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水谷隼、全日本決勝を語る①【第1ゲーム】

 全日本史上に残る激戦になった、宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)対張本智和(木下グループ)の男子シングルス決勝。その攻防を、水谷隼(木下グループ)が解説するスペシャル企画をお届けする。
 勝敗を分けた局面における技術や戦術、二人の心境はどのようなものだったのか。
 全日本を10度制した水谷が、その圧倒的な分析力と説得力で、宇田と張本が繰り出し合った技や内面の駆け引きを鮮やかに読み解く。
 まず、試合前の予想と、試合の行方を占う第1ゲームの攻防の解説を紹介しよう。

宇田が素早い対応力に加え
運を味方につけて先行する

試合前は、張本の勝利が9割と予測

 張本は(戸上隼輔との)準決勝で苦しみましたが、決勝まで順当に勝ち上がってきたと思います。
 一方、宇田が決勝に来たことは意外でした。粗い卓球をするので、トーナメントでは勝ち上がりにくいスタイルだからです。
 試合前は、9割は張本が勝つと予想していました。実力や全日本決勝という舞台を踏まえると、明らかに「張本の方に分がある」と思いました。
(自分が出場しない全日本は)見るのもすごく緊張しましたし、すごくわくわくしました。選手たちの緊張感も伝わってきますし、自分ならここでこういうサービスをする、レシーブをするということを、いろいろ考えながら見ていましたね。

宇田 0-0 張本 張本がサービス、宇田がレシーブ
 決勝戦のラブオールは、それほど緊張しません。僕の場合は慣れもあると思いますが、1ゲーム目はものすごく大切なので、どのように1ゲーム目を取るかに集中しているからです。
 特に、スタートダッシュは重要なので、相手が最初に行ってくるであろうサービスやレシーブを想定して試合に入ります。

宇田 0-1 張本 張本が宇田の4球目ミスを誘い先制
 やはり1本目は大事ですね。どんな試合でも1本目を取らないと。
 特に、宇田は初めての決勝で、相手もすごい格上の選手なので、「早く1本が欲しい」と考えていると思います。

宇田 1-3 張本 宇田がフォア前へのサービスで張本のチキータのミスを誘い得点
 宇田はこの1点を取れたことで、1ゲーム目を取るチャンスが出てきました。0-3スタートは精神的にも厳しいですし、ここまでの3本はほとんど宇田の凡ミスというか、張本は何もしていない。
 このまま宇田が凡ミスを続けていたら、一気に張本のペースになっていました。

宇田 2-3 張本 宇田がフォア前に来たサービスをチキータで得点
 宇田のチキータは、序盤はすごく有効でした。終盤は張本の得点になることが多かったですが、序盤はすごくよかったと思います。
 宇田のチキータは威力があり、「回転量の多いチキータ」と「スピードが速いチキータ」の2種類があるので、それに対応するのに苦労します。そのため、宇田と対戦するときは基本的に、(宇田に)チキータをさせないサービスを出すことが一番です。

宇田 3-5 張本 張本がフォア前に来たサービスをチキータで得点
 宇田は最初から最後まで、張本にチキータされたときの展開はよくなかった。宇田は張本にチキータをさせないように、サービスを変えていかなければいけないですね。

宇田 5-6 張本 宇田が回り込み3球目攻撃からのフォアハンド連打で得点
 最後はほとんどこのラリーのような展開になりました。宇田は、「張本のフォア前へサービスを出して3球目を回り込んで点数を取る」という展開がものすごく増えますが、終始このプレーがよかったですね。

