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「作戦あれこれ」第20回 サービスのこころえ(3)

 高校時代の私の一番嫌いなタイプは、左利きのロングの攻撃選手で大の苦手であった。高2、高3のインターハイ、大学1年の中部日本学生選手権、全日本学生選手権でいずれも負けたが、相手はみんな左利きのロングマンというようにほんとうに左利きが嫌いであった。
 では、なぜそんなに左に弱かったか。まず第1は、左利きの選手とやる練習量が足りなかったことだが、技術的にはいろいろある中で最大の原因は、左利きに対するサービスの工夫が足りなかったからだった。
 このころの私のサービスの出し方は、左利きの選手に対しても右利き選手のときと同じサービスの構えから30度ぐらいひねったサービスの出し方。これぐらいだと左利きの選手はサービスのモーションが見えやすくサービスのコース、種類が読みやすい。相手のバック前へカットサービスを出すとすると相手にバック前に出しますよ、バックへ深く出すとすると相手にバックへ深く出しますよ、またはフォアへ深くロングサービスを出すとするとフォアへ深く出しますよ、と教えて出しているようなもの。このような出し方では相手にレシーブから先手を取られ、後手後手にまわるもの当然であった。だが私は、左利きに弱い原因は、レシーブが下手だ、バックの回り込みのスピードがないからという第2、第3の原因ばかり考えなかなか左利きに強くなれなかった。

 逆モーションになるロングサービスを覚えて、3球目攻撃の得点が増す

 私が、左利きに対して強くなり始めたのは、大学1年の秋ごろである。
 左の練習相手がいなくて悩んでいたとき、東海学生No.1の力を持つ左腕の西飯選手(名商大)が8月の終わり頃から毎日のように愛工大に練習に来てくれ、大学の練習が終わってから毎日のように午前4時、5時頃まで40ゲームぐらいゲーム練習をしてもらったときである。常に本試合と同じ気持ちで試合をやった。
 ある日「自分のサービスは正直すぎて損だ。左に強くなるにはフォアへスピードのある逆モーションになるようなドライブ性ロングサービスが必要である。同じサービスを出すにしても、もっと体の使い方を工夫して相手にわかりにくいサービスを身につけなければダメだ」と強く感じた。
 それは、西飯選手のバックハンドサービスは背中がこちらに全部見えるほど大きくひねった形から、打球直前までストレートコースのバック側に出す構えと、ラケットを上から下へ斜め下回転のサービスの動きで、バックに来る感じであるが、インパクトの直前にラケットの角度をかえ、腰、上体を鋭くひねってフォアへ出す。ほんとうに、まったくといってよいほどコースが分らない逆モーションのドライブロングサービスである。スピードがあるために、少し出足が遅れたらノータッチで抜かれてしまうのでおいそれとバックに回り込めない。しかしツッツけば威力のあるドライブがある。回り込んで攻めようとするとフォアにくる。そのためにバック側に出されたサービスをツッツいたり、バックハンドで払ったりすることが多い。そのようなことから、もし自分にも同じように出せたら3球目がやりやすいと思ったのが動機だった。
 私は、西飯選手の逆モーションサービスを見よう見マネでやってみた。はじめはぎこちないサービスの出し方しかできなかったが、上達するにつれてやはり大きな効果が表われてきた。
 ①相手はいつフォアにロングサービスがくるかと強く警戒するために回り込みが難しく、バック側のサービスに対してツッツキやショート、バックハンドで返すことが多く、3球目攻撃が非常にやりやすくなった
 ②相手はツッツいて返すとドライブで攻められ不利な態勢になることから、無理なバックハンドや回り込みをするようになって相手のミスを誘うことができた
 ③サービスのときに確実に単が取れるようになったことから、レシーブに回ったときに何本取ればいいという計算が立ち、プレイに余裕ができ、思い切った攻撃ができるようになった
 ④相手のレシーブのコースが読みやすくなって、勝負どころで思い切った攻撃ができるようになった
 このように、逆モーションサービスの構えから出すことによって大きく変わった。また、はじめ40ゲームやると4、5ゲームの差で負けていた西飯選手に10日後ぐらいには逆に4、5ゲームの差で勝てるようになった。同じ年の12月の全日本選手権の決勝で、練習試合でも一度も勝てなかった木村選手に勝てたのも、高3のときには12、3本で負けたことのある李景光選手に翌年の6月日中対抗で雪辱を果たせたのも、逆モーションサービスによるところが大きかったように思う。
 私は大学1年のときにやっと逆モーションサービスを覚えたが、一流といわれるような選手達はほとんどの人が持っている。
 たとえば現日本チャンピオンで長く活躍している河野選手は、フォア前に出すときは長いサービスを出すモーションからフォア前へ、バックに速いロングサービスを出すときはフォア前に出すモーションから腰、上体をひねって出す。フォアハンドサービスをバック側へ出すときはフォア側にも出せるモーションからバックへ、フォアに出す場合はストレートに出すモーションからフォアへというように出す。
 サービスのうまい大関選手もそうである。フォア前に小さく出すモーションから、からだを強くひねってバックへ深く出すバックハンドサービス。その反対のフォア前に出すサービス。フォアハンドサービスもバック側に深く出すモーションから器用にフォア前とかフォアに速いロングサービスを出す。
 伊藤選手もフォア側に出すモーションからバックに曲がってくるカットサービスやドライブロングサービスがある。3人共3球目攻撃がうまいが、その秘けつは相手に分りにくい逆モーションサービスがいいからであると思う。それにフォアハンドサービスとバックハンドサービスに逆モーションサービスのいいものを持っているのが強みである。どちらか一方のサービスしか持っていないと3球目攻撃のチャンスが半分に減るし、慣れられたとき苦しく、長丁場の試合で不利になってします。河野選手、大関選手が長く活躍できているのも1つは両ハンドのサービスがあるからだと思う。

 注意点

 しかし、相手が頻繁(ひんぱん)にヤマをかけてくる選手であったり、相手のレシーブを読めたときは別だが、警戒もしていないのに大きな逆モーションサービスはできるだけしない方がいい。効果が低くなってかんじんなときに効かない。それよりも3球目攻撃がやりやすいところへ出して、警戒心を薄れさせておいて油断をしたときに逆モーションサービスを出した方が長く効きやすい。

 バックハンドサービスはストレートに出す態勢からが原則

 最後に逆モーションサービスの出し方だが、バックコーナーからバックハンドサービスを出す場合はインパクト直前までフォア側に出す構えから腰、上体をひねってバックに出す。バックコーナーからのフォアハンドサービスはインパクト直前までバック側に出す構えからフォア側に出す。フォアのコーナーからフォアハンドサービスを出す場合はバックに出すような態勢からフォアに出す。それは両方ともからだをよく使えて威力のあるサービスが出せるからである。サービスの出し方の原則でもある。もちろん原則であって、有利なラリー展開に持ち込むことができるならばどのようなサービスでも良い。
 いつでも逆モーションサービスが使える態勢から、いろいろなコースに出せるようになればロングマンであれば比較的どのようなタイプでも平均した力が出せるようになるだろう。また、勝負強い選手になれるだろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1976年11月号に掲載されたものです。

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