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世界卓球2021ヒューストン 
宇田幸矢が振り返る世界卓球

熱戦の記憶も冷めやらない世界卓球2021ヒューストンで活躍したバタフライ・アドバイザリースタッフに焦点を当てて話を聞く本シリーズ。
今回は、戸上隼輔(明治大学)との初出場ペアで男子ダブルスで銅メダルを獲得した宇田幸矢(明治大学)に世界卓球を振り返ってもらった。

--初出場の世界卓球を振り返って、どのような大会でしたか?

 自分としては、それほど固くならずにプレーできたというのはありますが、今まで日本代表として出場してきたアジア選手権大会や世界ジュニア選手権大会に比べて、注目されているなという実感はありました。
 今は世界ランキングを上げるための大会に出場できる機会も少なくて、パリオリンピックの代表選考に世界ランキングが関係なくなったので、世界卓球に出場して、活躍するというのが一番の目標でした。ですから、選考会にかける思いも強かったし、それが選考会の好成績につながったのだと思います。
 その中で、アジア選手権大会でも男子ダブルスで優勝できて、試合前は自信はありました。自分の中ではフィジカルのコンディションを重視しているので、腰のけがで弱っていた下半身も強化し直して、それがプレーにも反映されてきていると感じていました。
 しかし、アメリカに着いた次の日の肩を痛めてしまって、試合までには間に合うと思っていましたが、実際には厳しかったですね。

--ドローの結果はどのように感じましたか?

 ドローが出たときに考えたのは、1回戦のダン(ダン・チウ/ドイツ)はもちろん強敵ですが、正直言って嫌な相手ではありませんでした。世界卓球ともなれば、このクラスの選手と1回戦で当たることは覚悟していました。2回戦で梁靖崑(中国)は早いと思いましたが、けがもしていたので、やれることをやろうという感じでした。
 男子ダブルスに関しては、中国ペアがいない山でしたし、3回戦で同士打ちでしたが、それ以外は組み合わせも悪くなかったので、チャンスがあると思いました。
 混合ダブルスは2回戦で同士打ちだったので、もう少し他の国のペアと対戦したかったというのはありますね。

--混合ダブルスからお話をうかがいたいと思います。

 芝田さん(芝田沙季/ミキハウス)とは初めてのペアで、短い期間と少ない練習で、思ったよりはお互いのいいところを出せるプレーはできたのかなと思います。張本智和(木下グループ)/早田ひな(日本生命)との同士打ちもチャンスはありましたが、勝負どころでペア歴の差が出ましたし、個人の力の差もあったかなと思います。
 今まで、木原(美悠/JOCエリートアカデミー・星槎)と組んだことはありましたが、久しぶりにミックスダブルスを組んで、男子ダブルスとは違う、ミックスならではの戦い方があると実感したので、次からの機会に生かしたいですね。

混合ダブルスは2回戦で同士打ちに屈したが、内容は悪くなかった


--銅メダルを獲得した男子ダブルスについてはいかがでしたか?


 男子ダブルスは2試合目(3回戦)で一番の山場である森薗さん(森薗政崇/BOBSON)と張本のペアとの同士打ちでした。練習では何回か試合して、ほとんど負けたことはありませんでしたが、練習ではこちらがいい形で得点できていたプレーにも相手は着いてくるだろうと予想していました。
 僕たちはそれほど極端な戦術は取らず、普通に入っていきましたが、森薗さんはいつもと違いましたね。気持ちも違うし、ボールの質も違うし、無理して攻めずにカウンター系のプレーで手堅く攻めてきて、戸上と「待たれてるよな」という話はしました。その相手の形を崩すのに少し時間がかかってしまいました。
 最後は無理して攻めずに、コースを突いたら4、5ゲーム目はこちらが主導権を握ることはできましたが、戦術としては相手の方が考えていたし、ゲームをリードしていたとは思いました。僕たちらしいプレーではありませんでしたが、我慢できたのが大きかったですね。

 4回戦のイングランドペア(ピッチフォード/ドリンコール)はやりづらさがありました。勢いもあって、台上からも積極的に仕掛けてくるので、待ちづらいというか、意外性のあるプレーも多くて、いいチキータが入ってもカウンターされたり、ピッチフォードがどっちに打ってくるかわからなかったり、予想以上にやりづらかったですね。
 2ゲーム目で10-4から逆転されたのは痛かったですね。3回戦ほど追い込まれたという感じはありませんでしたが、こちらの得意なラリーに持ち込む前にフリックやカウンターで先手を取られる場面もあって、こっちが受け身になってしまうと流れを持っていかれてしまうというプレッシャーはありました。
 僕がけがのせいでフォアを強く打てないというのもありましたが、戦術的には僕がストップして、戸上が決めるというパターンでなんとか得点できました。逆に、そこに集中できた分、ストップの精度も上がりましたし、ブロックもシングルスと違ってパートナーに頼れるダブルスだから勝てたのかなと思います。
 メダルが決まってホッとしましたし、うれしかったんですが、次の準決勝で肩が壊れないか不安もありました。同士打ちにも勝っていたので、絶対に自分たちが勝たないという責任もありましたし、自分の納得いくプレーもできずに、ベストなパフォーマンスができない中でのメダルは本当にホッとしました。

