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「作戦あれこれ」第19回 サービスのこころえ(2)

 試合でサービスを持ったとき、相手のレシーブの読みを読んでサービスを出すことが非常に大切なことはほとんどの人が知っていることである。とくに18オールとか19オールとかまたは緊迫したゲーム、力の差があまりないときはサービス、レシーブの読みが勝敗を左右することが多い。
 しかし相手も次に何を出してくるかと考えていることからサービスを読まれていきなり攻められることがよくある。
 たとえば今まで出したサービスのコース、サービスの変化から、次はバック側に深く出すロングサービスが効くだろうと思って出したサービスが相手に読まれていてバッククロスにいきなりスマッシュを打ち込まれたり、ストレートに強ドライブで打ち込まれる。
 フォア前に下切れのショートサービスが効くだろうと思って出したのを読まれてフォアに強く打たれ、相手のコートに入れるのがやっとの返球しかできなかったり、バック前に小さく止められて甘いコースへの変化のないツッツキで入れるのがやっとの返球しかできないとか、またはフォア側へ深く出すロングサービスが効くだろうと思って出したサービスを待たれていてストレートに打ち抜かれたり、クロスにサイドを切って打ち抜かれるということがよくある。そして勝負どころでこのように攻められたときは、試合に負けることが多いもので試合に出た人なら必ず経験していると思う。
 私も高3のときは(高2のときに幸運にもインターハイ3位になったことから、みんなから研究されたこともあるが)やはり相手のレシーブの読みから、どのサービスからの3球目攻撃が一番いいかを考える力がなくて何度も負けた。そして成績もガクンと落ち込んでしまった経験がある。
 だが、私は高3のときに「サービスのコースや変化を相手に読まれたとき、ねらったコースへサービスを出せなかったとき、3球目攻撃をすることはむずかしい。3球目攻撃をやりやすくするには第1球目のサービスで攻めなければならない」と身を持って体験できたことは、かえって幸運でその後の試合で大きく役立った。

 考えてサービスを出さないと力が発揮できない

 しかし最近、相手のレシーブの読みをよく考えて出している人が少なくなっているように感じる。先日行なわれた関東学生選手権大会を見ても、相手のレシーブの読みを読んでいないために待っているところに出して、レシーブから強く攻められたり、コートで2バウンドするストップレシーブをされて、3球目を封じられて先手、先手と攻められて負けている人が大勢いた。また私は、地方へコーチに行ったときに中、高校生徒試合をするが、そのようなサービスの出し方をする人が実に多い。そのために自分の持っているサービスを最大限に生かすことができないばかりか、自分の力が発揮できずに非常に損な戦い方をしていることが多い。

 読まれたサービスは、3球目攻撃がむずかしい

 では、相手を読んだいいサービスをするにはどうした良いだろうか。その前に、相手にサービスを読まれたときどのようなマイナスがあるかについて考えてみよう。
 主な点を上げると次のようなことだと思う。
 ①低く、変化の鋭いショートサービスや、威力のあるロングサービスを出したとしても、相手は十分な態勢でバウンドの頂点をとらえるので、強く払うにしてもストップするにしてもミスが少ない
 ②高い打球点を十分な態勢でとらえられた場合、強く打たれるのかバックに流されるのかストップされるのかインパクトの直前まで予測することはむずかしく、3球目に入る動作が止まり動きが大幅におくれるために3球目攻撃がむずかしいだけでなく相手のコートにさえ入れるのがむずかしくなりやすい
 ③相手は打球点のところまで早く動いた余裕から、コーナーに散らしてレシーブしてくるためサービス側は動く範囲が大きくなるために、3球目の攻撃がむずかしくなる
 ④サービスを持ったときというのは、ほとんど3球目攻撃をしようという態勢で待っているために、強く打たれた場合すばやく守りの態勢に切りかえることや、ストップレシーブに対してすばやくネットプレイの攻撃に切りかえることがむずかしく、5球目攻撃さえうまく結びつけることがむずかしい。とくにサービスを出したあとの構えは台の近くで構えていることが多く、カットマンが台に寄せられてたたかれるのと同じで、ボールが早く返ってくるために返球がむずかしい
 もちろん、読まれたサービスの全部がこのようになるとは限らない。だがレシーブのうまい人と対戦した場合、3球目攻撃が非常にむずかしくなる。
 しかしここでよく考えなければならないことは、ただ相手の逆さえつけばどんなサービスでも良いのかという疑問が残るが、そうではない。スピードと同時に回転の変化がなければいくら相手の逆をついても間に合って打ち込まれてしまう。まだそれよりも、相手の逆をつけなかったとしても、スピードのあるサービスや変化サービスで打たれないコースへ出す方がいいと思う。またいくら相手の逆をつくサービスを出したとしても、3球目以後のラリーに有利に結びつくものでなければいいサービスとはいえないし、大局的に見てもよくなければ、真のいいサービスとはいえないと思う。

