卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今回から、女子選手離れしたパワフルな両ハンドドライブで活躍したボロシュ(クロアチア)の名勝負を紹介していく。
初回は、小西杏(当時ミキハウス)との2003年世界卓球選手権(以下、世界卓球)パリ大会女子シングルス3回戦をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
21世紀初頭にヨーロッパを牽引したボロシュ
パワフルな両ハンドで小西の速攻を迎え撃つ
7月初旬、ボロシュが強豪ドイツの女子ナショナルチーム監督に就任するというニュースが入ってきた。
ボロシュは、ボールを高く投げ上げるハイトスサービスからのパワフルな両ハンドドライブを武器に、世界の第一線で活躍した選手だ。現役引退後は、クロアチアの大学でスポーツコーチングの修士学位を取得し、近年ではドイツの23歳以下代表のコーチを務めるなど、指導者の道を歩んできた。
選手として輝かしい実績を持ち、指導者としても研鑽を積んできたボロシュの監督就任は、さらなる強化を目指すドイツ女子にとって朗報だろう。
選手時代、世界ランキング2位まで上り詰めたボロシュだが、彼女がひときわスポットライトを浴びたのは、2003年の世界卓球パリ大会だ。
世界ランキング5位(2003年4月発表)でパリ大会女子シングルスに臨んだボロシュは、難敵を次々と退けて表彰台まで勝ち上がり、その強さを改めてアピールした。
そこで、ボロシュのキャリアハイともいえるパリ大会女子シングルスの表彰台までの名勝負を振り返りたい。
女子シングルス3回戦へ勝ち上がったボロシュは、日本の小西杏と対戦する。
小西は、バック面に表ソフトラバーを貼るシェーク異質攻撃型で、前陣での畳み掛けるような速攻が持ち味の選手だ。2001年世界卓球大阪大会では、女子団体のメンバーとして日本の銅メダル獲得に大きく貢献しており、当時の日本の中核選手である。
ボロシュのパワー対小西の速攻という構図で進んだ試合は、序盤、互いがゲームを取り合う形で拮抗する。
しかし、中盤から、ボロシュが持ち味である滞空時間の長いハイトスサービスからのパワフルな両ハンドドライブで、小西をじわじわと引き離していく。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)