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「作戦あれこれ」第51回 高性能ラバーの上手な使い方(1)

 10数年前に日本にある一流卓球メーカーが、当時世界で一番強かった中国を打ち破るために裏ソフトラバーの改善をし、それまでの裏ソフトラバーより回転とスピードが一段と増すラバーを開発した。このあとも、いろいろと回戦とスピードが出るラバーが開発されているがふつうこの種のラバーを高性能ラバーといっている。
 この高性能ラバーは、初心者でも少しドライブの練習をすればよくかかるようになり、ドライブ選手向きのラバーである。他のメーカーもこのあとに同じような裏ソフトラバーを出した。
 その結果、高性能ラバーが開発された1年後に、高性能ラバーを使用したヨーロッパ選手が'71年の名古屋世界選手権大会の男子単と男子複の2種目に優勝。続く'73年のサラエボ大会では、男子団体、男子単、男子複、混合複の4種目に優勝。'75年カルカッタ大会では、男子単、女子単、男子複、混合複(男子選手が使用)の4種目に優勝。'77年のバーミンガム大会では女子単、混合複の2種目に優勝。そして今年の平壌大会では、男子団体、男子単、男子複の3種目で優勝した。つまり、名古屋の世界選手権以来全金メダル35個中、15個の金メダルを獲得した。中でも特にハンガリーの男子チームが中国を圧倒的な強さで2度も倒して平壌大会で優勝したのは見事だった。
 このような影響もあってドライブ選手で高性能ラバーを使う人が増え続け、最近ではほとんどのドライブ選手が高性能ラバーを使用しているようだ。
 私は現在、対戦するタイプによって現役時代に使用していた裏ソフトラバーと、高性能ラバーを貼ってある2本のラケットを使い分けているが、高性能ラバーはよく回転がかかりスピードも出るので切れたカットでも簡単に持ち上げることができカット打ちがものすごくやりやすくなった。だが、どの用具にも一長一短がある。高性能ラバーも例外ではない。用具を使うときに大事なことは、やはり長所を伸ばし短所を補って使うことだ。

 ストップレシーブから4球目攻撃

 私が高性能ラバーを使用してはじめて知ったのは、ストップレシーブがやりやすいことだ。使用したことがなかった現役時代は、高性能ラバーというのはよく飛ぶという意識から当然ストップレシーブがやりにくいと思っていたがやりやすいのにはびっくりした。もちろんこのときラケットの角度が大切だが、角度をだすだけでちょうどネット際に落ちる。これは、ラバーの反発力の高さと摩擦係数の高さがストップレシーブに適しているからだろう。
 以前に使っていた用具は、コントロールは抜群であったがやや摩擦係数とラバーの反発力が低かったため変化によって押しを加えなければならなかった。この押す力を間違えるとネットにひっかけたり、長くなったり、高く浮いたりしてむずかしかった。
 昨年ヨーロッパ選手権を見たが、ヨーロッパの男子はショートサービスを出されるとほとんどといってよいくらいストップレシーブで返していた。これは用具の特長を生かしたレシーブである。
 しかし、ストップレシーブだけがうまくても次の攻撃がうまくなければなんにもならない。ストップレシーブからの4球目ドライブ攻撃やスマッシュ、プッシュショート攻撃をマスターし、相手のストップレシーブに対してはもう1度ストップしてから攻撃する...などのことを覚えるのも良いだろう。

 鋭く払うレシーブを覚えよ

 しかし、いくらいいストップレシーブを覚えても、ストップレシーブしかできないと終盤になると慣れられて1発で打ち抜かれたり、ストップレシーブを逆に利用されてしまうことがある。
 そこで、ストップレシーブが重要な場面でもきくように鋭く払うレシーブを身につけるといい。できれば1発で打ち抜けるような鋭いレシーブがよい。それともう1つ、相手のバック側(左利きの選手と対戦したときはフォア側)に流すレシーブも必要だ。少なくともこの3種類のレシーブができなくてはいけない。なぜならば、3つのレシーブ技術を持っていると相手は非常にヤマがはりにくいからである。また、どんなに優秀な選手でも万能な動きというものはなかなかできない。左右の動きは良いが前への動きは悪いとか、バックの回り込みは良いがフォアへのとびつきは悪い、というように欠点がある。そこをつけば、なかなか余裕を持った3球目攻撃はできないものだ。
 それともう1つ。摩擦係数が高いだけにツッツキがよく切れる。インパクトの瞬間に手首を強く使って切るツッツキレシーブを覚えるとさらにレシーブ力が増すし相手をやりにくくさせることができる。

 すばやく動いてバウンドの頂点をとらえよ

 高性能ラバーでレシーブをするときは、特に鋭く払うレシーブと流すレシーブをするときに十分注意しなければならない。
 特に払うレシーブで注意することは、素早く動いてバウンドの頂点をとらえることだ。次にどちらかの足を軸足にして打つことだ。そしてもう1つは、インパクトの直後すぐにかぶせることである。
 その理由は、あまり飛ばない用具であればインパクトのときに下から斜め前にスイングすれば入るが、高性能ラバーはそうするとオーバーミスが出やすい。よく飛ぶだけにボールの横から水平打法に近いスイングで打たなければならないからである。
 それだけにスタートが非常に大事で、レシーブの反復練習をして早くスタートをきる練習や、バウンドの頂点まで一分の無駄もない足の運びとスイングを覚えることが必要である。1日にフォア、ミドル、バックへの短いサービスを払う練習を各150回づつ反復すれば1ヵ月でかなりできるようになると思う。

