督にとっても、生徒たちが5連覇に挑戦する場を奪われた無念さは同じだったと思います。唐突な申し出にもかかわらず、今枝監督には快く賛同してくださり、ほんの少しだけ前を向けた気持ちになりました。

昨年のインターハイ男子学校対抗決勝。愛工大名電は野田学園を破りV4を達成した

つかの間、現実を忘れることができた
OBたちとのオンライン懇親会

 インターハイ中止が決まり、終わりの見えない休部が続いていたある日、卒業生の平野友樹(協和キリン)から、「みんなでオンライン懇親会をしましょう」と連絡が入りました。恐らく、インターハイ中止で沈んでいる私を気遣ってのことだったのだと思います。
 例年では、年に1回のペースで教え子たちが集まり、多い時には40人くらいで懇親会を行っていました。毎年楽しみにしている会でしたが、新型コロナウイルスの影響でしばらく開催は難しそうだなと思っていたところでしたので、喜んで参加しました。

 その日のオンライン懇親会には平野のほか、協和キリンで選手として活躍した小野竜也に、岸川聖也(ファースト)、吉村真晴(名古屋ダイハツ)、有延大夢(リコー)らが参加し、お互いの近況などを約3時間にわたって報告し合いました。
 その席上で、彼らから「卒業生たちでオールスターメンバーをつくって、野田学園へ団体戦を挑みにいきます!」と提案がありました。卒業生たちの気遣いや心意気に胸が熱くなり、つかのまでも重い現実を忘れることができました。
 ぜひ、高校3年生と卒業生たちとの団体戦を実現して、生徒たちに思い出をつくってあげたいと強く願っています。(後編へ続く)

(まとめ=卓球レポート編集部)

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