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【梅村礼の眼】③日本女子のカット対策は着実にレベルアップしている


元全日本王者の梅村礼が見た世界卓球ハルムスタッド2018。日本女子の決勝トーナメント準々決勝ウクライナ戦の戦いぶりと、明日からの展望を聞いた。


進化した石川のフォアハンドが日本女子をけん引している


伊藤は実力者のペソツカにサービス・レシーブで差をつけた

 伊藤と対戦したペソツカは非常に粘り強いタイプで、2009年のヨーロッパ選手権大会では2位になったこともある実力者です。ただ、出産したため、去年1年はほとんど試合に出ていないのでブランクはありましたが、それを感じさせないプレーぶりでした。この試合でも強打されたボールに対してもうまく対応していました。ルーマニアのサマラやドデアンのように、パワーはあまりありませんが、バックハンドの感覚が非常によく、フォームは個性的ですが、それがまた特徴にもなっています。距離を変えて後ろから入れてくることもできるし、前で叩くこともできる。緩急もうまく使い分けてくるので、はまるとやりにくい相手です。伊藤もはまりかけました。ただ、最後はサービス、レシーブの差で乗り切りました。
 最終ゲームは先に8−10とマッチポイントを握られましたが、最後サービス持っていたので、サービス3球目の差が勝敗に結びついたと思います。この1番を取られていたら日本にとってはいやな流れになっていたでしょう。伊藤は世界卓球やオリンピックで代表としての経験もかなり積んできて、厳しい場面でも踏ん張りがきくようになったと感じました。


石川のフォアハンドの強化が勝因


 ビレンコはひじのけががかなり悪いようで本調子ではありませんでしたが、それを差し引いても石川は万全の戦いを見せてくれました。最近では、徐孝元(韓国)や武楊(中国)などのトップのカット選手にも勝ったことでカットに対して自信がついてきたのだと思います。カット打ちにぶれが見られませんでした。今までは、ボールが走ってないと感じることがありましたが、今回はボールが速いですよね。うまく力が抜けて、体が回っているので、遠心力をうまく使ってパワーのあるボールを打つことができています。それでフォアハンドの威力がアップしてミスが減りました。3球目攻撃などで踏み込んで打ったときはすごいスピードがあります。この試合でも、ビレンコが来ると分かっているボールでもラケットに弾き飛ばされていたので、そこが一番の勝因でしょう。
 石川は、もともとバックハンドのミスは少ない選手でしたが、そこにフォアハンドの威力と安定感が加わったことでどこからでも点が取れるようになりました。フォアハンドが振れる選手は、最後の最後に迷いなくプレーできます。それが競った場面での強さにもつながっていると思います。自分のやることがはっきりしているので、明日以降も楽しみですね。コリア、中国に対しても面白い勝負してくれるという期待があります。


平野もカットに対しての成長が感じられた

 あっさり勝つことができましたね。日本選手は普段からカット打ちやり慣れていて平野も自分が何をすべきかしっかり頭に入っていると感じました。このレベルのカットは苦にしないところまで成長しているなど。
 カット主戦型は大きく中国系、韓国系、ロシア系の3つのタイプに分けられますが、ロシア系は小さいときから『カットは切れ』と教わってきてるので、ひたすら切ってきてナックルが少ない。なので、自分が打ったボールに対して、次も打てる選手であれば、ロシア系のカットは難しい相手ではありません。私も対戦相手としては好きでした。どうしていいかわからなくなったら、ツブ高のサイドにボールを送って全部切ってもらえば、下回転のボールしか返ってこないので攻略は難しくありません。一方、中国系カットは横回転を入れたり、ナックル性のボールを出したり、いろいろな変化をつけてきます。隙があったらフォアで攻撃もしてきます。その方がラケット面の感覚が狂うのでやりにくいですね。韓国系はバックサービスから浮いたら攻撃してあとはひたすらバックで粘るというタイプです。ですから、カット対策と一言で言っても、いろいろなカットに対しての準備が必要になってきますが、日本の選手はそのレベルもかなり上がってきていると感じました。


突如決まったコリアとの対戦だが分は日本にある

 明日は突如、コリアとの対戦が決まりました。北朝鮮のキム・ソンイは絶対に出てくるでしょう。あとは韓国の田志希でしょうか。キム・ソンイには石川がリオで負けていますが、そこからのレベルアップはかなりのものがあるので、明日はがっぷりよつの勝負になると思います。ただ、今の日本ならカットに対しては6対4、7対3で分はあるのではないのかと思います。
 今日の石川は自分でボールを選んで何でもできる張怡寧(元五輪金メダリスト)を思わせるカット打ちでした。苦手な選手の少ないカットの鉄人・金璟娥(韓国)がやりたくないと言っていた選手が張怡寧と高軍(元中国代表)でしたが、張怡寧のカット打ちは本当に自由自在でした。石川はそれに近づいてきていると思います。今の石川だったら、どんなカットに対してもどんと構えていて大丈夫だと思います。

 


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(写真=佐藤孝弘 文=猪瀬健治)

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