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「作戦あれこれ」第86回 梅雨時の試合の注意点

 6月はうっとおしい梅雨の季節。梅雨時はボールがすべりやすく、一年中で一番試合がやりずらい季節だ。特にドライブを武器とする選手や、表ソフト、一枚ラバーの攻撃選手にとっては、ボールが湿気でポロッと落ちてしまう。試合が大変怖い季節だ。
 ボールが落ちる原因は、梅雨時は空気中に湿気が非常に多いため、ラバーの表面に水分がくっつき、ボールとラバーがスリップするからだ。また、卓球台の上、床やフェンスなども濡れてしまい、それがボールにつきさらにすべりやすくなる。
 このような試合コンディションの悪い梅雨の日は、どのような点に注意すれば良いプレーができるか。私の体験を述べてみよう。

 自信をもってプレーすること

 ボールがすべってしまう梅雨の日の試合で、一番注意しなければならないことは「ボールが落ちてしまう...」「怖くてボールが打てない...」と思って自信を失い、自分の卓球を崩さないことだ。中には、試合の日に雨が降ると「もうダメだ」と戦う前に負けてしまう選手もいるが、条件は同じ、雨を嫌悪してはいけない。
 雨をいやがる選手は、ボールが落ちるかどうかばかりに神経を使い、相手のことなど全然考えられなくなってしまうからだ。そのために、相手が打ち返すコースを読む余裕がなくなり、入れるだけの受身のラリー展開になってしまう。これでは勝てない。レベルの高い選手であっても二流、三流のプレーヤーになりさがってしまう。
 したがって、いくら雨が降り続く悪天候、ボールが落ちる悪条件にぶつかっても「相手も同じ条件だ、相手はボールが落ちてうまく打てないんだ」と"強い自信"と"強い精神力"を持って戦うことがまず第一に大切だ。
 私の例をあげると初めてインターハイ予選に通った高校2年の時を思い出す。私も、ボールがすべって落ちやすい日の試合は「ドライブやショートが落ちるのではないか」と人一倍心配するほうだった。が、こんなときほど「絶対に落ちない、必ず入る、自信を持つんだ」と試合コンディションのいい日の3~4倍も自己暗示をかけるように心がけた。また、試合中にも同じような自己暗示をかけて恐怖感を取り除き、自信を持ってプレーするようにした。
 このおかげで高校2年の6月の梅雨の日にあった大事なインターハイ愛知県予選で、雨にもかかわらずドライブやショート、スマッシュがよく決まった。また、相手が「落ちないように」とやっと入れてくるボールのコースがよく分かり、過去最高のプレーをして全国大会初出場の切符を手に入れることができた。
 試合コンディションの悪い日でも、出場する選手はみんな同じ条件だ。したがって心の持ち方が勝敗を大きく左右する。ボールがすべりやすい日の試合ほど「強い自信と強い精神力」をもって試合に臨もう。

 ラバー拭き専用のタオルを用意する

 雨の日に必要な注意事項としては、まずラバーの表面とボールが濡れていないかどうかをときどきチェックすることだ。特にジメジメ湿気の高いときは十分に気をつけたい。もし、ラバーの点検を怠ったため自信を持って返した打球がストンと落ちてしまうと、その次からも「また落ちるのではないか」と弱気になって強く攻められなくなってしまう。
 私は、このようなことのないよう、雨が降ってじめじめしている試合にはラバーとボール拭き専用の手ぬぐいを用意した。そして汗を拭くときは汗拭き専用のタオルを使い、ラバーやボールが濡れたときはラバー拭き専用の手ぬぐいできれいに拭いた。そのため、ボールが落ちることは大変少なかった。雨の降る試合コンディションの悪い日は、汗を拭くタオルとラバー拭き専用の手ぬぐいを別に用意することが絶対に必要だ。
 さて、ラバーとボールの濡れをチェックすることは今いったように大切だが、逆に余り強く意識しすぎるのもまずい。ラバーを意識しすぎるとプレーに集中できなくなる。ラリーとラリーの間は気持ちを整理し、作戦を考える時間だ。ラバーはラリーの合い間に相手に分かられないように素早く見て、すぐ次の戦法を考えることだ。もし、ラバーやボールが濡れていた場合は、タイムを要求して素早く拭こう。
 表ソフトや一枚ラバーの攻撃型の中には、チョークを表面に塗る選手がいる。この場合は、塗ったあとにチョークの粉がボールにつかないように乾いたタオルで拭き取ることを忘れないようにしよう。
 また、ラケットケースの中に乾燥剤を入れて湿らないように気をつけている選手がいるが、これはなかなか良い方法だ。ぜひ実行してもらいたい。