 ドライブレシーブにこだわるな

 それからレシーブのとき、もう1つ注意しなければならないことがある。高性能ラバーはドライブがかけやすいのでレシーブのときついドライブにこだわりやすい。が、絶対にドライブにたよってはいけない。ドライブで攻めようとすると、台上のサービスに対しては腕が下がり腰も落ちてただ相手のコートに返すだけのレシーブになってしまうからである。これは高性能ラバーを使っていない人にもよくあることで、攻撃選手は十分に気をつけなければならない。
 では、どのような心構えでレシーブに臨んだらよいか。やはり、相手の動きを見て返すことを基本とすることだ。すなわち、あまり大きなヤマを張らないことである。そうすれば、台上のボールが来たときはラケットがコートの下に落ちたり腰が落ちたりしないし、ロングサービスが来たときにつまるようなことも少なくなる。また、足の動きも腕の動きも無駄のない働きをすることができ、バウンドの頂点をとらえることができる。
 だからといってレシーブをする前、相手のサービスを全然考えなくていいかというとそうではない。やはり一瞬の間に正確な判断をするには、事前に次のレシーブを想定しておかなければならない。レシーブの構えに入る前に「あの変化サービスがきたときはこのレシーブで返す。あのサービスならこう」としっかりと考えておくことが大事だ。打球点が大事なだけにこの目に見えない部分が勝負ともいえる。
 しかし、台上、台外にかかわりなく良いレシーブをするには普段からかなりレシーブ練習に時間をとって積み重ね自信をつけておかなければできない。ドライブにこだわったり台上のボールを両サイドに払えないときはレシーブ練習不足のときで要注意だ。

 「レシーブのときは2本取ればいい」という気持ちを徹底させる

 それから、レシーブのときの心構えだが5本とも全部得点しようとすると消極的なレシーブになってかえって相手に先手をとられてしまう。また、固くなってしまうので相手のサービスが切れているかどうかわからなくなりレシーブが狂いやすい。そのために自分の卓球ができなくなったりする。
 やはり、自分の卓球をするには、最後まで積極的にやらなければならない。それは常に積極的にできるように考えてやる必要がある。このとき相手のサービスが下手で確実に5本取れるのであれば問題ないが、サービスとサービスからの3球目攻撃がうまい選手と対戦したときは、どのようなレシーブをしたらいいかしっかり考えなければならない。
 このとき、人によっては5本全部取るという気持ちで臨んだ方がいい人もいるかもしれないが、私の経験ではサービスのうまい選手と対戦したときは「5本のうち2本取ればいいんだ」という気持ちで臨んだときの方がうまくいった。2本でいいと思うとものすごく積極的にでき、逆に大事にボールを扱え、高性能ラバーに変えてもいいレシーブができている原因になっていると思う。
 私は、長い経験からレシーブのときはこのような考えで臨んでいるが、どのような考えでもいいからいいレシーブ、自分の得意な攻撃に結びつけられるようにすることである。

 フットワークを鍛え、パワードライブによる連続攻撃をしよう

 高性能ラバーの一番の特徴は、何といってもパワー(回転とスピード)が出ることである。
 この特長をフルに発揮して今春の平壌大会ではハンガリーの男子チームが予選リーグと決勝で2度も中国を倒して27年ぶりに団体優勝した。それと日本の小野選手が男子シングルスに優勝して卓球日本を救った。
 小野選手は、日本式フットワークを生かしたドライブ攻撃からのスマッシュ。ハンガリーは、シェークハンドグリップの特長を生かした両ハンド・ドライブ攻撃からのスマッシュで、中国の速攻とカットを打ち破った。もしこの4人が高性能ラバーの特長を考えずにショートやツッツキを多く使ったプレイをしていたら、ハンガリーの団体優勝も小野選手の優勝もあり得なかっただろう。
 しかし、彼らのような豪快なパワードライブを身につけるには、手先で打っていたなら20年練習しても30年練習しても無理である。シェークハンドグリップの人もペンホルダーグリップの人も基本打法を身につけて、からだ全体で打つようにすることだ。
 基本打法の悪い例で、ドライブをかけるときにスタンスが狭かったり、腕だけで打ったり、脇が甘かったり、腰高だったり、腰を使ってなかったり...する人がいる。これではドライブをかけるときにからだ全体を使って打つことができず、パワードライブがいつまでたってもマスターできない。それにドライブが入っても次のスマッシュは決まらない。
 ドライブと基本打法とは、並行してやっていくのがよいと思う。できるだけ早くスマッシュが打てるように、基本練習のときスタンスは肩幅の1.2倍から1.5倍とってしっかりと下半身を安定させ、上体を前に傾かせた前傾姿勢→前傾姿勢を保ちながら腰、上体をひねる→腰を鋭くひねった瞬間にボールを打つ(このとき右利きの選手なら右足から左足に重心を移動させる)→振り切ったラケットの位置はだいたい眉付近に持っていく。
 バックスイングのときの脇は、腕が横脇に軽くつくようにして打つ。バックスイングで左肩を少し内側に入れて打つ。フォロースルーでフリーハンドは肘を少し前に出すようにする。といったことなどを守って打つと、ドライブもスマッシュも自然と良くなる。
 それから、連続攻撃するにはフットワークが早くなければならない。それにドライブ及びフォアバックの切り替えのフットワーク、フォアハンドだけで動くフットワーク、プッシュ、またはショートで回してもらうフットワーク練習などをできるだけ多くやることが一流になる近道だろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1979年11月号に掲載されたものです。

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