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「作戦あれこれ」第92回 攻撃対攻撃で勝つコツ⑥ レシーブに臨む心

 攻撃対攻撃の試合では、特にレシーブが大変に大事である。そこで先月号では効果の高い"レシーブ上達法"を紹介したが、練習でいくらレシーブ技術が上達しても試合のときにうまくいかなくてはなんにもならない。技術はありながら試合で良いレシーブができないという選手は、精神面に問題がある。緊張した試合のときに、レシーブに臨む心理状態が悪いと、なかなか良いレシーブができないものである。そこで今回は、私の試合経験から、試合で良いレシーブをするにはどのような心理状態で臨んだらよいかを述べてみよう。

 ミスを恐れては良いレシーブができない

 試合でレシーブに臨むとき「ミスするんじゃないかな」「逆をつかれたらどうしよう」「どのコースに返そうか?」「3球目攻撃をされそうだな...」などと思ってレシーブするのは良い心理状態といえない。こんなふうに悲観的に考えたり、消極的な姿勢でレシーブに向かうのでは固くなって動きやミートが悪くなり、自分の力を発揮できないものである。その上、強い不安感から相手のコートに入れることだけしか考えられなくなり、次の備えが全然できなくなったり、相手の3球目の動きが見えなくなったりして、いつもの4球目攻守ができなくなってしまうものである。
 では、レシーブに臨むときは、どのような心理状態で臨むのが良いだろうか。

 「絶対に入る」という自信を持つ

 それは、第一に自信を持って臨むことだ。それも「絶対に入る」「絶対にうまく入れてみせる」という気迫のこもった強い自信を持って臨むことが大切である。
 そうすれば、いくら変化の激しいサービスを持っている相手と対戦しても、冷静に最善のレシーブができるようになるし、心の余裕から相手の動きを見ながら逆をついてレシーブして、4球目の攻守に結びつけることができるようになる。
 このようにレシーブのとき、「絶対にうまくレシーブできる」「どんなに威力のあるサービスでも絶対にうまくレシーブしてみせる」という気迫のある強い自信を持って臨むことは、何よりも一番大切なレシーブのコツである。
 しかし、いくら自信をもてといっても、ふだんの練習や、ゲーム練習のときに真剣にレシーブからの4球目攻守に取り組み、試合前もしっかりレシーブ練習をしておかないと、自信を持って臨めるものではない。レシーブが得意な選手も苦手な選手もふだんから真剣にレシーブ練習をやっておこう。

 弱気は絶対に禁物

 第2に大切なことは、勇気を持ってレシーブすることだ。
 逆に悪いレシーブとしては、ミスを恐れて消極的になること。変化サービスを出されるとすぐにツッツキレシーブ、ドライブロングサービスを出されるとショートや前で合わすだけの威力のないロングでしか返さないというやり方だ。もちろん、ツッツキに威力があったり、作戦的にショートやツッツキをまぜる場合は別だが、一般的にいって、攻撃選手が消極的なレシーブ策はとるべきではない。なぜならば、4球目攻撃に結びつかないし、自分の調子やリズムが崩れたり、集中力が落ちてくるからである。攻撃対攻撃は、先手必勝。レシーブから積極的に攻めることが大切である。もし、攻撃選手で、いつまでたっても消極的なレシーブしかしなかったり、高い技術を持っていながら大事なところになると消極的なレシーブになってしまうようでは、いつまでたっても勝てない。勝負強い選手というのは、最初に相手のサービスを覚えておいて、勝負どころでは必ず勇気をもって積極的なレシーブをする選手である。

 5倍ぐらいの勇気を持て

 では、試合になると弱気なレシーブをする選手が、積極的なレシーブをする選手になるにはどうするのがよいのだろうか?というと、それは勇気を持ってレシーブに臨むことである。その勇気も、試合の山場で良いレシーブをするためには、ふつうの5倍ぐらいの勇気を持って臨む心がけでなくてはならない。
 たとえば、バックサイドに鋭く曲がって食いこむ威力のある投げ上げサービスを、バックツッツキでレシーブすると、3球目を狙い打ちされてしまうので、ドライブレシーブで相手の3球目攻撃を封じたいとする。
 このとき、「ドライブで攻めるのは難しい」と考えて自信がないままレシーブすると、体まで固くなって動作、振りが鈍くなり、相手のコートに入れることさえ難しい。気持ちが逃げたら入るボールまで入らなくなってしまうのが卓球である。そこで「ヨーシ、勇気を持って思い切り回り込み、捨て身でドライブ攻撃するぞ!ミスしたときはミスしたときだ」と、いい意味での開き直りをするのである。
 このようにしてサービスに向かっていけば、自然と無駄な力が抜け、ミートがよくなって回転に負けなくなり難しいサービスでもうまくレシーブできるようになるものである。もし、はじめにミスが出たとしても、投げ上げサービスに対するドライブレシーブのコツがだんだん分かり、徐々に入るようになる。あるいは、思い切り回り込んで攻めることによって、相手がそのサービスを出さなくなったりしてくれるので、得点しやすくなったりする。試合の上手な選手は、このような戦法を使うことが多い。

 「逃げると危険が2倍になる...」

 私に例をとれば、私はバック前の変化サービスに対するレシーブが非常に苦手だった。それで、私の弱点を知っている選手はバック前の変化サービスから攻めてきた。
 そこで私は、相手のサービスを違うコースに変えさせるために、勇気を持ってフォアハンドで回り込んでクロス、ストレートに思い切り払って攻めた。そして、相手のサービスコースをミドル前や、フォア前、またロングサービスに変えさせ、これをまた要所で狙い打ったり、逆をついてツッツキ、得意のドライブ攻撃に結びつけた。
 もし、私に勇気がなく、バック前に出された変化サービスをツッツキ等の安全策でばかりレシーブしていたなら、大きな大会で優勝することはできなかっただろう。全日本選手権や世界選手権で優勝した時は、常に勇気を奮い起こしてレシーブで勝負していた時であった。
 攻撃対攻撃の試合で、積極的なレシーブができなければ大敵に勝つことは難しい。それには、ふつうの選手の何倍もの勇気を持ってレシーブに臨むことだ。私は、不調で迎えた昭和48年の全日本選手権のとき、イギリスの首相だったチャーチルの「困難にあったときに逃げると危険が2倍になる。しかし、自分から困難に敢然と立ち向かえば危険が半分に減る」の言葉を支えにして大会に臨み、6度目の史上最多優勝記録をとげることができた。レシーブのときこそ、まさにこの言葉があてはまると思う。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年1月号に掲載されたものです。

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