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「作戦あれこれ」第156回 ヨーロッパ女子攻撃型に学ぶ

 日本とヨーロッパの違い

 ドルトムント世界選手権では、スウェーデンを中心とする男子ヨーロッパ勢の、前~後陣にわたるスケールの大きなオールラウンドプレーが目をひいたが、女子においてもシェーク攻撃型の活躍が光った。女子シングルス優勝の喬紅(中国)、準優勝のリブンヒ(朝鮮)をはじめとするアジアのシェーク勢の強さは言うまでもないが、ヨーロッパ女子のシェーク攻撃プレーも日本にとってはあなどりがたいものがある。
 筆者はドルトムント大会で、そしてその後バタフライ道場に留学にきたチェコのスパルタクチーム(女子3名。チェコのNo.4~6)と日本勢のプレーぶりを見てヨーロッパ女子と日本女子の違いについて感じるところがあった。
 この違いは女子のみにとどまらず、男子も含めた日本とヨーロッパの卓球の違いでもある。特に若い中高校生にとっては、今回とりあげる「ヨーロッパ女子の長所」が男女を問わずそのまま参考になることと思う。
 対シェーク攻撃型の攻略法は非常に大切なことなので真剣に取り組もう。

 チェコの女子選手

 スパルタクの女子チームは、NO.4のコチョバ(25才。右ペン。日中号スーパーにスレイバー。裏面にペキューラ)、No.5のダビドコバ(19才。右シェーク。フォア・スレイバー、バック・インパーシャル)、No.6のマサリコバ(20才。右シェーク。インパーシャルとフェイントソフトの反転攻撃型)の3人。イボ高攻撃とカットにやや弱いため、練習試合緒戦の青学大戦を1-3で落としたものの、その後は圧倒的な強さを見せて帰国した。
 戦型こそ、両面裏ソフトの攻撃型がほとんどのヨーロッパ女子としては、極めて珍しい選手が3人揃ったが、プレーのスタイルの基本、考え方は一般のヨーロッパ女子と共通している。特に若いダビドコバのプレーは、標準的なヨーロッパ女子の卓球そのものである。

 ドライブに強い

 ヨーロッパ女子の卓球を見てまず感じるのが「ドライブに対する打たれ強さ」である。
 日本の女子や高校生の試合では「とにかく先にドライブをかけたほうが勝ち」のきらいがある。ゆるいドライブでも、ループでも、コースをついてドライブしておけば、相手のドライブ処理が甘いため効果がある。
 ところが、ヨーロッパ女子との試合ではそうならない。
 ゆるいドライブやループはハーフボレ―でパチンと打たれる。フォアへドライブしても、ハーフボレ―的にパチンと合わされる。相当いいドライブであっても、コースの分かりやすいドライブの場合はまず返ってくる。ツッツキを無理に回り込み、打点を落としてドライブしても有利にならないのである。
 そのため、十分な体勢で攻められないくらいなら、チャンスまでツッツいておく、という戦術も多くなる。
 「ゆるいドライブは何でもない」
 ドライブに対する慣れが、ヨーロッパ女子にこういった感覚をうえつけている。

 切るツッツキを多用する

 「ドライブされても大丈夫」の感覚は、彼女らの他のプレーに影響を与えている。
 レシーブで「ドライブされるとまずい」と考えると、レシーブの種類は、ストップ、強打、逆をつく軽打...が主体となるが、彼女らは「ドライブしてらっしゃい」とばかりツッツくことが多い。ドライブ処理に自信があるからツッツくわけだが、ツッツくレシーブが多いから自然にドライブ処理がうまくなる、とも言える。
 とはいえ、彼女らにとって「ツッツキ」とは、フォアもバックも手首を瞬間的に効かせて鋭く切り、低く、速いボールで、エンドラインいっぱいに左右のコースをつくこと、を言う。フォア前であっても瞬間的に手首を効かせて切る。これが技術的に日本にはまだ行きわたっていない部分で、合わせていれるだけの切れていないツッツキを、彼女らはツッツキとして認めない。
 もちろん、大きめのサービスに対しては先手をとってレシーブからドライブで攻める、バック前の小さいサービスをツッツくような感じからハーフボレ―で強打で払う、という技術をよく見せる。色々できるのだけれど、戦術的にツッツキを多く使うということである。
 これはオリンピックチャンピオンの劉南奎の「ストップしてドライブを封じられるくらいなら、先に大きく切ってツッツキ、ドライブさせてカウンタードライブで狙う(またはショートでつないで次を狙う)」といった戦術に一脈通じるところがある。

