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「作戦あれこれ」第87回 攻撃対攻撃の試合に勝つコツ

 攻撃型全盛の今日の卓球界。東京世界大会では男女ともシングルスのベスト4を攻撃型が独占。試合の8割以上が攻撃対攻撃の試合であった。
 東京大会の結果を待つまでもなく、最近は異質ラバーカットマンの進出が特に女子において著しいとはいうものの、国内の大会においても攻撃対攻撃の試合が大半を占めている。一枚ラバーの守備型が主流だった時代から、高性能ラバーの発達によって攻撃型が戦型の主流となってきたためである。
 そのため、攻撃選手の場合でも、対戦相手の過半数は攻撃型だ。それにもかかわらず、最近の全中やインターハイ、いや全日本クラスの試合でさえ、攻撃型同士の試合で「もったいないことをするなー」と観戦中に感じることが多い。
 もう少し考えて戦えば今の力で十分勝てるのに―。
 そこで今回から数回にわたり"攻撃対攻撃の試合に勝つコツ"について話してみたい。

 攻撃対攻撃で勝つための要素

 攻撃対攻撃で勝つためには、まず基本となる攻撃型に対する作戦と読み、がある。対ドライブ、対速攻、対異質ラバー攻撃などタイプによってそれぞれ違う攻め方をマスターすることだ。その攻め方のコツを知っているか知らないかで、試合の成績は断然違ってくるものだ。
 そしてもう一つ、忘れてならないことが精神面だ。精神面も攻め方と同じ、イヤ、それ以上に大事な勝つコツである。序盤、中盤、終盤で、自分の気持ちをどのようにコントロールするか、このことを知っているのと知らないのとでは、やはり試合の成績が大きく違ってくるものだ。
 昨年、男子で史上初の全日本3冠王に輝いた斉藤清選手(明大3年)も「攻撃対攻撃の試合は、特に試合に挑む気持ちのあり方が非常に大切」と語っていたが、私の経験からもまったくその通りだと思う。
 では、私が現役時代に対攻撃の試合で特に気をつけたことを作戦面と精神面に分けて述べてみよう。

 自分が打つ一球目、二球目が勝負

 私は中、後陣での両ハンドの粘りが得意だった。そんなロビングで走り回る私のプレーを見た人には意外に思われるかもしれないが、私が攻撃選手と対戦したときに一番気をつけたことは、たとえどんな相手に対しても「自分が打つ一球目、二球目を思い切り攻めて先手をとる」ことだった。
 つまり、サービスを持ったときは、相手のフォア、バック、ミドルへ思い切ったドライブロングサービスや、鋭く切った変化サービスを出し、まず相手のレシーブを攪乱する。そして、すぐに得意の強ドライブで思い切り攻め得点することであった。
 レシーブに回ったときも、相手のサービスだけにグッと集中し、ショートサービスに対しては思い切って払うレシーブを狙う。「コートから1バウンドで出る」と思えば全力で強ドライブする。そして、すぐ4球目強ドライブに結びつける。
 私はこのサービス、レシーブに試合に注ぐ力の8~9割を注ぐようにした。
 これは何を意味しているのか?
 もちろんサービス+3球目やレシーブで狙いどおりいかないこともあった。ツッツキやバックハンドのつなぎなども多く使った。しかし、ラリー戦が最も得意と思われていた私にしても、試合で勝つためには「初めの1~2球が勝負」と身をもって体験していたからにほかならない。いかによいボールを持ち、ラリーが得意な選手でも、立ちあがりの1~2球でラリーの勝敗は決まってしまうのだ。
 「攻撃対攻撃は先手必勝」。まずこの言葉を頭に入れてほしい。相手のミスを待つ消極的なプレーでは、攻撃対攻撃で大成することはできない。
 このように考えると「攻撃対攻撃は、先手をとる技術くらべ、先手をとる知恵くらべ」と言える。
 そこで、ここでは「先手をとる知恵」、言いかえれば相手の心理を読み、相手の読みをはずすプレーについて考えてみよう。

 サービスを持ったときの読み方

 まずサービスの時。試合の全体の流れ、相手のサービスの時のプレー(特に5本のサービスの内、最後の1本)、1本前のサービス+3球目の内容...から、どこにどんなサービスを出したら先手を取れるか考える。
 たとえば、相手が中・高校生に一番多い、ドライブは得意だがショート、バックハンドは苦手なペンのドライブマンと仮定しよう。そして状況は12-14。この選手にサービスをチェンジする前に2本続けてバック側からすばらしい3球目ドライブを決められ、1本前に出したフォアへのドライブロングサービスはドライブ強打で決められている。
 さて、どこへどんなサービスを出すのが一番いいだろうか?
 このように相手の気持ちが乗っている時に、フォア、バックへカット性のロングサービスを出すことは最もいけない。こういった場面では
①相手の振りが大きくなっているので、ロングサービスを出すモーションから、フォア前に素早くガツンと切って出す。相手がフォア前レシーブでフォアへ寄ったところを、バック深く思いきりドライブ攻撃―といった攻め方が効果的。
 この時相手が非常にフォア前のうまい相手だったら、ミドル前からバック深く(この場合は、フォア、あるいはフォアミドルへのドライブもきく)攻めればいいし、
②相手の振りが大きくなっているので、フォアにドライブロング(またはフォア前)サービスを出すモーションでつっておいて、パッと鋭く体を反転させてナックル性ロングサービスをバックに出す
―のもよくきく。もちろん相手がつまったり、ショートしてくるのを積極的に攻撃する。
 状況、場面、相手が変われば当然こちらの作戦も変わる。しかし要は、相手の得意技術、心境を考えそれを封じる作戦をたてることだ。

 長谷川の基本的な攻め方

 私がサービスを持ったときの基本的な攻め方は、ドライブマンにはドライブ性とナックル性のロングサービスを随所に使うことだ。そして表ソフト速攻にはそれにプラスしてカット性ロングサービスを多用した。
 この狙いは、相手に大事なところでも「長谷川はロングサービスから攻めてくるかもしれない」と警戒させることにある。その間隙をぬってフォア前に得意の下回転サービスを出し、相手に間違いなくツッツかせて容易に3球目強ドライブ攻撃を成功させるためだった。
 また、ロングサービスを思い切って出しておくと、相手のショートサービスに対する集中力が薄れる。そこへショートサービスを効かせる。そうするとショートサービスからの3球目があざやかに決まるため、相手は今度ショートサービスを警戒する。そしてロングサービスに対する集中力が薄れ、またロングサービスが効く。
 このようにロングサービスを多用するとサービスからの攻めのパターンが多くなると同時に、甘いボールが返りやすくなり3球目攻撃するチャンスが増える。このことは対攻撃で鋭い3球目攻撃を成功させるコツである。サービスを持ったときは、ロングサービスを勇気をもって使おう。

 サービスに威力をつける練習をやろう

 このように攻撃対攻撃で勝つにはサービスからの3球目攻撃がいかに大切かが分かっていただけたと思う。しかし、いくら頭で分かっていても、肝心のサービス、そして3球目に威力がなければ今まであげたよい作戦も成功しないものだ。
 今まであげた作戦を成功させるには、サービスのうまい中国選手がやっているように、いろいろなサービスを繰り返し繰り返し練習したり、サービスからの3球目攻撃練習を十分やるしかない。サービス練習によってサービスに威力が出れば、グーンと3球目攻撃がやりやすくなるものだ。1つ新しいサービスを覚えると、それだけでプレーの幅が増し、試合に強くなるものだ。対攻撃に強くなるために、3球目攻撃の練習をしっかりやろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1983年7月号に掲載されたものです。

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