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大矢英俊インタビュー 優しい野獣の静かな雄叫び

独特のフォームから繰り出す前陣両ハンドカウンターでトップレベルのプレーをキープし続ける大矢英俊。そのプレースタイルとガッツあふれるプレーから「野獣」の異名をとる個性派プレーヤーの側面も持つ大矢に、30歳を迎えた選手としての今、そして、これからの展望を聞いた。



若手にはまだ負けたくない
そのための秘策もある


「やはり、若いときと比べると変わりましたね」
今の選手としての目標を聞くと、大矢は開口一番こう答えた。
「もちろん今でも、誰よりも強くいたいし、現役を退くまでは絶対に負けない、選手としてももう一花咲かせて三十路プレーヤーの強さを見せてやりたいっていう思いはあります」
 そう語る「野獣」とはかけ離れた優しい物腰は、同級生の高木和卓とともに名門青森山田の中核を支えてきたジュニア時代から変わらない。全中、インターハイでは団体で6年連続優勝。シングルスでも全中優勝、インターハイ2位とエリート街道を進んできた。青森大学時代には全日本選手権大会で2年連続、表彰台にも上った。だが、変化の波は誰にも平等に訪れる。

「でも、昔と今では違う部分もでてきました。5年くらい前から、若い選手にも負けるようになってきて、今では若くて強い選手がゴロゴロ出てきた。彼らに勝つのは簡単ではないし、危機感を感じるようになってきたというのはあります。
 技術的な面でも、張本(智和/JOCエリートアカデミー)のバックハンドは、打球点の早さを追求してきた僕よりもボール1個分くらい打球点が早い。そこで勝負してさらに上回るのは厳しいなというのが正直なところです。
 でも、若手つぶしじゃないですが(笑)、強い若い選手にも『大矢には絶対に勝てない』って思わせてやりたいというのは今もあるし、実はそのための秘策もあるんですよ」
 技術的に自分よりも優れた若手が現れたということも、言葉を濁さずに話してくれるところに大矢の実直さを感じると同時に、茶目っ気たっぷりに「秘策がある」と明かす大矢には、やはりどこかに人を惹きつける面白さを感じる。

 しかし、一方で選手としてのゴールが見え始めていることも確かなのだろう。
「30歳になってからは、選手生活を終えてからの人生、セカンドライフについても考えるようになりました。選手を辞めても、やはり、卓球には携わっていきたいし、卓球界の発展に貢献していきたいと考えるようになりました。でも、今はまだ他の選手に卓球で負けたくないという気持ちが一番強いですね」




日本リーガーとして
もっと多くの人にプレーを見てほしい


「僕自身、日本リーガーとして10年やってきて、日本リーグと所属チームの東京アートには本当にお世話になってきました。
 日本リーガーとして今、一番強く思っているのは、もっと多くのお客さんに見ていただきたいということですね。プレーしている選手たちは盛り上がっているし、プレーのレベルも高い。だからこそ、もっと多くの方に見ていただきたいと思っている選手は僕以外にもたくさんいると思います。
 日本リーグの面白さは何といっても選手の多さだと思います。約140人も選手がいて、熱い選手もいれば、クールな選手もいて、一人一人の戦型や個性的なパフォーマンスも本当にバラエティーに富んでいて面白い。大企業の社員も学生も関係なく、みんなが卓球に打ち込んでいる場なんてそうそうないじゃないですか。
 背番号や、最終ゲーム6対6から、ダブルスは3ゲームスマッチなど、Tリーグに先駆けて、勝敗の行く方がわかりにくくなるようなエキサイティングな試合方式も4年前から採用していますし、見に来てくれたら絶対に面白いと思ってもらえる自信はあります」

2018年度後期日本卓球リーグ酒田大会の情報はこちら

 彼がこの10年を過ごしてきた日本リーグという場所は、彼を大きく育んでもくれた。
「個人的に成長できたという実感があるのは、日本リーグが団体戦だからです。学生時代もインターハイやインカレなど団体戦はありましたが、どちらかといえば当時は個人戦重視でやっていました。
 でも、東京アートに入ってからは、団体戦がメインになったので、自分だけが強くなってもチームが強くならなければ勝てない。だから、チームを強くする、総合力を上げることをすごく考えるようになりました。そこは社会人になって変わりました。大げさな言い方になるかもしれませんが、会社を背負って戦うっていうのはそういうことだと分かったんです。
 卓球以外でも社会人としての経験が積めたことで、厳しさも味わったし、行動にも気を配るようになりました。そういうところでも成長させてもらえたと感じています」




使い始めて11年目
辞めるまでこのラケットを使い続けたい


「このラケットは11年目ですね。このラケットのよさは何といっても、力いっぱい握れるということです。グリップはもとから少し細めのFL(フレア)ですが、さらに握ったときの指の形に磨り減って、手と一体化しているような感じです。卓球を辞めるまでこのラケットは使い続けるでしょうね」
当サイトの「ちょっと、それ貸して!!」でも、大矢のラケットを使ってみた高木和卓がその変形具合を強調していたが、グリップだけでなく、ブレード面も台上プレーでエッジが削れて片側だけが摩耗している。大矢自身が手と一体化していると言うように、10年以上の時を大矢とともに過ごしてきたこのラケットは、もはや、彼の体の一部のような存在なのかもしれない。

「このラケットの前は『ティモボル スピリット』(ALC搭載ラケット。現在の『ティモボル ALC』の前身)を使っていましたが、このラケットは当時の『水谷隼』をベースにした『ZLカーボン』を搭載したアウター仕様の特注ラケットです。2007年にスピードグルー(弾む接着剤)が禁止になったのに合わせて、より弾むラケットに変更しました。
 僕はプレーの速さ、特に打球点の早さ、ボールの初速を重視しているので、この弾みのよいラケットには満足しています。長く使っていると弾みが落ちてくるという選手もいますが、このラケットは全くそういうことはないですね。
 ラバーは以前は両面『テナジー64』を使っていましたが、プラスチックボールになってからは多少打球感が硬い『テナジー80』に変えました。『テナジー80』の方が回転もかけやすく威力のあるボールが打てるので、僕のプレーにすごい合っていると思います。
 トップ選手の中でも用具を頻繁に変える選手もいるが、大矢はその対極にいると言ってもいいだろう。1つのラケットを愛着を持って使い続ける、「野獣」という粗暴さの代名詞のような異名からはかけ離れた一面にも、大矢の隠れた魅力が感じ取れるのではないだろうか。
 そうした側面を念頭に、彼の激しい前陣速攻のプレーを見て、会場にこだまする雄叫びを聞くと、大矢英俊という選手が一段と深みと面白味を増して感じられるのではないだろうか。多くの卓球ファンの目に、この「優しい野獣」の渾身のプレーを焼き付けてほしい。


大矢英俊:https://www.butterfly.co.jp/players/detail/oya-hidetoshi.html


(インタビュー/文=佐藤孝弘)

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