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「作戦あれこれ」第112回 表ソフト速攻型攻略法⑤ 守れる体勢から打て

 基本技術の大切さ

 最近「速攻が万能」の声が上がっている。"速攻"の大切さはいうまでもないことで、私が世界チャンピオンになる以前の1960年代から「バック系技術の強化、サービス力の強化」と共に20年以上にわたって卓球レポート誌上では、"速攻の重要性"が言われ続けている。しかし、同時に「攻める時は打点の高いドライブ速攻。ラリーでは前~後陣の粘り強い守備~攻撃」で戦うドライブ選手や「攻撃力があり、前~後陣で変幻自在なプレー」をみせるカット主戦型、等のプレーも卓球のひとつの花として、前陣に徹する速攻至上主義に負けず劣らず大切である。どのタイプでもチャンピオンになる可能性がある。問題は、戦型というよりプレーのレベルと卓球がどこまで好きでどれだけ卓球に打ちこめるかということだ。
 そんな意味も含め、今、世界で男子単1~2位を占める表ソフト速攻型に対し、ドライブ型でもこういう戦い方をすれば互角以上に戦えるという作戦をここ数回にわたって紹介してきた。
 しかし、8月1~6日に行なわれた石川インターハイを見て、作戦の大切さはいうまでもないが、まずその前に基本的な技術とその練習方法を紹介しておく必要があるな、と強く感じた。
 というのは、インターハイの、特に女子の攻撃選手が表ソフト速攻選手と対戦した試合をみると、凡ミスばかりが多く、前回までに紹介した作戦を使いこなす技術レベルまで達していなかったからだ。これは、試合での考え方にも問題がある―女子は決勝の石田対高橋の速攻同士の試合で、5球目まで続いたラリーが数度しかなかったことに象徴されるように「打とう、速攻しよう」という気持ちばかりが先行し、試合の基本である「難しいボールはコースをついてチャンスをつくり、チャンスボールを思いきって攻める」ことをドライブ選手も忘れている―のだが、それ以外に、やはり基本技術が低いために凡ミスが多く出ていた。
 そのため、石田、高橋選手らの速攻型に対し「相手を動かしながら攻めさせる」ことができなかった。

 高弾性ラバーを使う上の注意点

 最近のドライブ選手の多くは高弾性高摩擦ラバーを使用している。このラバーは最もパワーがあり、攻撃にも守りにも威力がでる。が、その反面使いこなす上で注意しなくてはならない。
 というのは、表ソフトの選手の場合でも、台について打球する時は相手のボールのスピードを利用できるため、あてるだけの打法で入ってしまう。そのため、自分の力で、自分のボールにして打つためには、中陣、後陣で力を入れて感覚をつかみ、その感覚でより速く前陣で打てるようになると、前陣で威力のあるボールが打てるようになる。まして高弾性高摩擦ラバーの場合は、前陣で当てるだけでもかなりのスピードで返り、中陣からでも当てるだけで入る。そのため、かなり意識して基本に忠実なフォームを心がけ、十分な基本練習をやり込まないとこのラバーのもつよさを発揮できない。
 特に注意することは、自分のボールにスピードがある分、相手のボールも速く返ってくるので、基本を守りながら動きのスピードを身につけることだ。それと、スピードがでるため、攻撃のほうばかりに意識がいきがちになるが、常にしっかりした守りを身につけるよう心がけることだ。
 そうすることによって初めて、ラバーの持つ威力を生かすことができ、昔の選手よりパワフルでスピーディーな攻撃プレーが可能になる。

 正しいフォームを身につける

 では、どのような練習をしたら基本を身につけ、守りを強くすることができるだろうか?
 まず大切なことは常に自分のフォームをチェックする習慣を身につけることだ。
①1本打ちや100本ラリーなどで、あてるだけでない正しいフォームになっているかチェックする(フォームがぎこちない選手は、一度正しいグリップになっているかどうかを確かめるとよい)
②1本打ちで、ゆるいボールをあげてもらい、正しいフォームで強打する練習をする
③次に、速いタイミングで連続してあげてもらい、ふり遅れないように連続して強打する練習をする
―この時のチェックポイントとしては、ア.初めの基本姿勢 イ.腰の回転 ウ.バックスイング(高く) エ.重心移動(右利きなら打球に合わせ右足から左足) オ.ボールを見る カ.フリーハンド キ.しっかり振り切る ク.すばやいニュートラルへの戻り...等だ。

 相手の練習の時、守りの練習を

 次にしのぎの練習だ。
 しのぎの時に大切なのは、まず逃げないこと。相手に攻められると、体と気持ちが逃げてしまい、ボールにラケットを当てるだけという選手がいるが、これではいけない。
 フォアもバックも守りの基本は、攻めのフォアロング、バックプッシュ、バックロングと同じ、正しい重心移動や正しいフォームを守りつつ、時間が少ない分フォームを小さくして打つよう心がけることだ。
 練習としては、1本打ちで相手に強打やドライブで攻めてもらい、逃げないで攻めの気持ちで守る。前陣はもちろん、中陣、後陣でも守れるようにする。
 この、相手に攻めてもらい守る基本練習は非常によい練習だが、練習時間の関係で守りの練習だけとりあげて練習できない選手も多いことだろう。そんな選手は基本練習や課題練習、ゲーム練習の時に相手がスマッシュやドライブで攻めてきた時に「守りの練習だ」と思って真剣に返す練習をする。特に、課題練習で相手の練習台になる時がこの守りの練習をするチャンスだ。この、相手の番の時に自分の守りの練習をすることが、練習量を倍に生かすコツだ。

 常に守れる体勢でプレーする

 それともうひとつ私が心がけた大切なことがある。
 それは、基本練習やゲーム練習の時、「相手はいつスマッシュしてくるかわからない」と考え、いつ相手にスマッシュされても守れる体勢、心がまえをしながらプレーしたことだ。攻める時でも、常にこの心がまえを忘れないことが守りの強い選手になるコツだと思う。
 最近、ドライブマンでも、中陣のロングやロビングで粘り強いプレーをする選手が少なくなり、さみしい気持ちがする。守りも大切な練習。しっかりした守りを身につけ、攻守兼備の大型プレーヤーを目指していこう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1985年10月号に掲載されたものです。

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