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「作戦あれこれ」第78回 表ソフト攻撃型と対戦した場合①

 つい先日行なわれた関東学生選手権で、日大1年生の表ソフト前陣攻撃型の三浦選手が大当たりをして、あれよあれよという間に準決勝に勝ち進んだ。男子も永福選手(大正大、'78年インターハイNo.1)、糠塚選手(明大、'80年学生No.1)が安定した力で上位に進出した。
 今春、京都であった全国高校選抜大会(団体戦)では、男子の青森商高を筆頭に男女とも表ソフト速攻型がいるチームが大活躍。中学の全国大会でもここ数年、表ソフトの選手が上位入賞する傾向にある。全日本では嶋内選手(三井銀行)が優勝、坂本選手(日産自動車)が決勝進出、井上選手(青卓会)が3位と上位に進出している。世界大会でもシングルスの優勝者こそ、男子はドライブの郭躍華選手、女子はカットの童玲選手であったが、男子団体においては左腕表ソフト速攻の謝賽克選手が世界の強豪を次々と倒し、全勝して中国団体優勝の立役者となった。中国では「表ソフト速攻型」を中心に育てるという考えでやっているし、このような表ソフト攻撃型の活躍から日本でも表ソフト攻撃プレーが徐々に見直され、少しずつ速攻選手が増えてきている傾向にある。
 私の現役時代、日本には河野選手('77年世界単No.1)、田阪選手('69年世界単3位)、今野選手('73年3A大会単No.1)、中国には郗恩庭('73年世界単No.1、'71年名古屋大会後裏ソフトに転向)、李景光('71年世界団体No.1)、李振恃('81年世界複No.1)等の世界的な強豪がいた。そして、それ以前には、荘則棟('61、'63、'65年世界単No.1)、李富栄('61、'63、'65年世界単No.2現在中国男子監督)、徐寅生('65年世界複No.1)、周蘭蓀('65年世界単3位)らの名選手がいた。
 私は、彼等とも何度か対戦したことがあるが、当時はまだ愛工大の低学年のときでまだネットプレーやバックハンド技術、それに戦術が未熟だったために、荘則棟、周蘭蓀には惨敗を喫した。
 だが、'67年以後、「同世代の中国選手に負けてたまるか!」という強い信念から「表ソフト前陣攻守型の弱点はどこか、どんな戦術をとったら勝てるか」を必死に研究し練習をした。そのおかげで、'71年~'74年の4年間は中国選手にはあまり負けたことがなかった。
 地区で、県で、全国大会で表ソフト速攻選手に苦戦している選手のために、同時に速攻選手のためにも、私が体験した対表ソフト前陣攻守型の戦法を述べよう。

 表ソフト攻撃型と練習を積むことが大事

 戦術を考える前に、まずなんといっても大切なのは、ドライブ主戦の選手でも、カット主戦の選手でも表ソフト攻撃型と練習をして、速い攻め、表ソフトの球質に慣れることだ。表ソフトと練習しないで表ソフトに強くなることは、まずできない。
 私が対表ソフト攻撃の練習を本格的にやりはじめたのは「打倒中国」をめざした大学1年からだが、その頃の私は、表ソフトの選手を相手に猛練習を積んだ。そして、次のことを知ることができた。これがその後、表ソフト前陣攻撃型とやるときにものすごく役だった。
■ナックル性ショートとプッシュ
 私は、シェークハンドのドライブ主戦タイプで、ドライブを使うことが多かったが、それをショートされたときの球質はナックル性(無回転。ふつうのショートはやや前進回転がかかっている)で、ラケットに軽く当てただけでは、ネットミスをしてしまうことが多かった。だからボールのところまで素早く動き、からだに引きつけてミートを強くして打ち返すこと。―それと、プッシュショートにそなえ、ドライブをかけたあとは、早く戻ることが大切である。
■切れないツッツキと切れたツッツキ
 表ソフトがふつうにツッツいたボールは、切れているようであまり切れていない。そのため、裏ソフトと同じ感覚でドライブをかけるとオーバーミスをしてしまう。だから、かぶせ気味にしてドライブをかける。しかし、ラケットを縦にしてコートをえぐるように鋭くツッツいたときは切れるので注意する。
■もどりを早く
 表ソフト攻撃型はピッチが早い。そのため打球後のもどりが遅いと次の攻撃が間に合わない。常に早くもどることを心がける。
■前後にしっかり動く
 前陣攻撃型の基本的な戦術は、ショートサービスを出したときには3球目強打。ロングサービスを出したときは、3球目強打とナックルショートで動かして次をスマッシュ。また、ドライブ型が中陣でドライブをかけた場合は、ストップショートで前に寄せてからスマッシュ...というように、いきなりの速攻とコートに寄せてから叩く戦術を中心に使う。そのため、前後の攻めに神経を配り前後に素早く動く。
 そのほか、弱気になってはダメだ。常に強気で戦う...という試合の心構えが大切なことが分かったこともすごくためになった。

