1. 卓球レポート Top
  2. 大会
  3. 全日本卓球(一般・ジュニア)
  4. 2021年
  5. 2021年全日本卓球 梅村礼「及川はパワーに頼らないプレーを自分のものにしていった」

2021年全日本卓球 梅村礼「及川はパワーに頼らないプレーを自分のものにしていった」

 元全日本チャンピオン、日本代表にして、現在はTBE(タマス・バタフライ・ヨーロッパ)に勤務し、各国の選手をサポートする梅村礼(うめむら あや)。梅村は、ドイツ・ブンデスリーガでプレーする及川瑞基(木下グループ)の活躍を見守っていた一人だ。彼女から見たドイツでの及川、そして、その成長の様子はどのようなものだったのか。自身も海外での豊富なプレー経験を持つ梅村に聞いた。

 及川選手の全日本卓球男子シングルス優勝には正直、びっくりしました。準々決勝で張本選手(智和/木下グループ)に勝って面白くなったとは思っていましたが、今までは強い選手に勝っても、その後スムーズに勝ち上がれないことも多かった。及川選手の可能性は信じていましたが、決勝でも1対3から逆転して本当に優勝できたことにはびっくりしています。

 及川選手が専修大学に入ってからドイツ・ブンデスリーガのケーニヒスホーフェンに所属して、デュッセルドルフのナショナルトレーニングセンターを練習拠点にするようになってから、用具などの相談を受けるようになり、及川選手とよく話すようになりました。
 最初の頃は、及川選手は若手の選手と練習していましたが、次第にオフチャロフシュテーガー(ともにドイツ)などのトップ選手とも練習するようになっているのを頼もしく見ていました。トレーニングセンターのコーチであるヘルムート・ハンプルからは「及川は一生懸命練習するいい選手だ」と聞いていました。

 私は最初の頃は練習を邪魔しない程度に見て、時折ラケットやラバーを持っていったり、用具の相談に乗ったりしているだけでしたが、球出しをしてほしいという及川選手からの依頼があって、快諾したのを覚えています。おそらく、ゲストとしてドイツの選手やスタッフに頼みにくかったのと、細かい指示が出しにくかったなどの理由があったのだと思います。それからは技術や戦術についてのアドバイスもするようになりました。
 私は選手時代、日本人としてはパワーのある方でしたが、ブンデスリーガの選手としてこちらに来た時には並の選手になってしまいました。及川選手にも同じような悩みがあったのだと思います。ヨーロッパ選手を相手にパワーで勝負できない。そこで、距離感を変えたり、相手に強く打たせないことを意識したり、カウンターの技術を磨いたり、コース取りを考えたりと、さまざまな工夫をしていました。私もこちらでプレーするようになってからは同様の工夫をしていましたが、及川選手は特にこの点では長けていたと思います。
 ただ、勝負どころで、そうした工夫をプレーに出せるかどうか、そこが選手としては難しいところです。及川選手も最初は悩みながらやっている印象でしたが、シュテーガー選手など他の選手のプレーを見たり、自身も試合経験を積んでいくうちに、パワーに頼らないプレーを自分のものにしていったように見えました。

 また、2018-2019シーズンは及川選手がケーニヒスホーフェンのエースで、自分が2点取らないと勝てない、2点取っても勝てないことがあるくらいの厳しい条件の中でプレーしていましたが、2019-2020シーズンからは、バイエルン州のヒーローでもあるシュテーガーがチームに入って、及川選手も少しは気楽にプレーできるようになったと思います。
 心理的にも思い切りプレーできるようになった中で、試合経験をさらに積んで、持ち前のしぶとさを増していったように見えました。

 今大会は、コロナ禍の中で、試合以上に気を遣わなければいけないこともたくさんあったでしょう。ドイツでは、海外で生活する苦労や臨機応変さが求められる場面がたくさんあったと思います。そういう点では、日本ですべて完璧にセッティングされた中でプレーしてきた選手とは、対応力に差があったのも事実でしょう。今回、男子のベスト4は及川選手を含めて3人が海外リーグ経験者でした。海外でいろいろなタイプの選手と試合をして、プレー以外の面でもいろいろな経験を積んできた選手が勝ち残った大会だったのかと思います。

 また、用具に関して、及川選手はかなり早い段階からディグニクス09Cにトライしていました。回転がかけやすく、飛びすぎないディグニクス09Cは、及川選手のように前陣でさばくプレーに合っていると思います。サービス、レシーブで回転はかかるけど、使いこなすのは難しいと、使ってみた選手の話をよく聞きますが、及川選手はうまく使いこなして、自分のプレーの長所にしていきました。このラバーにしてから前陣でのカウンターもより攻撃的になったと思います。オフチャロフをはじめ、多くの選手が言っているように、微妙なラケット角度を気にせずに相手コートにねじ込めるという特長を生かしたプレーになりました。(※現在はフォア面にディグニクス09Cを使用)
 ボル(ドイツ)がそうでしたが、シュテーガーも両面ディグニクス09Cに変えてから、プレー位置が一歩前(卓球台寄り)になりました。及川選手もより前陣でのプレーに安定感と巧みさが増したと思います。

 及川選手がこちら(ドイツ)にいる時に、ドイツで経験を積んで、国際大会でも成績を出していこうという話をしていたので、今回の優勝がそのきっかけになってくれればと願っています。日本でも、邱建新さん(木下マイスター東京総監督)らからたくさんのことを学ぶことができると思うので、これからも成長のチャンスをつかんで、伸びていってくれると信じています。

(まとめ=卓球レポート)

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■大会の人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■大会の新着記事