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世界卓球2023ダーバン 高樹ミナのダーバン便り(7日目) 
早田が世界3位の王芸迪を撃破! 最強中国の一角を崩しメダル確定

 スポーツライターの高樹ミナ氏がダーバンから選手の声と現地の様子をお届けする本企画「高樹ミナのダーバン便り」。国内外で選手たちを間近で見続けてきた高樹氏の目に、大舞台でプレーする選手の姿はどのように映るのか。デイリーで配信中!
 今回は大会7日目は、王芸迪(中国)との激闘の末に女子シングルスのメダル獲得を決めた早田ひなの試合後の言葉から、早田のこれまでと今に迫る。

 世界卓球2023ダーバン(2023年世界選手権ダーバン大会ファイナル〔個人戦〕)7日目にはとんでもないドラマが待っていた。
 女子シングルス準々決勝に臨んだ早田ひな(日本生命)。世界ランキング10位の彼女が同3位の王芸迪(中国)と死闘を繰り広げ大勝利を挙げた。
 早田が中国人選手に勝ったのはこれが初めて。世界卓球の大舞台で念願の打倒中国と2017年デュッセルドルフ大会で銅メダルを獲得した平野美宇(木下グループ)以来、6年ぶりとなる女子シングルスのメダル獲得を決めた。

 ゲームオールにもつれ込んだ最終ゲームは8-10ビハインドから9回ものマッチポイントを経て、なんと21-19という前代未聞のスコアで中国の壁を打ち破った。
 叩いても叩いても壊れない鉄壁の牙城。「本当に分厚すぎて。この壁を超えてもまだ上にいるのかという現実も逆に突きつけられた」とヘトヘトになりながら達成感いっぱいで話す早田は、第1ゲームを4-11で落としてから第2ゲームを11-3、第3ゲームを11-9で奪い返した。

 しかし、第4ゲームを6-11で奪ったのは王芸迪。バック対バックの展開からの強烈なシュートドライブが早田を抜き去っていく。

 第5ゲームは競り合いを制した早田が11-9で取ったが、続く第6ゲームは早田の8-5リードから王芸迪が6連続得点で逆転。
 そして勝負の第7ゲームは前半をリードした早田が攻撃を仕掛けるか緩急で勝負するかで迷った間隙を王芸迪が突いて、8オールから先にマッチポイントを握った。
 崖っぷちに追い込まれた場面を早田はこう振り返る。

「自分が固くなってるなという感じがあって。自分の良さって攻撃力の中に緩急があるから(相手にとって)怖いのに、8-7のときに迷いながらレシーブしてミスしてしまった。でも逆に8-10になった瞬間に『いかなきゃダメだ!』と割り切って、そこからジュースになったときは我慢するか、いけるときはいくかで、そのタイミングや1球1球の選択がすごく難しかった」

熱戦の模様を物語るスコアシート。第7ゲームの欄には21と19の数字が書き込まれている



 9回にも及ぶマッチポイントを繰り返したタフな局面をどんな心境で戦っていたのだろう。

「もう目の前のことしかなかった。相手の雰囲気を感じながらずっとやっていたのでマッチポイントを取られている感覚はなかったですし、お互いマッチポイントを取られたらすごく冷静になって、目の前が見えているというか。どこを攻めてどこを繋いでいくか、攻めるコースとか、そういうことばかり考えていました」

 見ているこちらが神経をすり減らすような火花散るぶつかり合い。ポイントが決まるたびにスタンドが沸き、地元の観客から盛大な「ひな」コールも挙がった。
 なかなか決着がつかない緊迫の場面で驚くことに、コート上の2人は笑っているようにも見えた。

「本当に点数が取れないなと思いながら、最後はもう笑いそうになって、『どうしよー』みたいな。『もうやることないよー』って思いながら試合をしていました。多分お互いそうで、全てを出し尽くして、全てコース取りを分かっている状態で最後はどっちが入れるか、どっちが打つか、どこにどう打つかっていうだけの勝負だったので。長かったですけど、あの舞台を経験してすごく嬉しかったです」

 両者一歩も引かない、文字通りの死闘。そこに終止符を打ったのは早田が王芸迪のフォア側をノータッチで抜き去った渾身のバックハンドドライブだった。
「最後は完全に相手の逆を突いた。やっぱりああいうプレーが最後にあると相手の脅威になってくるんだなと思いました」

 10代から世界で活躍してきた同い年の平野美宇(木下グループ)と伊藤美誠(スターツ)の背中を追いかけて成長してきた早田。特に2人が日本代表に選ばれ、自身はリザーブで参加した東京2020オリンピックを境に世界で勝ちたいという思いがますます強くなった。
「東京オリンピックが終わってから中国選手に勝つためにやってきたことは間違っていなかった」と話す早田は、中国人選手に勝つまでの長かった道のりを振り返り、「もうやっと、本当にやっとだなって」と感慨深げだ。

「ずっと対中国で頑張ってきて、でもやっぱりシングルスで伊藤選手は(中国に)勝ったり平野選手も勝ったりしている中、私は勝つことが全くできなくて。周りからしても『早田は競るけど負ける』という評価になってしまう。それをどうしても超えたい気持ちが強くて、やっと超えられた。(勝った瞬間は)サポートしてくれた方々の顔が浮かんできて嬉しすぎた」

 だが、本人も言うように中国の層は厚く、超えなければならない選手がまだいる。
 5月27日、現地時間13時(日本時間20時)からの準決勝は世界ランキング1位の孫穎莎が相手だ。同じ時代に生まれた22歳のライバル同士が決勝進出をかけて激突する。

試合後のミックスゾーンで安堵の表情を見せた早田。つかの間の休息だ

(文=高樹ミナ)

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