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「作戦あれこれ」第72回 異質ラバー作戦⑧ 片面表ソフトシェーク型と対戦した場合

 '81年全日本選手権大会でも、予想通り異質ラバーを使用した選手が大活躍をした。
 とくに目立ったのは、フォア側に裏ソフトラバー、バック側に表ソフトラバー使用のシェーク前陣攻守型だ。前年度大活躍をしたアンチカットマンは、ロングマンがアンチのカットに慣れてきたことと、アンチカットの研究が進んで攻め方がうまくなってきたことからふるわなかった。とはいうものの、アンチカットマンは紙一重の差で負けた試合が多く、今後ラバーだけにたよらず守備力と攻撃技術の強化をしてきたならば、再びアンチカットマンが巻き返す可能性が強い。ロングマンはアンチのカットが慣れたからといってアンチ対策を怠ってはならない。
 アンチカットマンにかわって目立った活躍をしたのがバック側表ソフトのシェーク異質攻撃型だ。男子シングルスで3位に入賞した笠原選手(近畿大)、大学1年ながらベスト16に入った佐藤選手(明治大)、ジュニア男子決勝を争った左腕の池田選手(鹿児島実)、田村選手(徳島)、女子ジュニアで3位に入賞した広川選手(京浜女商)、その外、カデット男子にもたくさん同じスタイルの選手がいた。どの層にも増えてきたといえる。
 最近このスタイルの選手が増えてきた理由は、ヨーロッパ選手とちがって身長の低い日本人の体格に適している戦型とみんなが考えているからだろうと思う。
 もしヨーロッパ選手のようなバックハンドドライブをかけようとしたならば打球点が腹の前あたりになることから、背の低い選手はコートから離れなければかけられない。また、かなりの腕力や手首の強さ、下半身の強さも要求される。となると体力のない選手にはなかなかむずかしいものだ。もちろん、オーロスキー(チェコ)、ベンクソン(スウェーデン)、中国の施之皓、王会元選手など、日本人に近い体格の選手が世界で活躍していること―むしろ両ハンドドライブ型よりも―大きな影響を与えていると思う。
 バック面に表ソフトを使用した場合、コートから離れて威力のあるバックハンドを打つことはむずかしいが、台上のバックハンド、ハーフボレ―、バックハンドスマッシュ、ナックルショートなど多彩な攻撃ができやすい。また、フォア側の裏ソフトと球質が違うことから相手がやりにくい。日本ではもちろん、世界でも今後このようなシェーク攻撃型が増えるだろう。そこで今回は、バック面表ソフト攻撃の異質ラバー型と対戦したときはどのような点に注意したらよいかを考えてみたい。

 バックが強い表ソフトシェーク攻撃型

 この戦型の選手と対戦すると次の4つのことを感じるだろう。1つは一様に攻めが速いこと。表ソフトを使用している選手は、コートから離れると弱いため、ショートやハーフボレ―ができる位置で攻撃しようとしてくるため前でタイミング早く打たれるからである。
 2つ目は、表ソフトは裏ソフトラバーに比べて回転に鈍感であることから、台上のバックハンド、ハーフボレ―、ブロックショートがうまい。またタイミングを早く打球するので打ったボールがすぐ返ってきてやりにくい。
 3つ目は、フォアハンドは前進回転のかかった伸びてくるボールが多く、バック系のボールは伸びずに止まる。そのためタイミングが合わない。
 4つ目は、ツッツキの変化。裏ソフト側でツッツいたときは切れているが、表ソフト側でツッツいてきたときはナックル気味に速く飛んでくる。
 こういった攻めやボールの変化に対処できない選手は表ソフト使用のシェーク攻撃型には勝てない。

 無駄なからだの動きを極力少なくせよ

 バック面表ソフトのシェーク攻撃型と対戦した場合にまず大切なことは「無駄なからだの動きを極力少なくせよ」ということだ。このことは私が前陣型と対戦したときに特に注意していたことである。
 「無駄なからだの動きを少なくせよ」ということは「動くな」ということではなく、自分のからだを無駄なく、無理なく、上手に使うことだ。つまり、打球前の構え、動く途中のからだの使い方(足の運び、前傾姿勢)、インパクトからもどりまでを正確にやることだ。
 悪い例には次のようなものがある。たとえば、サービスを出したあと膝が伸びすぎていたり、からだが立ち過ぎていたり、脇が甘かったりする姿勢で構えているとスタートが遅れて体を十分使えない。あるいはドライブで攻めたときも打球後のもどりが悪いと、やはり次の攻撃がうまくできない。このような選手だと結局はからだが伸びきっているときに打たれて勝てない。

 打球後はからだを小さくして待て

 では無駄のない構え、打球後、次に返ってくるボールに対して最高のプレーができる構えにするためには、どのようにしたらよいだろうか。それには次のことに注意する必要がある。
 たとえば、ドライブで攻めるためにカットサービスを出した場合、そのときはどこに返されてもすぐ動けるようにつま先立ちになって膝を曲げ、背中を丸めた前傾姿勢をとる。そして脇をしめて小さく構える。3球目スマッシュを狙うときは、ドライブで攻めるときよりも腰をほんの少し上げ、ラケットも少し高めに構える...というように、狙った作戦が一番しやすいように素早く構えることだ。そして、姿勢を崩さないようにしながら素早く動いて打つ。
 このようにして打てば威力のあるボールを何本も続けて打てる。また速く動ける。速攻型や片面表ソフトシェーク型とやったときに、このように構えることに注意すると威力のあるボールや素早い動きができてきっといい試合ができるだろう。

 フォア前とバックに深いカットサービスで激しくゆさぶり、ミドルへ3球目攻撃

 次に大切なことはサービスの出し方だ。サービスを持ったとき、よく考えて出さないと相手にレシーブから攻撃されて勝てない。
 このようなタイプとやったとき、攻撃型の選手が一番攻めやすいと思われるレシーブは、つまりながらバックハンドで返してくるレシーブと、ミドルに深く出したサービスをつまりながらフォアハンドか、ショートで返してくる威力のないレシーブだ。このレシーブをボールをよく引きつけて、ミドルやフォアに強ドライブやスマッシュを浴びせると得点できる。
 つまりこういったレシーブのくるサービスを出せばよい。それには、フォア前とバック深く(またはミドル深く)にカットサービスを出して激しくゆさぶることだ。そして、それを中心にバックに回り込ませないように、フォアへのドライブロングサービスをときどき使う。またバックへのドライブロングサービスも混ぜて相手の足の動きを止めるとなおよい。
 このときの注意点としては、まず相手にコースを読まれないように出すこと。バックスイングやフォロースルーをゆっくりとって出すとコースを読まれる。振りを速くしてパッと出す。もしくは、ゆっくりした同じバックスイングから急にパッと素早く出すというようにして、コースを読ませないように工夫しよう。
 このようにして相手の読みの逆をつくようにサービスを出せば、相手は足の動きが止まって甘いバックハンドや甘いミドル処理をしてくる。あるいは、フォア前へのスタートが遅れて、やっとの思いで甘いレシーブで返してくる。それを3球目で思い切って攻めよう。表ソフト使用のシェーク攻撃型に勝つには、こういったサービスの練習を十分にやることが必要だ。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1982年2月号に掲載されたものです。

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