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倉嶋洋介の未来予想図
「さまざまな位置」からサービスを出す

 元ナショナルチーム監督として日本男子をけん引し、現在はTリーグの強豪・木下マイスター東京の監督を務める倉嶋洋介氏が、その確かな視点で現代卓球を考察する新企画。最先端のプレーはもちろん、これからトレンドになりそうなプレーを切り出し、解説から技術指導まで、さまざまな角度から一歩先へ行くためのヒントを提案していく。
 今回は、サービスを生かす工夫ついて語っていただいた。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています
※撮影協力=吉田雅己(木下グループ)

さまざまな位置からサービスを出すほど
レシーバーは対策が難しくなる

 今、世界で勝つ選手はどんなサービスを出しているのか。このテーマに対する私の見解として、前回、前々回ではフォームの勢いに注目しました。
 今回は「サービスを出す位置(構える位置)」についてお話ししたいと思います。

 サービスは、少し前まで自分のバック側に構えて出す選手がほとんどでした。ところが、現在、世界で活躍する選手は、バック側からだけではなく、ミドル(センターライン付近)やフォア側など、コートのあらゆるところでサービスを構え、そこからいろいろなサービスを出してくる選手が増えてきました。こうしたサービスを出す選手としては、モーレゴード(スウェーデン)やA.ルブラン、F.ルブランのルブラン兄弟(ともにフランス)らが代表格でしょう。彼らのサービスを構える位置や、そこから出してくるサービスの種類は実に多彩です。
 私は日本選手のベンチに入ってモーレゴードやルブラン兄弟と対戦した経験が何度かありますが、サービスをどこからどう出してくるのか読めないので彼らに対する戦術が立てにくく、とても脅威に感じました。
 そのため、「さまざまな位置からサービスを出す」ことは、今の卓球で勝つために押さえておくべきサービステクニックだと思います。

さまざまな位置からサービスを出すメリット

 サービスをさまざまな位置から出すメリットは、言うまでもなく「相手(レシーバー)の対応を難しくさせる」ことです。
 例えば、下回転サービスを出す場合、どこか一カ所だけからではなく、バック側、ミドル、フォア側の3方向から出せば、相手にとっては同じ下回転サービスでもそれぞれタイミングの取り方や見え方が変わります。タイミングの取り方や見え方が変わるということは、その分、相手の対応ミスを誘うことができるので、サービスから優位に立つ可能性が高くなります。
 また、さまざまな位置からいろいろなサービスを出すと、「次はどこにどういうサービスが来るのだろう?」と相手にプレッシャーを与えることができます。そのため、サービスを出す前から心理的に優位に立つことができるでしょう。

サービスを構える位置を変える

サービスをさまざまな位置から出せば、同じ回転でもレシーバーにとっては異なるサービスに感じる

さまざまな位置からサービスを出すようになった背景

 トップ選手たちがさまざまな位置からサービスを出すようになった背景には、プレースタイルの変化が大きく関係しています。
 以前は、バック側への回り込みフォアハンドが重要な得点源でした。そのため、3球目攻撃で回り込みがしやすいよう、サービスは自身のバック側に構えて出すことが主流でした。
 しかし、バックハンドが格段に進歩した今では、回り込みにこだわる必要がなくなりました。もちろん回り込みフォアハンド攻撃は変わらずに重要な得点パターンですが、今はフォア側に来たボールに対してバックハンドで回り込むこともある時代です。そのため、(フォアハンドとバックハンドの)両ハンドで3球目攻撃を狙いたい選手にとって、フォア側やミドルに構えてサービスを出すことは自然な流れだと言えるでしょう。
 もちろん、さまざまな位置からサービスを出すことはメリットばかりではありません。さまざまな位置からサービスを出す分、レシーブもさまざまに返ってくるので3球目が難しくなります。また、それぞれのサービスの質を高めることも簡単ではないでしょう。
 しかし、前述のように、さまざまな位置からサービスを出せば相手に大きなプレッシャーを与えることができ、サービスの種類も増えます。経験を積んでいけば3球目の対応力も上がり、それぞれのサービスの質も高められると思います。「サービスから思うように主導権が握れない」「サービスの種類が少ない」と悩んでいる選手は、ぜひ、さまざまな位置からサービスを出すことにトライしてみてください。

↓動画はこちら

(取材/まとめ=卓球レポート)

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