張本の戦術変化にすぐさま対応した宇田
これにより、張本の戦術の幅を狭めることに成功

宇田 6-7 張本 宇田がバック側に来たロングサービスをバックハンドドライブで得点
 宇田は、試合全体を通して、このラリーのように張本が変えてきたサービスに対してすぐにいいレシーブをしていました。そのことで、張本のサービスがほとんど宇田のフォア前に集まるようになり、宇田は張本の戦術の幅をかなり狭めることができましたね。それは、宇田が冴えていたこともありますし、しっかり返球できる技術力もあったからです。
 相手がサービスを変えてきた場合、回転やスピード、軌道が全然違うので、どうしても様子を見たくなりがちです。しかし、宇田が1本目のロングサービスを強打できたことによって、張本はロングサービスを出しにくくなりました。この対応によって、宇田は自分がチキータしやすい展開をつくることができました。

宇田 7-8 張本 宇田がバック側へのロングサービスから3球目フォアハンドドライブで得点
 宇田はサービスの配球を、いいタイミングで変えていました。
 フォア前に8割、バック側へのロングサービスが2割という割合でしたが、その二つを変えるタイミングが非常にうまかった。バック側にロングサービスを出したときはほとんど得点していましたし、そのことによって張本のチキータをうまく封じていました。

張本優位の流れを大きく変えた、宇田のネットイン

宇田 9-9 張本 宇田が劣勢のラリーからネットインで盛り返し、得点
 このポイントは、めちゃくちゃ大切でした。恐らく、このラリーが張本のポイントだったら、そのままこの試合は張本が持っていったと思います。
 お互いに1ゲーム目は絶対に取りたい中で、なおかつ張本は出足3-0でいいスタートを切り、9-8リードの場面ではいい3球目をしました。ところが、このアンラッキーなネットインで9-9になってしまいました。そのまま得点して10-8になるのとは雲泥の差です。
 張本からすると精神的に苦しい。この1本を張本が取っていたら勝っていたポイントだと思います。

宇田 9-10 張本 宇田がバック側へのロングサービスをミスし、張本が得点
 この場面でのサービスミスはもったいないですが、それでも狙いは全然悪くないと思います。

フォア前に来たサービスをストレートに狙って失敗した張本
このミスが終盤まで尾を引く

宇田 10-10 張本 宇田がフォア前への少し長めのサービスで得点
 張本は、宇田がフォア側に少し長めに出してきたサービスに対してストレート(左利きの宇田のフォア側)を狙いましたが、ストレートを狙ったのはこの場面と途中に1回、それから最終ゲームの9-9の場面と数回しかありません。この場面で張本がストレートへのレシーブを成功させておけば、最終ゲームの9-9でミスすることもなかったと思います。
 この1球が入らなかったために、張本は最後までこのミスを引きずってしまいました。
 この場面での張本は、何よりも「ミスしない」ことが重要でした。この前のラリーで宇田がサービスミスをして1点リードして、サービスも台から出てきて比較的チャンスだったので、それほど無理する必要はなかったと思います。
 とはいえ、ストレートが決まれば、ほぼ張本の得点になっていました。このミス以降、張本は、宇田がフォア前に出してきたサービスに対してストレートへレシーブできなくなり、手こずり続けることになります。

宇田 11-11 張本 宇田がループ気味の3球目バックハンドドライブで得点
 この時の張本は、自分が4球目で決めるというよりも、レシーブで相手を詰まらせたので「ミスしてくれ」という気持ちがあったと思います。
 そのため、本来の張本であればもっと厳しいバックハンドを打つのですが、入れにいこうとして、なおかつ対応できなかったので、らしくはないですね。ミスしたとしても、もっと強気で攻めてのミスならまだしも、あれだけ入れにいこうとして入らなかったので、それだけ(精神的に)ミス待ちになっていましたね。

●男子シングルス決勝

第1ゲーム 宇田幸矢 13-11 張本智和

展開は予断を許さないが、張本は精神的に余裕がなくなった

 この後の展開は、まだ読めませんね。お互いサービスに手こずっている印象があります。
 ただし、張本は出足3-0とリードしていて、最後9-8でアンラッキーなポイントがあって、余裕がなくなりました。本人としては、1ゲーム目を取って一気に勝負をつけようと思っていたはずでしょうから、こんなはずではないと感じていたと思います。


(まとめ=猪瀬健治 動画=小松賢)

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