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【特別寄稿】 橋津文彦 「2020年の生徒たちへ(前編)」

 世界中を厚い雲で覆っている新型コロナウイルス。この未知なるウイルスの悪しき力は、東京オリンピックの延期をはじめ、プロスポーツの延期や主要全国大会の中止など、スポーツ界にも甚大な被害を与えている。6月に入って練習を再開できた人も増えていることと思うが、今後も予断を許さない状況は続く。
 これまで経験したことのない日常に対し、私たち卓球人はどう向き合っていけばいいのか。
 この難題に対する手がかりの一つとして、野田学園高校卓球部監督の橋津文彦氏による特別寄稿を3回に分けて紹介する。
 現場に立てない中で至った思いや、活躍の場を奪われた選手たちへ伝えたことなど、橋津氏がつづる経験から、少しでも前を向く手がかりが得られれば幸いだ。

日に日に感染が拡大していく中、高校選抜が中止に

 今年の1月下旬、中国の地方都市で新型のコロナウイルスが確認されたと報じられました。その時は、現在のように日常生活が今まで通りに行えなくなる事態にまでなってしまうとは想像できませんでした。おそらく、多くの人が、私と同じ感想を抱いていることでしょう。
 今も世界全体を未曾有の危機に追い込み続けているこの未知のウイルスは、日本中が待ち望んでいた東京オリンピックをも延期に追いやり、スポーツ界全体に大きな影響を及ぼしています。

 野田学園では3月1日に卒業式を短縮して行い、翌3月2日から、クラスター(集団感染)を防ぐという政府の要請に従い、臨時休校になりました。その時点で、山口県では感染者は発生していませんでしたが、ただちに学校関係者や保護者たちと相談し、同意を得た上で、卓球部の活動を細心の注意を払って継続していくことを判断しました。
 以降、規模を縮小しながら練習を行っていましたが、日に日に感染状況が悪化し、さまざまなイベントが中止になったという報道が耳に入ってきます。生徒たちにも暗い雰囲気が漂うのを感じ始めていたところに、春の全国高等学校選抜卓球大会が中止になったと連絡を受けました。
 高校選抜中止の報を聞き、2011年の東日本大震災の時を思い出して心苦しい気持ちになりましたが、ミーティングで生徒たちには「中止は仕方がない。今、卓球ができていることに感謝の気持ちを持って夏に向けて頑張ろう」と話し、気持ちを切り替えることに努めました。

練習場内の黒板には感染対策が書き出されている

前向きに在宅勤務を続ける中、最も聞きたくなかった報が届く

 4月に入り、山口県内にも感染者は少しずつ増加しはじめましたが、新入生が入ってきたこともあり、立ち止まっているわけにもいきません。不安はありましたが、感染予防対策を徹底して行うことを前提に、新チーム体制をスタートさせました。
 そうしたところ、4月7日に7都府県で緊急事態宣言が発令されました。
 すぐに学校関係者や保護者の方々、多くの卓球関係者と相談し、考え抜いた末、卓球部の活動を停止することを決断しました。
 どのような行動を取ることが正解なのかは今でも手探りですが、生徒たちの安全と健康を守ることが最優先であることだけは確かです。寮に入っていた生徒たちを保護者と私とで手分けして自宅まで送り届け、野田学園卓球部は休部に入りました。

 休部中は、生徒と保護者には定期的にLINE(ライン)で学校の状況と今後の予定などの連絡を取り合いながら、私自身も在宅勤務になりました。
 卓球と離れてこんなにも長い時間を自宅で過ごすのは、社会人になって初めてのことです。こうして卓球と離れる時間はこれからの人生で二度とないだろうと思い、初めは卓球を忘れて生活してみようと思いました。
 しかし、長続きしません。気づくと卓球についてイメージし、休部明けの強化プランについて考えている自分がいました。
 
 在宅勤務を続けながら、前向きに強化プランを練っていた4月26日のことです。高校の部活動を預かる身として、最も聞きたくない知らせを受け取りました。
 今年のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)中止の決定です。(中編へ続く)

(まとめ=卓球レポート編集部)

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