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【特別寄稿】 橋津文彦 コロナと向き合う(前編) 「部内から感染者が発生」

 人類に甚大な被害を与えている新型コロナウイルスは、スポーツ界にも漏れなく大きな爪痕を残し続けている。一時の恐怖心や緊張感は薄れてきたものの、まだしばらくは感染対策に追われる日々が続きそうだ。卓球部の活動に関わる指導者や選手たちにとっても、「いかに感染予防をしつつ、練習や大会を行うか」は日々の大きな負担であり、課題だろう。
 この課題に取り組む手がかりの一つとして、野田学園高校卓球部監督の橋津文彦氏が、部内から感染者が発生した体験談や日頃行っている感染対策などを寄せてくれた。
 橋津氏がつづる日常から、コロナと向き合うヒントが得られれば幸いだ。


全日本を終えて山口に帰郷した夜、生徒たちの体調異変が相次ぐ
 私たち野田学園卓球部の中からも、新型コロナウイルスの感染者が発生してしまいました。
 日頃から、基本的な感染予防対策はもちろんのこと、練習場や寮内を抗菌コーティングするなど高い意識を持って感染予防に取り組んではいました。しかし、この目に見えない敵は、私たちのわずかな隙間をぬって入り込み、意識だけではどうすることもできませんでした。
 前編では、感染者が発生した経緯と、その後に取った対応についてお話ししたいと思います。

 1月末に行われた2022年全日本卓球選手権大会(以下、全日本)の全日程を終え、東京から山口に戻った日の夜でした。数名の生徒から喉に違和感があるなど、体調に異変があるとの報告が入りました。
 生徒たちが生活する寮の隣に住んでいる私は、すぐに寮へ駆けつけました。初めに、卓球部全員が入っているグループLINEに体温を測って報告するよう指示しましたが、この時点で体温が高い生徒はいませんでした。しかし、その1時間後には、倦怠感が強くなる生徒や38度の発熱を訴える生徒が出始めました。
 そうこうしているうち、体調が悪くなったという報告が生徒たちから相次ぎ、その時点で、私は野田学園卓球部が新型コロナウイルスに感染してしまったことを覚悟しました。


事前シミュレーションが冷静な対応につながる

 今年の全日本は、過去最多となる100名以上の棄権者が出ました。大会前だけでなく、大会期間中に棄権する選手も多く出てしまう状況で、会場でも「○○チームに陽性者が出た」「○○が感染したらしい」など、ネガティブな噂話が飛び交っていました。
 そうした状況の中、「もしかすると、全日本期間中にチーム内にも感染者が出てしまうのではないか」と考えていました。うっすらと感染を覚悟すると同時に、「チーム内に陽性者が出た場合は何をしなければならないのか」を事前に頭の中でシミュレーションしました。
 感染者の発生が現実のものとなった時は少し慌ててしまいましたが、このシミュレーションによって、思っていたよりは落ち着いて対応できたと思っています。

 全日本を終えて山口に帰った夜、感染者が出たかもしれないと察した私は、まず寮生全員に手洗いとうがいを促し、寮内でもマスク着用を義務付け、全ての部屋の換気を行った後、遅い時間でしたが寮の外へ生徒たちを集めました。その間に、全ての部屋と風呂やトイレなどの共同スペースの消毒を行い、その後、体調不良を訴える生徒たちを一人部屋にして隔離しました。
 また、全日本に出場し、感染や濃厚接触が疑われる生徒と、全日本に出場していない生徒を別々の部屋へ分けました。そして、体調不良を訴える生徒にはスポーツドリンクを準備して、経過観察を行いながら翌日を迎えました。

全日本を戦い終えた野田学園だったが、大会終了後に感染者が出てしまった


感染を部内で抑えられたことが不幸中の幸い
 翌朝、体調不良を訴える生徒たちを私のワゴン車に乗せ、保健所に指定された病院へ連れて行きました。病院で抗原検査をしたところ、やはり数名の生徒に陽性判定が出てしまいました。覚悟ができていたことと、その時点で体調が回復していた生徒が何人かいたため、陽性と聞いても大きなショックを受けずに済みました。
 陽性判定を受けた生徒は、保健所の指示を待った後、市内の療養ホテルへ行くこととなりました。同時に、全日本に出場した部員全員が濃厚接触者となり、翌日、保健所でPCR検査を受けました。その間にも喉の痛みや、微熱を申告する生徒が出たため、病院で抗原検査を行った結果、時間差で新たに数名の生徒が陽性の判定を受けました。

 この先、いったい何人の感染者が出るのだろうか。相次ぐ生徒たちの感染に心が沈みましたが、幸いにも全日本に出ていなかった生徒から感染者は出ませんでした。いつも、仮に感染者が出たとしても「絶対にクラスター(集団感染)にはしない」という意識で行動していたことと、それに伴って感染の疑いが生じた直後から取った対策の効果があったのではないかと今は思っています。
 一連の検査では、前夜に発熱のあった生徒が抗原検査で陰性の判定を受ける事例もありました。当然陽性だろうと思っていただけに、なぜ陰性なのか不思議でしたが、免疫力の高さやワクチン効果など、人それぞれで違いがあるのでしょう。
 ともあれ、陽性判定を受けた生徒は10日間の隔離、その濃厚接触者に判定された生徒と私は寮で7日間待機となりました。

 陽性になった生徒は、全員が軽症で熱は23日程度で下がりましたが、喉の痛みはほぼ全員が1週間近く続きました。決して軽んじるわけではありませんが、オミクロン株は感染力が強い半面、特に若い人は症状が悪化しにくいと報道されていますが、本当にその通りの症状でした。
 もともと私たちは、全日本終了後は学校へ登校せず、寮で数日間の待機を決めていました。そのため、感染者も卓球部に限られたので、野田学園全体が休校などの処置にならなかったことは不幸中の幸いでした。特に、受験シーズンだったため、受験を目前に控えた3年生たちに影響が及ばなかったことは、本当に良かったと思っています。(中編に続く)

(まとめ=卓球レポート)

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