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「作戦あれこれ」第178回 3球目、5球目を考えてサービスを出す②

 イメージしてからサービスを出す
 サービスを持った時、漠然とサービスを出すのと、3球目、5球目以降の展開を考えてから出すのとは大違い。サービスを出す前に、どのように3球目、5球目を攻めるか、良いイメージを頭に描いてからサービスを出すことが大切である。
 今回は、前回に続き、どのように考えてからサービスを出したらよいか、その参考に、筆者が現役時代に考えていた実戦例を、紹介しよう。
 河野選手にバック前を出す
 河野選手はバック前のレシーブが抜群にうまかった。フォアハンドで回り込んでの流しレシーブは名人芸だったし、バックハンドの払い、ストップもある。そこで、大事なところではまずバック前にサービスを出す選手はいないし、河野選手もそう読む。山場で出すには、その虚をつくしかない。
 そこで山場で河野選手のバック前に下回転(横回転だと一発で狙われる)のショートサービスを出す場合は、その前に、フォア前の下回転サービス、フォアサイドぎりぎりへのドライブ性またはナックル性のスピードロングサービス、もしくは猛烈に切った下回転のロングサービスでフォアを攻め、絶対に河野選手の意識をフォアに持っていってからバック前に出すようにした(河野選手のバックの前にサービスを出す時は、山場だけでなく、常にこの工夫をすることが必要だった)。
 しかもバック前にサービスを出す時は、このようにして河野選手の意識をフォア側に寄せた上、出すタイミングを少し遅らせた。というのは、当時の河野選手は、台から少し下がった位置でレシーブを構え、相手がサービスを出すタイミングに合わせて前に出て、その勢いをレシーブに使おうとするクセがあったからである。従って、サービスを出すタイミングを遅らせると、河野選手は前に出てから、一瞬止まった状態でこちらのサービスを待つ形になる。
 タイミングをはずしツッツかせる
 さて、バック前サービスを出す時にイメージしておく、3球目、5球目のラリー展開である。
 一番理想的なのは、フォア側に意識を寄せさせ、サービスを出すタイミングをはずして、河野選手にバックのツッツキ、ストップで甘くレシーブさせることである。そうすれば踏み込みながらの逆モーション強ドライブ一発で抜ける。
 しかし、河野選手は、たとえ逆をつかれてバック系技術で処理するようになってもまず甘いレシーブはしない。
 そこで河野選手が鋭く切った低いツッツキでレシーブしてきた場合は、思い切り回転をかけた速いドライブで、フォアにきてもバックにきても攻める(相手がループに弱い場合は遅いループを混ぜるが、河野選手には狙われるので使えない)。
 この速い回転のかかったドライブを、河野選手が前陣両ハンドで合わせてきたら、フォアで攻められるボールはドライブ攻撃。コースはその時の状況を瞬時に判断して両サイドいっぱいを中心にたまにミドルへ。フォアで回り込めない時はバックハンドでコースをついて攻め、ロング戦に持ち込む。このような展開を考えておく。
 次にストップをされた場合である。
 河野選手はストップレシーブし、それをこちらが軽打で攻めるのを両ハンドで狙い打ちするのが抜群にうまかった。これはペン、シェーク問わず、両ハンド速攻型共通の強みである。
 そこで、相手がストップレシーブ後こちらの3球目ツッツキを狙ってくるのを承知で、ツッツく作戦をとる。ただし、前で、低く切って、厳しいコースをついてツッツくのである。そうすると河野選手は強打で狙えず、ドライブで攻めてくる。このドライブもかなり威力があり、予測していなければとても狙えない。このドライブを予測して、強ドライブで逆に攻め込むのである。余裕があればバックハンドでの狙い打ちもする。
 この3球目ツッツキ作戦を主に、勝負どころでは「ここはストップしてくる」と読み、両サイド、またはミドルに強打で狙い打ちする。河野選手が前陣でしのいでくるのを両ハンドで連続攻撃し、最後は強ドライブでとどめをさす。
 払われたら無理に回らない
 さて、タイミングをはずしてサービスを出しても河野選手に回り込んで払われることもある。サービスを出す前、この時の展開もイメージしておかなくてはならない。
