1. 卓球レポート Top
  2. インタビュー
  3. 選手インタビュー
  4. 鬼頭明 × 橋津文彦 指導者対談① 女子の指導は難しい?

鬼頭明 × 橋津文彦 指導者対談① 
女子の指導は難しい?

「ちょっと、それ貸して‼️」のスピンオフ企画で一部ファンの熱狂的な(!?)支持を獲得した鬼頭明(愛知工業大学総監督)と橋津文彦(野田学園高校監督)。同級生として親密さを見せた2人だが、意外にも指導者としては先輩と後輩の間柄だという。
 岸川聖也(ファースト)に始まり、吉村真晴(名古屋ダイハツ)、戸上隼輔(明治大学)らを育て、長らく高校卓球界で大きな存在感を示し続けてきた橋津。そして、2013年、2015年にインカレ(全日本大学総合卓球選手権大会 団体の部)で愛知工業大学(男子)の優勝、2019年には総監督として初の男女アベック優勝を成し遂げた鬼頭。
 卓レポでは、現在では全国に名を馳せる指導者となった2人に「指導」をテーマに意見を交わしてもらった。
※この記事は2019年11月に取材した内容をまとめたものです

女子の指導は難しい?

橋津 明、最近、女子の監督やってるけど大丈夫?

鬼頭 大丈夫ってどういう意味だよ!(笑)

橋津 これまでずっと男子の指導してきて、いきなり女子の監督になって、インカレ優勝ってすごいなと思って。女子は男子とは違って難しいっていう話もよく聞くから。

鬼頭 ってよく言われるけど、俺は「女子だから」っていう理由で男子と何かを意識的に変えてるってことは、あんまりないかな。
 自分が初めて男子の指導を始めた時は、インカレでベスト16くらいのレベルだったから、技術的なことを教える機会が多かったんだよね。それで、橋津のところに練習に行かせてもらったり、いろいろ教えてもらったりしながら、だんだんチームが強くなってきたら、技術指導よりも、選手を力を伸ばすための環境づくりやマネジメントの方に力を入れるようになってきて、監督としての仕事は、そっちの方が主になってきてた。
 そういう流れで今回、女子の指導をすることになったから、選手のレベル的にもまた最初に戻ったというか、技術を教えることが先決になって、もちろん、新しい取り組みもあるけど、自分が現場で指導してるっていう充実感があって面白いね。
 選手も監督が変わって、初めのうちはみんな言うこと聞くしね。慣れてきたらどうか分からないけど(笑)

橋津 (2019年の)全日本団体(全日本卓球選手権大会 団体の部)で明の選手たちの試合見たけど、伸びしろがすごいいっぱいあるよね?

鬼頭 そうなんだよ。伸びしろがいっぱいあるから面白いのよ。どうにかしてこの選手たちを強くしたい、勝たせたいと思ったんだよね。教えることがありすぎて、今は練習時間が足りない。

橋津 いいね。充実してて。


最近の子は教えることがないくらいレベルが高いが......

鬼頭 橋津はずっと中高生男子の監督やってきて、当然経験も知識も増えてきただろうけど、どんなふうに変わってきてる?

橋津 俺はもう23年指導者やってるけど、12歳で中学校に入ってくる選手のレベルがむちゃくちゃ上がってきてるね。もう技術が出来上がってる。
 20年前だったら、名門校でも、バックハンド1本も入りませんとか、フォアハンドはスマッシュしか打てませんっていう選手がかなりいたんだけど、今の子は当たり前に両ハンド振れるし、チキータは普通にできちゃうし、教えることないんじゃないかっていうくらいみんなうまい。
 昔だったら、卓球場の人とか周りの大人に「右から左に体重を移して」とか「しっかり腰を使って」とか教えてもらってたと思うけど、今はスマホで世界のトップレベルのプレーを簡単に見ることができちゃう。そうなってくると、もう右脳教育なんだよね。

鬼頭 何それ?

