卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、5月にカタールのドーハで開催された第58回世界卓球選手権大会個人戦(以下、世界卓球2025ドーハ)で繰り広げられた灼熱の熱闘を厳選して紹介する。
初回は、篠塚大登(日本)対薛飛(中国)の男子シングルス1回戦の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
世界卓球の初日に起きた歓喜と衝撃
篠塚が、ぶれない気持ちと戦術で薛飛を猛追
2年に1度開催される世界卓球の個人戦は、男女シングルスと男女ダブルス、混合ダブルスの5種目で世界一を争う、卓球界における最高権威の個人戦だ。開催地となったカタールのドーハは気温が連日40度を優に超える灼熱の大地だったが、各種目とも、外の気温に負けない熱戦が随所で繰り広げられた。
世界卓球2025ドーハで行われた名勝負の中から、まず、篠塚大登(日本)対薛飛(中国)の男子シングルス1回戦を紹介する。
篠塚の男子シングルス1回戦は大会初日に行われた。相手の薛飛は、世界ランキングこそ37位で、世界ランキング29位の篠塚にとって格下だが、安定性の高い裏面打法を駆使するペンドライブ型で、2017年世界ジュニア選手権イタリア大会男子シングルス優勝の輝かしい経歴を持つ。層の厚い中国では国際大会への出場機会が少ないので世界ランキングは高くないが、中国のし烈な代表選考争いを勝ち抜いて今大会にエントリーしてきた強者だ。
誰もが1回戦で対戦するのを避けたい相手だが、「(薛飛と当たるドロ−が決まり)『マジかー!?』とは思いましたが、へこむまではいかなかったですね。本当に一発目が勝負だなと思って、そこからは1回戦以外のことは考えませんでした(篠塚大登インタビュー)」という篠塚は、気持ちを落とさずに準備を整え、薛飛と相対した。
試合は、「薛飛選手は台上がうまいイメージなので、ツッツキとロングサービスを多く使っていった」という篠塚が作戦通りのプレーで薛飛と互角のラリーを繰り広げて競り合うが、第1、第2ゲームをあと一歩のところで落とし、ゲームカウント0対2とリードを許す苦しい展開。「地力の高い中国選手に勝つためには第1ゲームを奪ってプレッシャーをかけることが大前提」とは対中国に関してナショナルチームでよく使われる言葉だが、このセオリーとは逆に2ゲームを先行された篠塚がここから盛り返すのは至難の業ではないか。そう思われた第3ゲームも終盤まで競り合ってジュースにもつれ、10-11と薛飛にゲームポイントを奪われてしまう。
第3ゲームも落とし、薛飛に0対3とされたら篠塚の勝機は限りなく薄くなる。しかし、「0対2にはなりましたが、『やっていることは合っている』という自信があったので最後までずっと強気でいけた」という篠塚が、驚異的な粘りと狙い澄ました強打で追い上げを開始する。
開幕初日から世界に衝撃を日本に歓喜をもたらした、世界卓球にふさわしいハイレベルな攻防をじっくり堪能してほしい。
(文中敬称略。世界ランキングは大会時)
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(文/動画=卓球レポート)




