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元日本代表が世界卓球を語る「梅村礼の眼」 大会5日目

世界卓球2019ブダペストでも、昨年に続き、元全日本チャンピオン、日本代表にして、現在はTBE(タマス・バタフライ・ヨーロッパ)に勤務し、世界の卓球事情に通じた梅村ならではの眼で試合を解説する。
 波乱の続く男子シングルス、ここでは4回戦の安宰賢(韓国)対張本智和(日本)と馬龍(中国)対カルデラーノ(ブラジル)の2試合をピックアップしよう。

男子シングルス4回戦

安宰賢(韓国) 7,-3,8,7,-8,9 張本智和(日本)

 安宰賢は急激に伸びてきた選手で、日本人を得意にしていると聞いていましたが、それもうなずけるような試合内容でした。この試合では張本が固くなってしまったのに対して、安宰賢はのびのびとプレーしていました。安宰賢は1回戦で黄鎮廷を破っていますが、そういう勢いのある選手はトーナメントで当たるのは怖いものです。そうした状況もあって、張本君が少し受けに回ってしまったかなという気はしました。世界ランキングを見ても張本が4位、安宰賢が157位と大きな差があるので、張本の方が年下ではありますが、安宰賢は当たって砕けろという感じの思い切りのよさがありました。

 安宰賢は、普段、張本君がやっているようなバック対バックからバックストレートを攻めて相手を振り回すというプレーで先手を取ってきました。対する張本は自分が打ったバックハンドのボールが速い分、返ってきたボールに十分に間に合わずに対応できていないという場面がありました。
 また、安宰賢はコース取りもよく、張本はミドルを重点的に攻められるなど、フォアクロスに鋭角に打てないコースにボールを集められました。この試合を見る限り、プレーの幅が広い選手だと感じました。

 ドローが出たのが大会の直前ではありましたが、安宰賢はしっかりと「張本対策」をしてきたのではないでしょうか。張本に限らず、今の卓球は台について前陣で両ハンドでさばこうという傾向が強くなってきています。そうした高速化している卓球で大振りしていると、すぐに間に合わなくなるのですが、強力なフォアハンドを持つ安宰賢は、フォアハンドを打つときの距離の取り方が非常にうまかったですね。台に近すぎると台が邪魔になって、思い切りスイングするスペースがありません。前陣でフォアハンドを大きく振ろうとすると、詰まったり、上体がおきてしまったりしがちですが、安宰賢はフォアハンドを振るときの場所取りがよかったです。体は小さいですが、大きく振って決定打を打つだけのフィジカル(身体能力)もありますし、コースが読みにくいというのも安宰賢のフォアハンドドライブの特徴です。

 張本が実際にどのように考えていたのかはわかりませんが、中国選手がいないブロックに入ったことや勝ち進めば対戦する可能性があった許昕が負けたことが心理的に影響があったのかなと思う部分はあります。経験的にはトーナメントは組み合わせが厳しい方が、気持ちもプレーもしまっていくというか、いい方向に仕上がっていくものです。
 今大会のドローは強い選手や張本にとって苦手な選手が少ないという意味では悪いものではなかったと思いますが、「勝ち進みやすい組み合わせだ」と考えてしまうこと自体に落とし穴があります。「中国選手と当たるか当たらないか」ではなく、一試合一試合を確実に勝ち進んで行かなければならない、一試合でも負けたら終わりだという緊張感を持ってプレーしなくてはならないのがトーナメントです。
 本人が意識していなくとも、許昕が負けたり、樊振東が負けたりすると周囲の張本への期待は嫌でも高まってくるので、そうした雰囲気の影響をまったく受けないということも難しいでしょう。

 張本君はこれからも、自分に対して捨て身で向かってくる選手と対戦していかなければなりません。そういうポジションでの戦い方、気持ちの作り方を今後身に付けていく必要があると思います。

馬龍(中国) -8,8,1,3,8 カルデラーノ(ブラジル)

 カルデラーノにしか打てないようなすごいボールが1ゲーム目、2ゲーム目にはさく裂していたと思いますが、自分の距離でしっかり打てていましたし、馬龍が回転をかけてつないだボールも後ろからカウンターするなど、好プレーが目立ちました。調子もよかったですし、テクニックとタフさが身に付いてきて、台上も安定してきたので、面白い試合になるのではという期待をもって見ていました。

 しかし、3ゲーム目以降で、やはりというか、さすが中国選手と思わされる試合展開になりました。馬龍は1,2ゲーム目は様子を見ていたのでしょう。カルデラーノはいいプレーをたくさん見せてくれましたが、馬龍にしてみれば、それはカルデラーノのプレーの「引き出し」をすべて開けたようなものだったのではないでしょうか。
 ここにこういうボールを出すとこんなボールが返ってくるとか、このコースにこれくらいの回転のボールに対してはカウンターしてくる、あるいはそれよりも少しでも厳しければつないでくるなど、カルデラーノのプレーの様々なデータを読み取っていたのだと思います。カルデラーノは、序盤から全力でいくしかなかったでしょうから、しかたないとも思いますが、試合運びという面では、やはり、馬龍の方が1枚も2枚も上手だったかという印象です。

 3ゲーム目以降は、馬龍が台上をギリギリ出るか出ないかというボールをうまく使って、カルデラーノに強く打たせませんでした。ほぼ完全にシャットアウトしたと言っていいでしょう。馬龍はいかにカルデラーノにフルスイングをさせないかというところに重点を置いて試合を進めていたと思うので、後半はカルデラーノにしてみれば消化不良でしょう。自分らしいプレーを一つもさせてもらえなかったストレスは大きかったと思います。このような戦い方こそが、典型的な中国選手のものですね。
 技術的にはやはり馬龍の方が安定感はありました。パワーではカルデラーノも負けていませんでしたが、この1本はミスできないというボールを台にねじ込む力というのは馬龍の方が上でした。

 カルデラーノは台上のボールはチキータできるし、ハーフロングのボールに対してドライブするのもうまいのですが、中国のトップに対しては、今のボールではまだ甘いということですね。カルデラーノに限らず、豪快な一発のある選手に結構当てはまることだと思いますが、相手の両サイドをぶち抜くようなボールはあっても、ミドルに行くボールはほとんどない。しかし、ミドルが有効である場合は実際にはとても多いので、もっとミドルへのボールを使うことを覚えるとワンランクアップできると思います。カルデラーノが馬龍に手を封じられたように、カルデラーノも馬龍の手を封じることをもっと考えなくてはならなかったと思います。
 もっと馬龍がつないでくれるようなボールを探すと、カルデラーノの持っているオールマイティーな技術が生きて、試合の流れが変わってくるのではないかという気がします。カルデラーノのような選手がもっと伸びると卓球界全体が活性化すると思うので、ぜひがんばってもらいたいですね。


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なお、詳しい試合の結果は大会公式サイトでご確認ください。
ITTF(国際卓球連盟):https://www.ittf.com/tournament/5000/2019-world-championships/
2019 World Table Tennis Championships - Budapest:http://wttc2019.hu/

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