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第3回 両ハンドを切り替える基本を身に付ける多球練習

 多くのボールを使い、連続して打球する多球練習は、強くなるために必ず取り入れたい練習方法です。
 この特集では、正しい球出しの方法から効果的な練習パターンまで、ビギナーが知りたい多球練習のいろはを、宇田直充氏(うだ卓代表)が丁寧に解説してくれます。
 3回目は、両ハンドを切り替える基本を身に付ける多球練習を紹介しましょう。

講師プロフィール 宇田直充(うだなおみつ/うだ卓代表)

mb01-profile.jpg「最新の世界基準の技術を幼児から高齢の方まで」をコンセプトに掲げる卓球場「うだ卓」の代表を務める。2020年全日本選手権大会男子シングルス優勝宇田幸矢(明治大)は愛息。宇田幸矢を幼少の頃から育て上げたほか、日本卓球協会の強化スタッフを務めるなど、確かな指導実績を持つ

※本文の技術解説は練習する選手を右利きプレーヤーと想定しています

<今回の練習メニュー>
・速いラリーに対応するためには、両ハンドの切り替えが不可欠
・両ハンドを切り替える基礎を身に付ける多球練習
・ワンコースの練習で切り替えに必要な「軸」に磨きをかける
・動きながら両ハンドを切り替えつつ、打法の幅を広げる

速いラリーに対応するためには、両ハンドの切り替えが不可欠

 試合では、飛んできたボールや自分の位置、状況などに応じて、フォアハンドとバックハンドの両ハンドを切り替えながら打球する必要があります。特に、今の卓球はラリーのピッチが速いので、フォアハンドまたはバックハンドのどちらかだけで試合を行うことは不可能です。
 そのため、両ハンドのスムーズな切り替えを身に付けることは、初心者がステップアップしていくために欠かせません。
 今回紹介する多球練習に取り組んで、両ハンドをスムーズに切り替えるための基本を身に付けましょう。

両ハンドを切り替える基礎を身に付ける多球練習

【練習の内容】
1本ずつ両ハンドを切り替える多球練習

※図では送球する人は左利き。送球する人が右利きの場合は、図とは反対側の位置(送球する人にとってバック側)から送球する

 両ハンドを切り替える基本を身に付けることが、この多球練習の狙いです。
 送球する人は、フォア側→バック側と交互にロングボールを送球します。一方、練習する選手は、フォア側に送られてきたロングボールに対してはフォアハンドドライブ、バック側に送られてきたロングボールにはバックハンドドライブで打球します。
 練習は、50球ワンセット、または1分程度を目安にしてください。

【送球する人のポイント】
練習する選手が大きく動かず打球できるコースへ送球する

 この多球練習で送球する人は、練習する選手が大きく動かなくても打球できるコースへ送球することを心掛けてください。そうすると、練習する選手は両ハンドを切り替えることだけに専念できるので、上達が早まります。
 一方、練習する選手が大きく動かなくてはならないようなコースへ送球してしまうと、フォームが崩れやすくなり、練習の効果が半減してしまうので注意してください。

【練習する選手のポイント】
股関節を意識して、体の軸をつくる

 練習する選手は、フォアハンドドライブとバックハンドドライブを1本ずつ切り替えながら、それぞれの打法を基本通りにスイングすることを心掛けてください。
 また、この練習は、両ハンドを切り替える基礎を身に付けることに加えて、「軸をつくる」ことも大きな目的です。
 軸とは抽象的ですが、(頭上から)体の中心あたりを通る棒のようなものをイメージしてください。この軸がしっかりしていると体のバランスが崩れにくく、スイングの安定感や力強さが増します。それに伴って打球の精度も高まりやすくなるため、軸をしっかりつくることは強くなるために欠かせません。
 軸をつくるために意識してほしいのは「股関節」です。
 具体的には、フォアハンドドライブのバックスイングを取る時に、右足の股関節を入れる(右にひねる)よう意識してください。一方、バックハンドドライブのバックスイングを取る時は、左足の股関節を入れる(左にひねる)よう意識します。
 このように、両ハンドを打つ時に股関節をそれぞれ意識すると、上体がスムーズに回って自然と軸をつくることができ、両ハンドのスイングの安定感が増すでしょう。