橋津 言葉で理解する左脳教育じゃなくて、「映像を見る、まねする、できちゃう」みたいな理解の仕方(=右脳教育)が、日本のジュニアのレベルを一気に上げてるんだと思う。でも、シニアになるとこの右脳教育は難しくなるんだよね。

鬼頭 12歳の時点で技術を教えることが不要だったら、大学に入ってきた選手には何を教えればいいんだろう?

橋津 技術レベルは高くても精神的に幼い子は多いよ。選手としての経験はもちろん足りないし、メンタリティーや戦術も足りてない。だから、技術以外にも教えなきゃいけないことはたくさんある。あとは、けががすごく多いんだよね。
 子どもによっては小学校に入る前からすごい練習量をやってるじゃない。そうすると同じ動きを何万回、何十万回って繰り返してるから、腰だったり肩だったりのけがが多い。「これ以上やってはいけない」という制限をかけていかないと、最後まで持たないんじゃないかと思うことが多いね。

鬼頭 確かに、うちの子も卓球を始めて教室に通ってるんだけど、練習に行って、帰ってきて宿題して、夕食の時間も寝る時間も遅くなって、睡眠時間も少なくなることはある。始めたばかりでまだレベルの低いうちの子ですら結構大変だなと思うことがあるけど、全国でもトップの子たちは、小学生でもすごい時間まで練習してる子もいるよね。

橋津 たくさんいると思う。

鬼頭 食事も偏ったり、睡眠時間も十分に取れてなかったりして、体が十分に発育していかないままたくさん練習してたら、けがも増えそうだよね。

卓レポ けがの予防やケアはどうしてますか?

橋津 野田学園では、整形外科のドクターに定期的に診てもらっていて、特に、足に関しては、足型を確認してもらって、例えば、扁平足の子には足底板を作って矯正したりして、けがの予防に努めています。
 けがをした時は、まず病院で画像診断して、それから対処を考えるようにしています。復帰するまでの間は理学療法士の方に定期的に来てもらって、ストレッチングなどの指導をしてもらっていますね。
 こういうことをやっていかないと、気づかないうちにけがをしているというパターンも非常に多いんです。
 昔は私も、あそこの学校はどんな練習をしているとか、あの選手は何時間練習しているとか、そういうことを意識して、勝つためにはより長い時間練習しないといけないという感覚でやっていました。もちろん、中高生は強くなる上で長い練習時間を確保することが必要な時期ではあるけど、今は、練習時間の長さは気にしなくなりました。2時間しかできなければ、その2時間で最大限のことができればいいと思うようになりましたね。

鬼頭 大学生や社会人は週1で休みのところが多いよね。でも、自分の時もそうだったけど、中学・高校って普通はあんまり休みないじゃない? 正月と夏休みくらいで。練習時間を意識しなくなったとは言っても、相当やってるでしょ?

橋津 社会人でも体壊れるんじゃないかと思うくらいやってるところもあるから、チームによるのかな。
 僕は練習量は多ければ多いほどいいとは思わなくなったから、もっとたくさんやってる学校は多いと思う。中高生は身長が伸びる時期だから、骨が伸びて筋肉が硬くなる。そういう時期に練習をやりすぎるとけがをしやすいというリスクもあるしね。

鬼頭 そうしたら俺は考えが遅れてるかな。練習量を優先して決めているところがあるからね。だけど、選手のけがは今のとことないね。体と心の疲れはあるかもしれないけど、卓球ができなくなるほどのけがをする選手は今のところいない。大学生だから、体がある程度出来上がっているというのもあるだろうし、練習内容も関係あるかもしれない。
 女子は男子と違ってダイナミックな動きは少ないから、けがのリスクも少ないし、それほどラリーも続かない。練習時間は長くても、けがをするところまではやり込んでないかもしれない。
 でも、インカレで優勝して、他校からも注目されるし、関心も持たれる。どれくらい練習しているかも把握されちゃうだろうし、対策も立てられる。そうしたら、自分たちも今までと同じようにやっているだけでは同じ成績は残せないと思う。だから、練習時間にも敏感になっているところはあるかな。


(文/写真=卓球レポート編集部)

Recommendおすすめ記事

■インタビューの新着記事

■インタビューのカテゴリ一覧

Rankingランキング

■インタビューの人気記事