 サービスの考え方

 「ドライブに強い」ことは、サービスの戦術にも影響を与えている。ロングサービスや横回転系のサービスを使うことがそれである。
 つまり、下回転系のショートサービスを出すと、相手に切って大きくツッツかれ、3球目から威力あるボールで攻めづらい。3球目をツッツいてしまうくらいなら、横回転系(または切らない)ショートサービスを出し、軽く合わせてくれば3球目強打、ツッツいて浮けば頂点強打(ドライブ)で攻める。もしくは、ナックル性や斜め下回転系のスピードロングサービスを出し、不十分な体勢でドライブしてくればハーフボレ―強打、ツッツキ等でつないでくれば思いきった3球目強打...で攻めようとしているのである。
 下回転のショートサービスからの攻めは、①サービスがうまい(下とナックルが分かりづらい) ②切れたツッツキをパワーで強ドライブできる ③ストップに対して台上処理がうまい...選手にとっては効果的な戦術だが「相手にドライブされても恐くないが、自分もそれほどパワーで攻めきる自信がない」ヨーロッパ女子攻撃型にとっては、「相手に軽く打たせて(ドライブさせて)ハーフボレ―戦に持ち込んだほうが有利」と判断しているのである。

 頂点を思いきって攻める

 さて、それだけ前陣でのドライブ処理のうまいヨーロッパ女子は、ツッツキに対し自分たちはどのような攻めをするのだろうか?
 かつてのヨーロッパ女子は「ドライブをかけてハーフボレ―戦にもっていく」のが主流であった。が、現在は①いきなり頂点強打していく ②頂点をとらえたパワードライブを打つ ③ループからハーフボレ―戦にもちこむ...戦術をとるようになった。
 もともとヨーロッパの女子は体力面ですぐれている。かつては体の使い方が悪く、「フォアはドライブだけで威力もない。恐いのはハーフボレ―だけ」の選手が多かったが、現在ではヨーロッパ男子のプレーやアジアのプレーに影響され、改善が進みつつある。遠心力を使って男まさりのパワードライブを打つ選手、前陣でリストを効かせてムダな動きを省きピシッと強打を打つ選手...などが出現している。
 ヨーロッパの女子同士の試合では、先にゆるいドライブをした方が狙い打たれる傾向があるため、大きくツッツキをもっていった後、相手が大きくツッツけばいきなり強打してしまう。十分な体勢で頂点をとらえ、逆モーションでパワードライブを打つ...などのプレーが目立つようになってきている。男子選手のようなテクニック、スケールの大きさはまだまだないが、単純に、イボ高攻撃なら大丈夫、カットがいけば大丈夫、と考え続けていると、日本は今後痛い目にあうことだろう。ヨーロッパ女子の中にもイボ高使用選手は皆無ではないし、カットマンに対し、前に寄せてからのハーフボレ―強打、前へ寄せてからのパワードライブ攻撃...などで新しい切り口を見せ始めた選手もいる。ヨーロッパの女子も「自分たちはどういうタイプに弱いかに気づきだしている」と見るのがあたり前の見方であろう。

 日本勢はどうするか?

 日本のドライブマンが前陣でのドライブ処理のうまい選手に対し、どのように攻めたら良いだろうか?
 一番てっとり早いのがパワーをつけることである。素早いフットワークでボールの頂点をとらえ、劉南奎、金擇洙クラスのボールを打てればいかにヨーロッパ勢といえどもとることはできない。
 とはいえ、フォーム、用具を改善しても、女子の場合などはなかなか難しい面もある。
 となってくると、強打とドライブを使い分けることが必要である。素早いフットワーク(これがないと頂点をとらえられない)で動き、強打もドライブもできる体勢を常に作ってから攻める。スピードのある頂点強打があれば、相手は強打を警戒するようになるためドライブが効く。逆モーションドライブやループを使い分けられればなお理想的である。自分の戦型を改善していくことはなかなか難しい。しかし、将来を考えるのであれば、後になって壁を作らないように早めに改善していくことが望ましい。自分の個性を良く見つめ、ビデオ等で研究し、自分のプレーをパワーアップしていこう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1989年7月号に掲載されたものです。

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