ロングボールに対する両ハンドの切り替え



ワンコースの練習で切り替えに必要な「軸」に磨きをかける

【練習の内容】
ワンコースで両ハンドを切り替える多球練習

※図では送球する人は左利き。送球する人が右利きの場合は、図とは反対側の位置(送球する人にとってバック側)から送球する

 次のステップとして、コースを限定し、動きながら両ハンドを切り替える多球練習を紹介します。
 送球する人は、練習する選手のバック側にロングボールを連続して送球します。この送球に対し、練習する選手は、バックハンドドライブ→フォアハンドドライブの順に1本ずつ交互に切り替えて打球します。
 練習は、バックハンドドライブ→フォアハンドドライブの2本をワンセットとして50セットを目安に行ってください。

【送球する人のポイント】
練習する選手をよく見てタイミングよく送球する

 送球する人は、練習する選手をよく見ながら送球してください。そうして、打球が間に合わなかったり、打球するまでの時間が余ったりしないようタイミングを見計らって送球しましょう。
 ボールを同じところへ、同じような軌道で出すことも心掛けてください。

【練習する選手のポイント】
足をステップさせながら、股関節を意識して「軸」をつくる

 この多球練習では、打球するごとに足を素早くステップさせることがポイントです。
 バックハンドドライブした後、フォアハンドドライブへ切り替える時は、バック側へ素早く回り込みます。回り込む時は、左足をバック側に小さく一歩出し、この動きをきっかけに右足→左足の順にバック側へ足を動かすことが基本です。
 一方、フォアハンドドライブした後は、両足をフォア側へステップさせて、バックハンドドライブしやすい位置まで移動します。
 打球しながら動くのではなく、打球してから動くことを心掛けてください。
 
 また、この多球練習は、先に述べた「軸」に磨きをかけることも大きな目的です。
 軸をつくるためには、「バックスイング時に股関節を意識することがポイントになる」と述べました。このポイントを踏まえ、フォアハンドドライブのバックスイングを取る時は、右足の股関節を入れる(右にひねる)よう意識してください。一方、バックハンドドライブでは、左足の股関節を軽く入れる(左に軽くひねる)意識でバックスイングします。
 このように、股関節を意識すると軸が自然とつくられ、磨かれます。それに伴って、足の動きも両ハンドの切り替えもスムーズに行えるようになるでしょう。

ワンコースでの両ハンドの切り替え



動きながら両ハンドを切り替えつつ、打法の幅を広げる

【練習の内容】
フォア側2本→バック側2本の順に両ハンドを切り替える多球練習

※図では送球する人は左利き。送球する人が右利きの場合は、図とは反対側の位置(送球する人にとってバック側)から送球する

 続いて、左右に大きめに動きながら両ハンドを切り替える多球練習を紹介します。
 送球する人は、練習する選手のフォア側に2本、バック側に2本の順にロングボールを連続して送球します。
 一方、練習する選手は、フォア側に来たボールはフォアハンドドライブ、バック側に来たボールはバックハンドドライブで打球します。また、この多球練習では2本ずつドライブを打ちますが、1本目と2本目とで打球に差をつけてください。具体的には、1本目は回転をかけることを意識し、2本目はスピードを出すことを意識してドライブしましょう。
 練習は、4本をワンセットとして、50セットを目安に行います。

【練習する選手のポイント】
1本ごとにドライブに差をつけながら両ハンドを切り替える

 この多球練習では、左右にしっかり動き、フォアハンドドライブとバックハンドドライブを、それぞれ同じように正確に振り切ることを心掛けてください。
 また、上で述べたように、この多球練習に取り組む時は、1本目は回転重視でドライブし、2本目はスピード重視でドライブします。このように、1本ごとに打球に差をつけることによって打法のバリエーションが増え、試合で役立つドライブを身に付けることができます。
 回転重視でフォアハンドドライブする時は、ラケットを下から斜め上に振り上げて、ボールの上の方を強くこするように打ちます。一方、スピード重視でフォアハンドドライブする場合は、ひじを前へ押し出すように動かして、回転をかける時よりも前方向へスイングしましょう。
 続いて、回転重視のバックハンドドライブをする時は、手首を利かせて斜め上にスイングし、ボールの上の方を強くこするように打ちます。一方、スピードを出す時は、両足で床を強く蹴る力を使いながら、手首を利かせてラケットを横方向へ振り抜くようにスイングしましょう。

フォア側2本→バック側2本の順に両ハンドを切り替える多球練習



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(監修=宇田直充、取材/まとめ=卓球レポート)

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