 対表ソフト前陣攻守型の試合は戦術が大切

 しかし、表ソフト前陣攻守型と練習をしてピッチの速さとボールに慣れ、対前陣攻撃用の技術をマスターしても、試合で相手に先手先手と攻められてはなかなか勝てないものだ。表ソフトに勝つには、まず対表ソフトの戦術を研究することが、どうしても必要になる。
 さて、その試合での作戦、戦術だが「表ソフト攻撃型には、こうすれば必ずすぐ勝てる」という特効薬的な戦術はない。表ソフト攻撃型にもいろいろなタイプがいるしドライブマンにもいろいろなタイプがいるからだ。表ソフトの選手もいろいろ研究している。しかし、表ソフトの選手には共通の弱点もある。だから自分の卓球にあった対前陣攻守型の戦術を研究し、試合ではそれを応用しなければならない。

 河野、李振恃型はフォアを攻めてからバック

 たとえば、私は現役時代に好敵手であった河野選手と戦ったとき、次のような戦術をとった。
 河野選手と私が初めて対戦したのは、大学1年の夏の大学対抗であった。私はこのとき2ゲーム目の終盤10本近く離されていたのを粘りに粘って大逆転勝ちしてストレートで倒した。しかし、このとき私は「非常に強い。ちょっとでも油断をしたら負ける相手だ」と恐怖感すら覚えた。
 そのため、彼のプレーを試合後にじっくり分析した。彼は前陣でバウンドの頂点、あるいは頂点前を打つストレート攻撃がすばらしい。バック前のレシーブは、払うのも、ストップも絶妙な技術だ。また、サービスからの3球目攻撃も鋭い選手だ、と彼の長所を頭にたたき込んだ。
 その反面、まず第一に、ネットスレスレに低いツッツキをフォアコーナーに強く切って送ったときは、強打できない。威力のないドライブでしか攻めてこない。そしてそれをドライブで攻め返すと、次を打とうとしているので守れない。
 第二に、レシーブするとき、打球する前にボールをしっかりためてから左右に払うと、スタートが遅れて攻撃ミスが出る。
 第三に、フォア側に威力のあるドライブで連続して攻めると腰が浮き気味になり、フォアハンド攻撃にミスがでる。
 第四に、フォア前の下切れサービスが強く払えない。ストップレシーブをするとコートからわずかに1バウンドで出る。それを思い切り回転をかけたドライブで攻めると守るショートにミスが出る。
 第五に、彼のレシーブの構えは、バックコーナーから1.7メートルぐらいうしろに離れて構えていた。そして、相手がサービスのモーションをおこすと前にササッと出てきてタイミングを合わせてレシーブしていた。だからスーッと出すとタイミングが合ってよいレシーブをされてしまうが、サービスのモーションを途中で止めたり、速く出したりしてタイミングを変えると、彼の足はコートの前で止まりリズムが狂ってレシーブが甘くなった。したがって、リズムを狂わすようにサービスを出す。
 第六に、長いラリーになると、彼の方が先に焦りミスが出る。
第七に、私が十分な体勢で打てるときにスピードに変化をつけると、攻撃のタイミングが狂いミスが出る。
 第八に、ロビング打ちに難がある。
...など、彼と再び対戦したときに負けないように自分の脳裏に相手の長所を深く焼きつけた。
 そして、秋の東日本学生、12月の全日本で再度対戦したときに私は次のような戦法をとった。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1982年8月号に掲載されたものです。

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