 下回転サービスをバックの前に出し、河野選手が回り込んでクロスに払ってくるレシーブを、無理に回り込んでドライブ攻撃しても展開的には損になる。つまってドライブをすれば狙われるし、速いドライブで攻めても、フォアへ合わされると回り込んで体がバック側に寄ってしまっているため苦しい。
 そこで、バックへ払われたレシーブは、低く速いショート(ハーフボレー)でストレートにゆさぶるようにする。河野選手は当然このショートを飛びついて強打で狙ってくる。このボールに対し、位置をとっておいてロング戦に持ち込み、得意の打ち合いで勝負する。
 レシーブから回り込まれて先手をとられた時はこのような展開をイメージしておく。
 レシーブで回り込んでも、河野選手がストップ、ツッツキでくるようならチャンス。展開としては河野選手がバックのツッツキ、ストップでレシーブしてきた時と同じでよい。河野選手の動きが大きくなる分、4球目以降のプレーがこちら有利の展開になる。
 ドライブ型には先手必勝
 筆者や河野選手と同年代の世界チャンピオン・伊藤繁雄選手(本誌「技術」執筆者)はフットワークとフォアハンドがすばらしい典型的なペンドライブ型。対等な形での打ち合いにはめっぽう強く、レシーブもどんどん払って攻めてくる。ヤマをはって攻めてくるのがうまい。
 こういった攻めの強い選手との対戦では「先手必勝」が鉄則。表ソフトの選手との対戦では、速攻をかけた後は「ゆるいボールを使ったり、相手に攻めさせてリズムを崩し、また速攻をかける」強弱のリズムをつけるのが大切だが、伊藤選手との対戦では、サービスを出す前は常に先手をとることを考えなくてはいけない。
 そのため、サービスを出す前は、常にコースを散らすことと逆モーションで出して逆をとることを心がけ、山場で自分の得意のパターンで勝負する。
 伊藤選手は、ほぼオールフォアでレシーブする。そのため、よく使った試合運びは、まずフォアにスピードロングサービスを出して相手の読みをみる。スタートが遅れればバックにヤマをはっているし、タイミングが合わなければショートサービスに気持ちがいっている。ロングサービスは相手の気持ちを読むのが主だから、3球目は前で合わせて伊藤選手のバックをつき、バックハンドを振らせて、フォアドライブで攻める。
 中盤は色々な作戦を使って、相手の読みを分散させ、勝負どころでフォア前の下回転サービスを出す(いつも必ず、ではもちろんなく、筆者が得意とする一例である)。
 この時、サービスを出す前に考えるのはやはり先手をとること。伊藤選手に対しては4通りのパターンが必要であった。
(1)、バックへツッツいてきたら回り込んでバックストレートに一発で抜く
(2)、バックへ中打してきたらやはり回り込むが、強くは攻められないのでクロスにドライブして、次のショートを5球目ストレート攻撃
(3)、フォアへ強打してきたら、ストレートに強ドライブ
(4)、ストップに対しては、タイミング速く、切って、バックサイドを切り、ツッツかせて5球目を一発で抜く。このツッツキを読んで伊藤選手がヤマをはって回ろうとしたら、引きつけておいて回らせてからフォアへ逆モーションツッツキ、もしくはバックハンド軽打で逆をつく。
...といったパターンを頭にイメージしてからサービスを出すようにした。
 考えてプレーする習慣をつける
 速攻型、ドライブ型に対し、サービス前に考える内容を具体的にあげたが、一瞬のうちに、ここにあげたすべてを頭に思い浮かべるわけではない。試合の流れに乗って、最も大切なポイントを頭に思い浮かべてからサービスを出すのである。
 3球目、5球目まで考えてからサービスを出すクセをつけると試合全体の流れが見えるようになり、相手に打たれることが怖くなくなったり、ラリーに強くなったりする。
 そのためには、普段から、考えてプレーをするクセをつけること、試合中は自分のコートのことだけ考えてプレーすること...などが大切である。
 試合でいいイメージのプレーをするにはそれを裏づける技術が必要である。サービス練習はもちろん、自分に必要な技術、体力を身につける練習、トレーニングをしっかりやろう。


筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1991年6月号に掲載されたものです。

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