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元全日本王者が斬る!渋谷浩の眼 ~女子シングルスの行方~

男子シングルスに続いて、皇后杯をかけた戦い、女子シングルスの見どころを紹介しよう。

女子は番狂わせは少ない?
スマッシュと逆チキータに注目

 女子シングルスは例年以上にレベルが高いと感じます。特に、昨年初優勝を果たした伊藤美誠(スターツSC)は国際大会でも中国選手に拮抗し得る実力をつけてきていて、今回の全日本でも優勝候補筆頭です。本命の伊藤に対して、対抗馬は石川佳純(全農)、平野美宇(日本生命)、それに力をつけてきた早田ひな(日本生命)の3人と言い切っていいでしょう。その4人を追うように長﨑美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園)と加藤美優(日本ペイントホールディングス)、安藤みなみ(専修大)らがいますが、優勝が狙える選手、上位に勝ち進めそうな選手は、混戦の予想される男子に比べると限られていると思います。

 技術的には、昨年注目された「美誠パンチ」に代表されるようなスマッシュが見直されていますね。プラスチックボールになって回転量が減った影響で、安定したドライブから決定力の高いスマッシュにモデルチェンジしている選手が増えてきています。一方で、用具や打法を工夫し、以前同様の回転重視の卓球をしている選手もいます。トップ選手ほど、この使い分けが巧みですね。

 もう一つは、逆チキータです。台上でボールの外側を捉えてチキータとは逆方向の横回転をかけて返すバックハンドの技術ですが、トップレベルではほとんどの選手が使うようになりました。
 この技術が効果的なのは、バックハンドサービスと同じこの回転(右利きの場合は左横回転)のボールは、レシーブ以外のシチュエーションでは受ける機会が少ないため、ラリー中に突然来ると対応が難しいからです。逆チキータをすると、滑るように速いボールが、(右利きの選手の)フォア側に逃げるような軌道を描くので、相手の体勢を崩したり、バック側にオープンスペースを作ることができたりと、ラリーを優位に運べるメリットがあります。加藤美優がこの技術の先駆者ですが、彼女の逆チキータは打球点の速さや回転の種類などで群を抜いているので、注目してみてほしいですね。

ここからはブロックごとの組み合わせを見てみましょう。
組み合わせはこちら(PDFが開きます)。

【第1ブロック】
多彩さを増した伊藤がリード
予測がつかない異質型対決に注目

 第1ブロックは激しいですね。もちろん第1シードの伊藤美誠が優勝候補として挙げられますが、注目したいのは高橋真梨子(十六銀行)、前田美優(日本生命)、安藤みなみなど強い異質型の選手が伊藤と対戦する可能性があることです。伊藤自身が異質型ですが、異質型は相手が予測を立てにくいようなプレースタイルですから、精神的に後手に回ると厳しい戦いを強いられます。裏裏(両面裏ラバーのシェーク攻撃型)のきれいな卓球よりは怖さがあるでしょう。

 ただ、伊藤は技が多彩になりましたね。特にバックハンドは表ラバーで回転量の変化をつけたり、ナックルで押したり、はじいたりと「表ラバーでそこまでできるか?」というプレーをしています。チキータや逆チキータにも要注意ですね。伊藤はTリーグに参戦していないので、事前情報が少ない点も不気味です。

 昨年ベスト16、一昨年ベスト4の橋本帆乃香(ミキハウス)はこのブロックのダークホースですね。カットに強い選手が多いだけに上位に勝ち上がるのは大変ですが、実力のある選手なのでチャンスはあると思います。

 また、内シードには宋恵佳(中国電力)や浜本由惟(木下グループ)、日本リーグで実力を発揮している小道野結(デンソー)、平野容子(豊田自動織機)など強い選手がひしめいています。第1ブロックは激戦になるでしょう。

【第2ブロック】
昨年に続く石川vs早田の対戦が見どころ
全日本に強い松澤、豪快なプレーの芝田にも注目

 第2ブロックは、早田ひなと石川佳純が昨年と同じく6回戦で当たる組み合わせです。実力的にはこの2人が頭一つ抜け出ていると言っていいでしょう。昨年は石川が4対1で経験の差を見せて勝ちましたが、今年はわかりません。直近のTリーグの対戦では、ビクトリーマッチ(延長戦の1ゲームマッチ)で早田が12対10で勝っています。ただ、直前の試合の勝敗というのは、実力者同士の場合、負けた方の選手が必死に対策を練ってくるので、次の試合でひっくり返ることが少なくありません。その点に注目して観戦するのも面白いでしょう。

 全日本に強い松澤茉里奈(十六銀行)や、ワールドツアーで成績を残している芝田沙季(ミキハウス)にも上位進出のチャンスがあります。松澤は全日本に向けての調整がうまいのでしょう。松澤が強い時の、相手に卓球をさせないようなプレーがまた見られるかもしれません。芝田はフォアハンドの一発の威力があるので、豪快なプレーに期待しましょう。
 張本美和(木下グループ)や小塩遥菜(JOCエリートアカデミー)など若い選手がどこまで勝ち上がるかも楽しみですね。

【第3ブロック】
実力者が順当に勝ち上がると予想
野村、笹尾、相馬ら若手の活躍が鍵

 第3ブロックは、永尾尭子(デンソー)、加藤美優、長﨑美柚、森さくら(日本生命)のスーパーシードが順当に勝ち上がりそうな印象を受けました。昨年の準決勝で平野美宇を追い詰めた永尾、パワーをつけてきたジュニアチャンピオンの長﨑、全日本で決勝まで勝ち進んだことのある森は、安定した力を発揮してくれるのではないかと思います。

 かき回してくれそうなのは、インターハイチャンピオンの野村萌(愛知みずほ大瑞穂高)ですね。野村はバック面が表ラバーの異質型ですが、あれだけアグレッシブに攻め込まれると社会人の選手はやりにくいと思います。その他、笹尾明日香(早稲田大)は勝ち上がると、4回戦で加藤美優と対戦する組み合わせです。この2人はいずれも全日本ジュニアのタイトルホルダーで、実力では加藤が一枚上手だと思いますが、どちらも世界卓球の一次選考会で好調だっただけに、楽しみなカードです。

 インターハイベスト4でカットの相馬夢乃(遊学館高)も格上に勝てるポテンシャルがある選手です。ただ、初戦(2回戦)が庄司有貴(中国電力)とのカット対決になると、まだ攻撃力が弱い相馬には厳しいかもしれません。

【第4ブロック】
平野の圧倒的優位は揺るがないが
木原、大藤の中学生2人の活躍に期待

 第4ブロックは、平野美宇の圧倒的優位は言うまでもありませんが、木原美悠(JOCエリートアカデミー)と大藤沙月(ミキハウスJSC)の2人の中学生が台風の目になると思います。木原は勝ち上がると5回戦で平野と対戦する組み合わせです。実力と経験では平野の方がまさっていますが、予測力が高く、思い切りの良いプレーで、大物食いをする可能性がある木原との試合は見てみたいですね。平野が平常心で攻め続ければ問題ないとは思いますが、一度冷静さを失ってしまうと、わかならくなります。

 大藤は6回戦まで勝ち進めば佐藤瞳(ミキハウス)に当たる可能性があります。大藤は高い攻撃力がありますし、カットにも強いので、ひょっとしたら上位進出も可能かもしれません。木原と大藤、この2人がどこまで勝ち上がるかに注目したいですね。

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