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ペンドラの求道者 小西海偉 
第4回 相手を乱し、観る者を魅了するロビング

 その道をストイックに究めようとする者を「求道者(ぐどうしゃ)」という。40歳を越えてなお、ペンホルダーのフォア面のみを使い、シェークハンドの先鋭たちに抗う小西海偉(東京アート)を言い当てる言葉ではないだろうか。
 この特別企画では、ペンドラ(ペンドライブ型)というプレースタイルを究めようとする求道者・小西の卓球観と技に迫る。
 今回は、ロビングにスポットを当てよう。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています

今はなんでも速い時代だから、ロビングに慣れていない選手が多い

−小西選手のプレーでは、ロビング(台から離れてのしのぎ)も欠かせないと思います
 そうですね。今の時代は、レシーブからのチキータに代表されるように、卓球が速くなっています。なんでも速い時代。だからこそ、台から距離を取って下がり、ロビングのように遅くて高いボールを送ると、特に若い選手たちは慣れていないので焦る。私はそうしてチャンスを探します。
 このような考えでロビングを使っています。

--ロビングを多く使うようになったきっかけはありますか?
 若い頃は、たまにしかロビングは使いませんでしたが、30代になってヨーロッパのリーグや中国の甲Aリーグ(超級リーグの1つ下のリーグ)に参戦したことがきっかけでした。
 甲Aリーグでは樊振東に2回勝ったんですが、その時にロビングがかなり通用しました。甲Aの若い選手たちは速いけれど、ロビングしたら全然打てない選手が多かった。ゆっくりのボールに対しては、みんな我慢できない。
 それで、中国選手にも通用するなら、日本でも世界にも通用すると思ってどんどん使うようになりました。

--ロビングで得点すると、相手はダメージが大きいし、自分は乗りますよね
 そうですね。自分が負けるときはロビングを1回もしないことが多い。相手のプレーにはまって焦ってしまうんですね。
 勝つ試合はロビングをはじめ、カット性ショートなどいろいろな技を使っていることが多いです。

--ロビングに加え、得点時のパフォーマンスも小西選手の魅力だと思います
 プロだから、お客さんを喜ばせないとだめですよね。パフォーマンスは必要です。
 ただし、パフォーマンスをしすぎると「うるさい」と批判されることもあるので、難しいところではあります。特に、今はコロナ禍なので。
 でも、自分はあまり気にしません。対戦相手のことをばかにしているわけではないですから。やっぱり得点したら、そして勝ったら喜びますよ。自分は遊びでプレーしているわけじゃない。毎年毎年の契約につながっているから必死です。
 社員ではなくプロですから、契約してくださる会社(東京アート)やお客さんを喜ばせないと。声を出して必死にやらなかったら、今は勝てるかもしれないけれど、次は分かりません。だから、今、全力を尽くす。それがプロだと思います。
 若い選手たちは、もっともっと声を出した方がいいですよ。パフォーマンスは、その人の性格が出るから大切です。お客さんも、それを(選手たちのパフォーマンスを)見たいはずです。

小西のロビングは、若手を倒す大きな武器だ

 相手の攻撃を何本もしのぐ小西のロビングは、相手のペースを乱す大きな武器であり、彼のプレーを彩る華だ。たとえ相手に攻め込まれてしまったとしても、ロビングで簡単に得点を許さなければ相手に大きなプレッシャーを与えることができる。
 ここからは、小西がロビングのポイントについて話してくれる。

ロビングに変化をつけることが大切

--ロビングのポイントについて教えてください
 ボールの高さや深さに変化をつけることを意識してロビングしています。
 例えば、早い打球点を捉えたり、反対に少しボールを引き付けて遅い打球点を捉えたりするとロビングの深さに変化がつきます。
 また、手首を使って回転をかけたり、手首を使わずに回転をかけなかったりして回転に変化をつけることも意識しています。
 さらに、ある一定の高さのロビングに対して強い選手には、もっとバウンドが高くなるようなロビングを送るようにします。そうすると、相手のスイングのフォームが自然と変わるので、打ちミスを誘う可能性が高くなるからです。
 ただし、ロビングは台から距離を取ってボールを相手コートへ入れる技術なので、感覚がないと難しいですね。

--その感覚は、練習によって身に付きますか?
 もちろんです。フットワークやフォアハンドドライブの練習と同じです。ロビングは台から離れてボールを入れる難しい技術なので、練習で距離感を身に付けることが必要です。どんな技術でもそうですが、練習しないと身に付きません。

ドライブに対するロビング



 効果的なロビングを送るためには、ボールの高さや深さ、回転などに変化をつけることが重要だという小西。上に紹介している連続写真からは、上体をひねってボールを引き付けているバックスイングや、飛距離を出すためにフォロースルー(打球後のラケットの動き)でラケットが頭よりも高くなるくらい大きめにスイングしている点などを参考にしてほしい。
 次回の最終回は、小西の練習に対する現在の考え方とペンドラで強くなろうとしている方たちへのメッセージ、そして、自身の目標について明かしてくれる。

↓動画はこちら

(取材/まとめ=卓球レポート)

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