 相手の弱点を中心にいろいろな変化で攻める

 次に、相手の読みの逆に、うまくサービスを出すにはどうしたいいか。いろいろな考え方があると思うが、私は次のようなことから出すサービスを決めていた。
 ①1本前、あるいはそれまで出したサービスの回転の変化、コースの変化、スピードの変化、モーションの変化などの得失点から相手の読みを考え出す。たとえばフォア前に鋭い後退回転を出して得点すると、相手は後退回転を警戒する。そこで次は同じように切ったと見せかけてあまり切らないサービスを出すとか、バックに深いロングサービスを出しコースで逆をつく。フォアにドライブ性ロングサービスを出して得点すると、相手はフォア側を警戒する。そこで次はバック前に小さく出す。しかしもう1本効きそうだと思ったときは続けて出す。バック側に深いロングサービスを出して得点したあとは、フォア側にスピードのあるロングサービスを出すなどの手をよく使った。
 しかし、得点しても相手のレシーブのタイミングがあっていたときは、まるっきり別なサービスにかえたりモーションをかえて出し、相手にレシーブ攻撃させないようにした。
 ②相手のレシーブの読みとフットワークのスピード対自分のサービスのスピードを計算して出す。たとえば強烈なドライブの持ち主にドライブ性ロングサービスを出すのは危ないが、相手の読みとフットワーク対自分のサービスのスピードを計算して強く打たれないな、または強く打たれても取れると思ったときは思い切ってロングサービスを出した。
 ③相手の性格やクセから考えて出す。たとえば派手な性格でいい格好したがる選手は、こちらのモーションに対して素早く動くことが多く、まともに出すと調子づくため逆モーションサービスで相手の逆をつくようにした。弱気な選手は、1本取られても同じようなレシーブをすることが多く、同じサービスを連続して出した
 ④誰にでも苦手なコース、苦手なサービスがあるが、その苦手を中心に左右、長短でゆさぶる

 サービスの配分がうまかった鍵本選手

 サービスのうまかった人の実例を上げると、前陣でショートと3球目ドライブでチャンスを作るのが得意だった鍵本選手(早大―荻村商事)。はじめて出た'67年ストックホルムの世界選手権の団体決勝のときであった。8番で絶好調の金昌虎選手に対して弱点である台上のレシーブを中心に、ときおりフォア側、バック側にスピードのあるロングサービスを使って、相手にサービスのコースを読ませずすばらしいサービスワークからの速攻でストレートで破った試合は見事だった。
 ふつうの選手なら、緊迫した一戦となると1本1本の勝敗にこだわるあまりインサイドのコースが単調になりやすいが、3本に1本ぐらいの割合でスピードのあるロングサービスを使う。それもショートサービスが効いているうちに早目、早めに使う、そして大事な場面では一番効いているサービスを使うという大局的なサービスの使い方だった。
 しかし、サービスの出し方の下手な人の試合を見ていると、私の高校時代のように相手を考えないで自分の一番3球目がやりやすいサービスばかり出している。ロングサービスを使う場合は、ショートサービスが効かなくなって苦しまぎれになったときに使うため、相手に読まれて効かない場合が多い。これではいくらサービスに威力があってもサービスが死んでしまう。
 人間である以上、1つの弱点を警戒するとその裏には必ずもう1つの弱点が生じるものである。それがどこであるかを考えて出すことである。

 相手を読み、ねらったコースに出し、最大限に生かす

 しかし、そのことが頭の中で分っていてもねらったところに出せないのでは、自分の考えたプレイができない。そのため試合前はやはりサービス練習が必要である。私は社会人になってから全日本選手権の前になると次のような独特な練習をした。
 それは、割れたボールや踏みつぶしたボールをフォア、バック、ミドル前の、ネットから30センチぐらい離れた位置とフォア、ミドルのエンドラインギリギリとバックサイドを切った位置にそれぞれ置いて、試合と同じ気持ち、同じサービスでねらい落とす練習である。
 私はこのボール落としを1日に30分~40分ぐらいやって、サービスのコントロールをつけたが、良くなってくるにつれて主に次のような効果がはっきりと表われた。
 ①自分の思ったサービスがねらったコースへ出せるようになって、相手のレシーブのコース、取り方が読みやすくなり、打球位置まで早く動け3球目の威力、安定性ともグーンとアップした
 ②たとえ相手にサービスを読まれても、変化のある低いサービス、スピードのあるロングサービスで大きくゆさぶることによって、レシーブからいきなり攻撃されることが少なくなった
 ③ねらったところに正確に出せる自信から、無駄な神経を使わないようになり、3球目の集中力が増し3球目攻撃がやりやすくなった
 ④ボールを落とすには集中力や呼吸、精神を整えなければ当てることはむずかしく、それによって高い集中力、サービスを構えたときのうまい間の取り方が養われ、落ち着いて3球目攻撃ができるようになった
 ⑤サービスから攻めることによって、時間の余裕ができ3球目攻撃がやりやすくなった。
 これらのことから、自分の持っているサービスから3球目攻撃を最大限に生かすことができ、得点力をグーンと増すことができた。また調子が悪かったときも、取り戻すことがよくできた。これは、もちろん基本技術やドライブの技術、体力などが安定していたからで、ふつうの人がやったからといってすぐに3球目攻撃がうまくなるとは限らない。だが、自分の持っているサービスを大きく生かして、3球目攻撃がやりやすくなることには間違いないと思う。
 私は、社会人になった年から全日本選手権で攻撃対攻撃では6年間無敗の記録を残すことができたが、それは偶然ではないと思う。サービス落としの練習からサービスにコントロールや集中力が養われたことから、自分のサービスを最大限に活用できるようになったことも大きな原動力となったように思う。
 もし、試合前にサービスの練習をやっていなかったとしたら、伊藤選手、河野選手、大屋選手、田阪選手、井上選手等の個性のある選手がそろっていたので、無敗の記録を残すことはできなかっただろう。
 サービスを出すときは、相手が警戒しているレシーブを読め!そして、大局的に考えて出すことは非常に大切なことである。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1976年9月号に掲載されたものです。

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