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インタビュー ネナード・バック [3] 世界の平和は1時間で実現する

 ピンポン・パーキンソンを立ち上げたネナード・バック氏の本業はミュージシャンだ。2011年3月24日、東日本大震災の発生から2週間もたっていなかった時、ネナード・バック氏は津波の被災者を援助すべくチャリティーコンサートを行っている。その時のことを尋ねると、ネナード・バック氏はさらりと答えた。

「あれは、ほんのささやかなことです」

 そして、こう言葉をつないだ。

「物事は、それぞれがばらばらに起こっているわけではなく、すべてつながっているのです。だから、リアクションをするということが大事なのです」

 現在はニューヨーク在住のネナード・バック氏は、もともとはクロアチア出身であり、内戦の時代を経験してきた。それゆえだろうか、活動の端々には、平和を希求するこんなフレーズが用いられている。

 World Peace in One Hour
 (世界の平和は1時間で実現する)

 ミュージシャンとして、ピンポン・パーキンソンの代表として、精力的に活動していく背景にも、このフレーズが関係しているではないだろうか。このフレーズについて尋ねてみた。

「なぜ戦争が起きるのだと思いますか。理由はひとつ。"お金"です。戦争は、世界で500人にとっては利益(お金)をもたらすものであり、残りの全員にとっては悲惨なものです。
 世界の年間軍事支出は1兆7,000億ドル。ロシアや中国を含めてG7またはG8諸国が軍事費を縮小することを決定して協定を結んだとしたら、1兆ドルものお金を社会やインフラ整備に回すことができます。
 現在の私たちは、1時間で世界平和を実現するために必要なものを、すでに手にしていると思います。例えば、ツイッターは1秒もせずに世界中を駆け巡ります。私たち皆が平和を願えば、もう、暴力を隠すことはできないのです」

「私は音楽を通じて、多くの人と出会って、話をしてきました。音楽は人の心を動かします。音楽、絵画、建築、詩、こうした芸術は人の心を動かし、永遠に残ります。日本の俳句も芸術ですね。また、スポーツも、人の心を動かします。スポーツは言葉に代わる普遍的なものであり、言葉が分からなくても、一緒にプレーすることができます。私はこれらを、世界の平和につなげていきたい」

 世界卓球2018ハルムスタッドにおけるプレゼンテーション、そこから引き起こされた第1回パーキンソン世界卓球選手権大会の開催決定、そして、パーキンソン病学会、生物医学会との連携。これらは「物事は、それぞれがばらばらに起こっているわけではなく、すべてつながっている」というネナード・バック氏の信条が、出来事となって表れてきたもののような気がする。だとすれば、スポーツが平和につながるというのも、いずれは......。

 最後に、現在のご自身の卓球ライフについて尋ねてみた。

「今回の来日では、京都で卓球の大会に参加してきました。東京でも、JPDA(全国パーキンソン病友の会)の有志の方々、港区のピンポンケア教室の方々から、とても心のこもった温かい歓迎をしていただきました。友人(日本人。卓球未経験)と一緒に足を運んだ六本木の展覧会(ユーモアてん。)の会場でも卓球をしてきました。
 普段は、週に何回か卓球をやっています。本当は毎日やりたいんです。やりたくて仕方がありません。8時間ぶっ続けだってやれますよ」

 茶目っ気が混じった優しい笑顔で言ったネナード・バック氏は、取材を終えた別れ際、こう言い添えた。

「実はこの後も、卓球をしに行くんです」

 この取材の翌日には、ネナード・バック氏は日本を発つことになっていた。
 ネナード・バック氏を知れば知るほど、その行動や考え方のスケールに圧倒される気がして、私は、こんな人物がいることを皆さんに伝えたいと願うとともに、はたして自分ごときにそれが可能だろうかと怯む気持ちにもなっていた。けれど、その卓球愛に触れて、そうだ、私たちは単に卓球が好きな仲間でもあるんだ、とも思った。
 卓球(スポーツ)は人の心を動かし、人と人を結ぶ。「卓球をしに行くんです」とわくわくしているネナード・バック氏の様子に、こちらまでうれしくなりながら、それを感じた気がした。

文・写真=川合綾子
取材協力=寺本能理子


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