 古いラバーは危険

 次に、梅雨時は用具の点検をすることが大切だ。中でも湿気に影響されやすいラバーは十分注意しなければならない。
 湿気の多い日は、いくらラバーやボールに注意を払っても、他の季節より回転がかかりにくい。このような時期に長い間使い古し摩擦係数の落ちたラバーでプレーすると、ボールが非常に落ちやすい。そのために、調子を崩し思わぬ相手に不覚をとることがある。
 したがって長い間使い古し、表面が光ってきたようなラバーや、練習量が多くて回転がかかりにくくなっているラバーを使っている選手、あるいは粒の底が切れている表ソフト、イボ高ラバーを使用している選手は、新しいラバーに買い替えた方が良いプレーができるだろう。
 私の高2のインターハイ予選のときをもう一度思い出すと、試合の直前に新しいラバーに買い替えていた。これも好結果につながった原因の一つだと思う。梅雨時の試合前は、ラバーの点検を忘れないようにしよう。

 ユニホームの着替えを沢山もっていこう

 それから試合の日に忘れてならないのは、ユニホームの着替えを沢山用意することだ。なぜならば、6月、7月の試合は蒸し暑く、一試合プレーするとかなりの汗をかく。もし、この時ユニホームの着替えを忘れ、汗をかいたままのユニホームでプレーしているとユニホームの汗がボールにつく。まして濡れたユニホームのままで次の試合まで休んでいたとしたら、肩や背中、腰を冷やしコンディションまで崩してしまうものだ。
 だが最近の中、高校生の試合を見ていると、若い体力に油断をしてかそこまで気がまわらずに汗をかいたままの状態で休んで体調を崩す選手が多いのは大変残念なことだ。技術が高くても健康管理がきちんとできない選手は、大成しない。
 私をはじめ、国際試合に出場するような選手の大多数は、試合前の練習ユニホーム+1回戦から決勝戦までの試合数のユニホーム+終了後のユニホームの数、のたくさんのユニホームを用意して大会に臨んだものだ。そのために、体を冷やすことは少ないし一試合一試合すっきりした気持ちで試合ができ、取りこぼしが少なくなる。「健康管理も実力のうち」だ。若いからといって絶対に油断をしないように、ユニホームの着替えはできるだけ沢山もっていこう。

 雨降りにゲーム練習をする

 雨が降ったり、じめじめした日に良いプレーをするには、これまで述べてきた注意点をしっかり守ることが大事だが、それだけでは適応力に欠ける。やはり雨の日のプレーを実際に経験することが絶対必要だ。
 そのためには雨降りの日や、じめじめしている日に団体戦や個人リーグ戦、ダブルスのゲーム練習を進んでやるようにしよう。そして、このときに注意することは、ボールが落ちてミスをしてもそれが当然だと思い、絶対にかんしゃくを起こして試合を投げ出さないことだ。ミスしたら2度同じ失敗をしないためにはどうしたらよいか、を工夫しながら試合を行ない、自分なりの雨降り対策を研究しよう。そうすれば、雨の日に強い選手になれるだろう。
 それともう一つ、湿気が多い時期は床がひっかかりすぎて動きにくいものだ。このため、フットワーク練習をしっかりやっておくことも大切だ。
 中、高校生は、梅雨時に全国大会の予選はじめ、大事な試合が多い。今述べたことを参考にして頑張ってほしい。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1983年6月号に掲載されたものです。

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