 準決勝の韓国ペア(‪張禹珍‬/林鐘勳)との対戦は、1回対戦している相手ならではの試合展開になったと思います。相手の韓国ペアはやることをしっかり徹底してきていましたね。アジア選手権の時も意外とストップを多用してきましたが、その時はこちらもストップが台から出ないように徹底して、こちらから仕掛けるという展開にできました。
 しかし、今回は3ゲーム目あたりから、相手のストップの方がしっかりしていたのと、僕のフォア前ストップだけでなく、バック側に流したボールにも林鐘勳は回り込んでねじ込んできたりして、すきがなかったですね。両ペアともストップ対ストップよりは大きいラリーの方が得意だったと思いますが、あえてそこでは勝負せずに、苦手なストップ対ストップの展開で上回られたというのが大きかったです。
 あと、アジア選手権大会の時は僕が後ろから距離を取ってフォアハンドで巻き返すフォアハンドがありましたが、けがのせいでそれができなかったので、そこは悔いが残る部分ではあります。

山場となった3回戦の同士打ちを乗り越えることで勢いに乗った


--初戦敗退に終わってしまいましたが、男子シングルスはいかがでしたか?


 実際の試合でどれくらいけがの影響があるかわからなかったので、そこは不安でしたが、始まってみると思った以上に痛みがあって思い切り振れませんでした。いろんなコースに来るボールを待って、不意にフォア側を突かれたときなどは、特に痛みがあって、そこでどう戦っていいか分からないまま終盤を迎えてしまいました。対応が遅れましたね。
 中盤くらいから、フォアは合わせるだけで、バックハンドでコースを突いて決めるという戦術に絞って、いい展開にできていたので、それがもう少し早くできていれば、結果はまた少し違ったかなとは思います。フォアハンドの引き合いでも普段だったら得点をできているような場面も相手に取られていたので、メンタル的にも切り替えが難しかったですね。得点パターンもいつもと違ったので、時間がかかってしまいました。4ゲーム目を取って、5ゲーム目も流れは悪くなかったので、立て直すのが早ければ、チャンスはあったかなと思っています。

 2年前(世界卓球2019ブダペスト)は自分も練習相手として帯同しましたが、実際に自分が試合をしてみるとイメージしていたのとは違いましたね。プレッシャーの重さ、1点の重み、自分の試合の振り返り方など、いろいろなところで違いましたね。
 もちろん対戦相手の気合いも違いましたし、普段は切れやすいヨーロッパ選手も粘り強くプレーしたり、普段はないような逆転をしたり、されたりというのもあって、怖さは感じました。リードしていても詰めるのが難しかったり、そういうところは今後より意識していかないといけないと思いましたね。

武器にしていたフォアハンドで得点ができないことの影響は大きかった


--今大会で得られたものと見つかった課題を教えてください。


 課題はやはりフォア前です。今まではストップを止める(2バウンド目を台から出さない)ことに執着していました。きっちり止めておけば強くは打たれないと思っていましたが、それだけではダメだと今回感じました。相手も対戦経験のあるトップ選手だと、しっかり止めたり、コースを突いても攻撃されてしまうという場面があって、もっと積極的に仕掛けないとだめですし、穴をなくして、戦術のバリエーションを増やす必要性を感じました。
 また、サービスの種類はもっと増やしたいと、他の選手の試合を見ていても思いました。種類もですが、工夫も必要だと感じました。

 収穫としては、今回けがをしたせいで決定打としてのフォアハンドがなかったおかげで、できることをやろうというつもりで、地道に点数を取ることを意識していました。できることが少ない分、例えば、バック側のボールに対して、回り込みという選択肢がなくなって、バックハンドで待ちに徹することで、精度が上がるという効果がありました。そういう点で、バックハンドの技術はよかったですし、待ち方という点では勉強にもなりました。
 総合的な出来としてはよくありませんでしたが、こういう戦い方もあるんだなというのは大きな発見でした。バックハンドで決めてもいいし、バックハンドで粘ってチャンスを作って、フォアハンドで決めるというやり方もあると再認識できました。
 今まではフォアハンドの決定力が増してきた分、できるだけフォアを使うことにこだわりすぎてて、全日本の優勝以来、両ハンドのバランスが崩れていました。むしろ高校生の時の方が、バランスがよかったので、今後は自信を持って、バックハンドもフォアハンドもつなぐボール、チャンスを作るボール、決めるボールともっとメリハリをつけてプレーすることを意識していきたいです。

故障を抱えながらも初出場の世界卓球でメダルを獲得したことは自信につなげてほしい

(取材/まとめ=卓球レポート)

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